谷津矢車観察日記

〜存在そのものに意味はない、意味を決めるのはこれを読んだあなただ〜

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はい、種明かし企画最後です!
ということは……。最後は当然……。

「はい、芳藤です」

おおー。けど、どうして芳藤を主人公にしたんです? 幕末から明治にかけての浮世絵師を書くんだったら、芳年辺りを主人公にしてもよかったですし、暁斎の突き抜けっぷりを書いてもよかったじゃないですか。なんで、わざわざ一般的には有名とは言いがたい芳藤さんを主人公に…?

「好きだから、としか言いようがありますまい」

えっ。

「いや、好きなんですよ、芳藤が。実は、好き、っていうアンテナは一番感度がいいんですよ。物書きの端くれとしては非常に大事にしているアンテナなんですが、本当に本作では役に立ってくれましたよ、このアンテナ」

芳藤さんのどこが好きなんです?

「実は、わたしが調べた範囲では、芳藤さんの人柄をしのばせるような逸話は一つしか見つかりませんでした。明治期、樋口屋という版元が芳藤さんに原稿催促に行った時……」

えっ? 樋口屋って実在したんですか!?

「あ、はい。とはいっても、国芳の代から付き合いがあるような版元ではなかったと思います。どうも芳藤さんと樋口屋さんが懇意であったらしく、唯一彼の逸話を残しているということで、脚色して登場させています」

へえ……。で、続けて続けて。

「原稿が遅れていた芳藤さん、樋口屋が来るなり『絵は一生残るものだから、手を抜くことができないんだ』って言った、って逸話があるんです」

原稿が上がっていない言い訳ですね、どう考えても。

「わたしもそう思うだわんにゃん」

本作でもこの発言が出てきますが、言い訳としては遣っていないですね。

「はい。実在の人物である芳藤さんが口にしたその言葉を真に受けて描いたのが、本作の芳藤さんなので。でも、おかげで一人の画工の人生を描き切ることができたのだと思います」

けど、この人、不器用すぎやしませんか。

「わたしもそう思うだわんにゃん」

一度滑ったネタで天丼するの、やめてくれませんか。

「本当にすまなかったと思っている。――でも、えてして人生ってこういうもんだ、というのがわたしの感想です。その時には考え抜いた最善の道を選んでいるつもりでも、あとから見ればなんでこんな選択を、って頭を抱えたくなることもあるでしょう。恥の多い生涯を送ってきたわたしにとっては、芳藤の辿った選択の数々は納得はできないまでも、こういうもんだよね、という気はしているんです」

谷津さん、あんた、随分こじらせてるんだね……。

「うるせー!」


お陰様で「おもちゃ絵芳藤」もご愛顧いただき、現在でも少しずつ手に取っていただけているというロングセラー作品となりました。2018年3月段階でも著者に対して「あれ面白かったよ!」と御声をかけてくださる方がいらっしゃる。この仕合せは他に代えがたいものです。
ありがたい限りですね、谷津さん!

「まったくまったく。でも、新作もよろしくね」

うわあ……、折角の〆が台無しだよ……。


はい、種明かし企画第五回です!

「おいちょっと待て」

はい?

「半年以上放置しておいて、平然と始めるんじゃない(エントリ参照)」

いや、そもそもあなたのせいだろう谷津さん。忙しいだのなんだのと理由をつけてまったく手を付けていなかったんだから。

「言い訳のしようがない」

申し訳ございません。でもまあ、ココを見ている人、ほとんどいないからいいんじゃね?

「それは言わないお約束!」

さて、今回は誰を話すんですか。

「(戯独堂もしれっと始めやがった……)。今回は落合幾次郎についてお話しようかと」

そうそう、このお話について結構疑義が上がっていたのが落合幾次郎なんですよ。この方、落合芳幾という筆名があってそちらの方が有名なのに、なんで幾次郎なの、って。

「ぶっちゃけた話、名前の都合です。本作、芳藤、国芳、芳艶、芳年と、芳〇という名前の人が多すぎまして。小説において登場人物の顔に当たるのが名前なので、彼だけは仕方なく本名を使いました」

けど、本作において一番脚色が多いのが彼でしたね。

「本書では肝心なところで大嘘をついています。実際に彼の人生と見比べてくれると面白いんじゃないかなと思います。実はそこにこそ作家の計算があるわけで」

そういえば、落合幾次郎についてはまだまだ書き足りないとお考えとか?

「書き足りないというよりは、なんかごめんね……という気持ちが強く、彼を救済したくてしょうがないのです。というわけで、そのうち幾次郎さんをもう一度書きますので、その際にはよろしくお願い致します」

なんと……。まさかの続編?

「続編じゃありませんけど、彼を狂言回しにしたお話が既に始動しています」

おおー! 続編の予感!
つづく(次回で「おもちゃ絵芳藤」編は最後だよ)

はい、種明かし企画第四回です!
さて、今回は誰を……?

「今回は、河鍋暁斎さんとコンドルさんを取り上げようかと」

おお、この二人ですか!

「実を申すと、二人とも書き足りない人物ではあります。意図的に本作でつまびらかにしていない面があるので……」

ああ、たとえばコンドルさんが建築士だということですか?

「なぜそれを!」

そりゃ知ってますよ。日本史なんかでもコンドルさんは習うでしょう?

「たしかに。けれど、実はコンドルにはもう一つの側面があるんです。西洋世界への暁斎の紹介者、っていう」

あ、そうなんですか!?

「はい。河鍋暁斎が今日的な名声を得ていることの一つに、コンドルさんの西洋世界での紹介があったんです。もしコンドルさんがいなければ、河鍋暁斎は忘れ去られていたかもしれませんね。コンドルとの付き合いが、彼の画名を定めたともいえます」

へえー! 

「ちなみに、本作においてコンドルが登場しているのはいつも土曜日です」

なんで!?

「コンドルさんは毎週土曜に暁斎さんのところに絵に教わっていたといわれています。恐らくこの日が自由になる日だったのでしょう。裏設定としてお楽しみあれ」

そうなのか……。
で、河鍋暁斎さんに関して隠している事っていったい?

「隠しているというよりは、”強調しちゃった”ということなのですが。
(ネタバレの為文字色反転)狩野派の道統を引き継いでいた狩野派絵師(反転ここまで)という面を前面に出しましたが、彼の魅力はそれだけではないんですよ」

というと?

「戯画なんかもよくしましたし、はしか絵といわれる病気をよけるためのゲン担ぎグッズのようなものも書いています。鯰絵なども残っていますし、戯作の挿画だってやってます。マルチな人なんですよ」

へえー!

「野生の天才、みたいな扱いの人だったようではあります」

で、今回の二人にはモデルになった知り合いとかいるんですか。

「いますよ。コンドルさんの物腰のモデルはある現実での知り合いですし、暁斎さんの理路整然としながらもどこか飄々とした雰囲気は大学時代の某友人をモデルにしています」

谷津さんの周りには、あんなのしかいないの?

「あんなのとか言うなよ! いい奴らだよ!」

というわけで次回に続く。
本日二つ目のエントリです。
いや、本当は分散したかったのですがそうもいかなくて……。
というわけで発表です。

本日2017年6月15日、角川春樹事務所さんより


が刊行されます!


「呼ばれて飛び出てばばばばーん(棒読み)。はいどうも谷津です」

やる気ないなオイ!

「いやいや、一日に二つもブログを更新するなんて……って思っているんですよ」

しょうがないだろ! 今日は発売日なんだから!

「その通りだ」

で、谷津さん、この話はいったい?

「ああ、『それ★さく』はですね」

ちょっと待て。

「はい?」

なんだ、”それ★さく”って。

「いや、今回タイトルが長くなってしまったので、短くしようと思いまして。愛称ですよ愛称」

星はどこから出てきた!

「細かいことは忘れたまえ。――本作はですね、島左近を主人公にした歴史エンタメ小説です」

な、流しやがった……! 恐ろしい子ッ……!
それにしても島左近とはまたメジャーなところを。これまでの谷津さんには考えられないド直球ですね!

「テーマ人物は、ですね。けれど、内容はいつもの谷津さんのクセ球だ!」

やっぱり!

「有名な人を書こうと思うと、どうしても力んじゃいますよね、えへへ。今回は周りに出る人たちがかなり豪華なのですが、みなさんが見たことのない戦国絵巻になっていると思います。ぜひぜひ!」

宜しくお願いいたします!


はい、種明かし企画第三回です!

「やけにペースが遅くないかい?」

いやいや、しょうがないんだよ! っていうか谷津さん、あなたのせいですからね! ブログ更新の気が乗らないとかいうから!

「しーっ! だって、なんだか、だってだってなんだもん!」

そういう軽口は止めろ!
けれども、おかげさまで「おもちゃ絵芳藤」にも書評を沢山いただけてありがたいことです。雨宮由希夫先生には歴史時代作家クラブの公式ブログに、大矢博子先生にはPR誌ランティエ(角川春樹事務所)に、末國善己先生には朝日新聞読書面に……!

「いやもう過分なお言葉に恐縮しきりです」

谷津さん、書評が出るまで胃痛にさいなまれていたんですよね!

「ここだけの話にしてやってくれ!」

そんな裏側はさておいて。
さて谷津さん、今日はライナーノーツなわけですが、誰を話しましょう?

「まずは、月岡芳年さんを」

おお、ビックネームきましたね!

「けれど、実はメイン絵師たちの中では一番扱いが小さい気がしないこともないですね」

た、確かに……。しかも、本作の中ではずっと売れっ子でしたしね。

「本作で書いたように彼は今でいう鬱病に悩まされた絵師で、時期によってはそれで書けなくなったりはするんですが、基本的には売れっ子ですねえ。だからこそ、本作では影が薄めです」

ああ、本作、売れない絵師の悩みですもんね……。

「そう。彼は色んな意味で売れない絵師である芳藤の対極に設定した絵師でした。月岡芳年さんは一生自分の作風を守り続け、保ち続けた人でした。こう言っては何ですがすごく幸せな絵師ですし、それだけ実力も認められていたということなのです」

そうだったのか……。

「ちなみに月岡芳年さんを描くにあたりモデルが何人かいまして、某若手作家さんと某若手作家さん、あとはあたしの実体験なんかをごちゃまぜにして誕生しました」

いいのか、そんなことを言ってしまって!

「平気でしょう。お二人には一生話すつもりはないですし! それに、本作で書いた芳年の痛い話は、わりとあたしの話です。部屋が汚いとかね!」

おいこらやめろ!
これ以上話させると本当にやばい話が出てきそうなので、次だ次!

「ああはい。では次はお鳥さんで」

国芳師匠の長女ですね。ちなみに本作では(ネタバレの為文字色反転)月岡芳年さんが懸想していました(反転ここまで)がこれは……?

「フィクションです」

まじかー!

「いや、人間の内実なんて分かりませんよ。でも、事実としてお鳥さんは独身時代には絵師として作品を描いていたものの結婚を機に筆を折り、かなり早い時期にお亡くなりになってしまったようです」

ようです、というのは……?

「当時の女の人のことなので、いつごろお亡くなりになったのか、今一つ分からないという面があります。そもそもこの時代の江戸庶民については調べがつかないことが多いです。関東大震災とか空襲の影響で史料が焼けてしまったりご子孫が引っ越してしまったりといったことがあったので」

そうなのか……。

「本作のテーマの一つに”忘却”があるんですが、彼女は忘れ去られるようでいて、実は月岡芳年さんの筆によって忘却を免れていたとも取れるような書き方をしたつもりです。腕のいい絵師というものは、途轍もない力をもって迫ってくる忘却の波にも筆一本で勝ってしまうものなのです。二人の関係を書くにあたってあたしが考えていたのは、おおよそそのようなことでした」

なるほどねえ……。
というわけで。
次回に続く!

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