谷津矢車観察日記

〜存在そのものに意味はない、意味を決めるのはこれを読んだあなただ〜

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さて、海底に潜んでいたわたしも、もうそろそろ地上目指して浮かび上がろうではないかッ……。

「なんか言うてはる」

おう、谷津さん。久々にお呼びがかかってうれしいんだわたしぁ。

「だろうね。ってか、もうそろそろいい時期ですからね」

おおう。始めようではないか。
谷津さんの新作、「信長さまはもういない」のライナーノーツ企画を。

「やっていこうじゃないですか」

まず、第一回目はたいてい作品のコンセプトとか裏話なんかを話しているんですが。

「でも実は、コンセプトなんかに関しては小説宝石9月号にエッセイを寄稿していまして、そちらをご参照頂くのが一番なんですよね」

そうなのか。んじゃあここで話すことが無くなっちゃうじゃないか!

「そうでもないんだな。あちらで語れないこともたくさんあってですね。というわけで、エッセイと重複しない程度に語っていこうと思ってます」

ほう。

「『信長さまはもういない』は本能寺の変の後に遺された家臣たちを描きたくて描いたものです。そう、つまりは拙作「曽呂利!」(実業之日本社)の蜂須賀小六のくだりで描いたモチーフを掘り下げているんですね。本作は「曽呂利!」の片割れみたいな面があります」

ほうほう、片割れ、と。そういえば、本作でも蜂須賀小六が出てきますよね。

「はい。新しい時代を迎えたときにそうそう素早く人は順応できるものだろうかという問いが、「曽呂利!」での小六ですし、本作のテーマでもあるわけです」

なるほど。で、なぜ池田恒興さんが主人公なんです?

「いろんな理由がありますが、彼は『信長のいない世の中』に順応しているようであり、死に急いでいるようですらあり、彼の後半生はなんとも不思議だったからです。それに、なまじ秀吉に近く、家康に敵対したという関係で二次史料すらあまり残っていないというのもミソです」

つまり、書きやすい人物である、と。

「ええ。それに本作、かなり嘘をついていることをここに表明しておきますね」

まあそれはいつものことだ。
そもそも、「信長の秘伝書」なんていうのも大嘘でしょうしね。

「こらこら、それじゃあ何のことだかわからないでしょうに。
ええとですね、本作では、姉川の戦いの終わりに、恒興が信長から彼が徒然に書いていた秘伝書(ハウツー本のようなもの)を下されるところからスタートします。信長亡き後、恒興が秘伝書を振り回して先行き不透明な政局を乗り切らんとする、というのが本作のスタートです」

もちろんこのくだりは大嘘なんですよね?

「言うまでもなく!」

ってことは、この「信長の秘伝書」こそが本作最大のフックということですね。

「もちろんそういうことです。わたしの小説だけに限りませんが、歴史小説を読む際には、史実と異なるところや史実の隙間に挟まれた創作部分を追っていくことで、作品の仕掛けがわかりやすくなると思います」

なるほど。

「ちなみに、本作のイメージはショーペンハウアーの『読書について』と、スピッツの『トンビ飛べなかった』です。ご参考にしていただけるとこれ幸い」

ね、ネタバレもいいところじゃないですか!

「いや、案外そうでもないのです」

というわけで、続く!
はいどうもー。
なんと、今回は新刊のお知らせだYO!

「YOじゃないよ」

おお谷津さん、どうした。

「いや、わたし結構さんざんツイッターのほうでUPしちゃってるから…」

そうか! まあいい! 人類とて必死だ。

「そういう元ネタありきの発言はやめてくれないか」

では、とりあえず告知だ! ハイドン!

「うわあ……流しやがった」



「信長さまはもういない」(光文社 1400円+税)
       ISBN:9784334911102
    全国書店様などで2016/8/17頃発売予定



おおー、で、どんな話なんです?

「はい、池田恒興さんが主人公の戦国小説です」

池田恒興……? ええと……?

「んー。織田信長さんとは乳兄弟(信長さんの乳母が恒興さんの母)に当たる方で、信長さんがお亡くなりになったあと、山崎の戦とか清洲会議などで存在感を上げる人です」

ああ、そういえば、清洲会議にいますよね! 羽柴秀吉、柴田勝家、丹羽長秀とあともう一人! その人が主人公ですね! でも、どうしてこの人を……。

「書いたのかって? 書きたかったからだよ」

えええええええー!

「いや、”信長さんの死後”が描きたくて、それで一番興味深いなあと思ってフューチャーしてみた次第です」

そ、そんな決め方でいいの?

「いや、そもそもわたし、池田さん大好きだから」

そ、そうなの?

「ええ。人間臭さが」

どういうことだ!

「いずれにしても、新刊、なにとぞよろしくお願いいたします!」

お願いします!




【ただいま新刊「しゃらくせえ鼠小僧伝」発売中です!】

はい、今回が種明かし企画の最後です。
本作一番の悪党は一体だれなのか! さあ谷津さん、死ぬ気でしゃべるのだ!

「いや死ぬ気では喋りませんけど」

テンション低っ! 引くわ!

「引かないでくださいよ。主役、しかも実在の人物を悪く言うのはなかなか勇気が要るのです」

え、ってことは、谷津さんが考える本作一番の悪党は……。

「もちろん次郎吉その人に決まってるじゃないですか」

マジで!? でもどうして!?

「いや、フツーに考えて次郎吉、結構な悪党ですよ? 第一話の段階から火付けをやってますし、第二話では殺しを黙認しちゃってますし。さらには第四話では次郎吉自身が人を手に掛けちゃってますし」

ああー。でも、彼は悪くない!

「そうですか? 時代のせいというのはもちろんありますが、彼はどう見たって悪党です。なにより彼は自分の悪党ぶりについて全くの無自覚です。そういう意味では、悪党であることをアイデンティティに置いていた呉兵衛なんかより、はるかに面倒くさい悪党とすらいえます」

そ、そういうものなんですか?

「シリアルキラーの手記を読むと、ご本人の中では筋道が通っていて論理的なのですが、いざ離れてみると『いやそのりくつはおかしい』と突っ込まざるを得ないことがあります。そういう意味では、次郎吉はそういうズレを最初から持ち合わせていた人物と言えます」

で、でも、本作の鼠小僧はなんかこう、わたしたちの側に近い感じがしたんですけど……!

「そりゃ、そういう風に寄せましたから。わたしが本作で書きたかったものの一つに、”無垢な悪党”というものがありまして、次郎吉はまさにそれを担っていただいています」

へえ……。なるほどねえ。

「でもね」

まだあるの?

「はい。実はわたし、本作一番の悪党は別のところにいると思うのですよ」

え?

「ここからは文字色反転しますね。
ずばり、『鼠小僧の物語を消費していた大衆』こそが一番の悪党なんじゃないかと思うのです。見てきた通り、次郎吉は義賊ではなく、ただ成り行きに任せて物を盗んでいたところ、半ば偶然の形で『義賊』というレッテルが張られるに至ります。そうしてメディアに取り上げられていったわけですが、そうすると、鼠小僧によって害されてしまった人々の魂は救われません。けれど、大衆はそんなことに興味はない。ただ、立ち上ってきた物語を消費して留飲を下げているばかりです。
と、こうしてわたしは賢しらに言っていますが、きっとわたしもそうやって”物語”に乗せられて、誰かのことを損なっているのでしょう。
そう。実は、皆が悪党なんですよ。
おわり」

うわあ……。嫌な世界観だ……。

「でもまあ、これが現実といえば現実」

うひょおお……。

「いずれにしましても、本作をよろしく!」

明るく締めやがった!


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小説の基本構造を浮かび上がらせる十の質問

Q.1 主人公はどんな人物ですか?
Q,2 主人公の目的は何ですか?
Q,3 主人公の目的に立ちはだかる人、物、概念(以下「葛藤者」)は何で
すか?
Q,4 なぜ主人公はその目的を果たそうとするのですか?
Q,5 その目的を果たす/果たせなかったことで、主人公はどうなりま
すか?
Q,6 主人公の目的を阻止する/できなかったことで、葛藤者はどうな
りますか?
Q,7 なぜ主人公と葛藤者は争わないとならないのですか?
Q,8 主人公の内的欲求について、一番当てはまるものに丸をつけ、
()内に具体的に書いてください。
生存欲求  生理的欲求  社会的欲求  自我欲求  自己実現欲求 
          (          )
Q,9 主人公と葛藤者の端的な違いはなんですか?
Q,10 あなたは、この物語を通じて読者に何を届けようと考えていま
すか?




突然なんすかこれ。


「ああ、今日作った小説作成用の補助ツール。その名も『十の質問』
です」


なぜこんなものを……。


「いや、あると便利なんで。基本的に、アウトソージングできるものは
そうしておく、というのがわたしのモットーです」


なるほど……?


「これは構想がある程度まとまってプロットを書きだす前に書き入れると
いいかも。あとは書き進めていてなんとなくしっくりこないときなんかにこ
れでチェックしてやるといいと思います。小説を書く際に一番重要なあれ
これがまとまっているつもりです」


すげえ……! でもいいの、こんなものを公開しちゃって。


「かまいませんよ。名前が売れればね(白目)」


まじかよ……。


「これ、特に©をつけるつもりもございませんので、勝手に持って行ってくだ
さいませー」
【ただいま新刊「しゃらくせえ鼠小僧伝」発売中です!】
   AMAZONさんページ  

前回の続き。

さて、では、今回のクズは……。

「はい。お冬とヒロインお里です」

キター! 今作一番の問題児たちですね!

「いやいや、実は一番の問題児はほかにいるんですがそれはさておきまして」

ってか、なんでお冬さんがこんな上位に来ているんですか? 彼女、どう考えたって悪党でも何でもない……?

「そうですかねえ。わたし的には、彼女はどこまでお里の野心に気付いていただろう、と思っちゃいますよ」

へ?

「いえ、お冬は表面上は心清らかですしお里にすら『頭空っぽの善人』とか評されていますが、実際に、彼女はその通りの人でしょうか? もしかして、お里や周りの人間の人生を食い物にしていたのはお冬だったのではないでしょうか」

え、でも……。

「ええ、テクスト上にはあえてそういった仕掛けは作っていません。見ようによっては本作唯一の善人ですらあるお冬ですが、もしかして……、と考えていただけるとお話に奥行きが生まれると思うよ!」

おい、盤外戦でテクストの補完をするんじゃない!

「でもさ、そんなこと言いだしたら、この企画自体があかんやつですしおすし……」

おおっと。
では次はお里だ。

「実はわたし、この前結婚したんですけど」

え、何突然!?

「いつもお世話になっているある書店さんの社長さんに、『谷津さん、結婚したからにはきっと「蔦屋」の奥さんみたいな清純な女性を描くのがはかどるでしょう?』と言われたんですが……」

ああ、逆張りしちゃったわけですね。

「ええ、清純とは裏腹の女性キャラを書きたいなあというのがスタートでした。その結果仕上がったのが、毒婦としかいいようのないキャラクターです」

うん、あれは毒婦だったわ。
でも、実は彼女、ところどころで尻尾が出てますよね。

「ええ、呉兵衛などはしっかり気づいてましたしね。なので、スペシャリストの悪党とは言えぬまでも、主人公である次郎吉と最後まで対峙していたという意味で、悪党度はかなり高いのではないかと思います」

けど、この女性二人が悪党にカウントされるのはかわいそうじゃないですかねえ。彼女らはこういう風にしか生きられなかった人たちなわけですし……。

「んー。それはちょっと違うと思いますよ。本作に出てくる人々は、誰しもが『こういう風にしか生きられない』人々です。そういう意味では、彼女らと呉兵衛たち真性の悪党らとの間に違いなんてありゃしませんよ」

そ、そういうものですか。

「ええ(にっこり)。そして、次回が種明かしの最終回になると思うんですが(大工の棟梁さんたちや殺される若旦那さんは説明を割愛します)、その辺の話をじっくりやろうと思ってます」

怖いですねえ、恐ろしいですねえ。

「(にっこり)」

続く。

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