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はい、というわけで、「おもちゃ絵芳藤」(文藝春秋)のライナーノーツ第二回ということなんですが……。その前に告知があるって?
「はいはい。オール讀物の最新号に、短編を掲載していただいております」
へえ、どれどれ……。『女の顔 白子屋お熊異聞 奇説無惨絵条々』って短編ですね……って、白子屋お熊で短編描いたのかよ!
「おや、ご存知ですか」
知ってるも何も! 享保の頃に起こった夫殺し(未遂)の白子屋お熊事件っていったら、これまで何度も歌舞伎とか小説の題材になってるじゃないですか! そこにあえて挑戦ってどういうこと!?
「説明乙」
おう。
で、当然白子屋お熊なんていう有名な事件を材に取ってるんだから、そりゃあもう……。
「ええ、いじくり倒しました!」
やっぱり。
「こちらのライナーノーツはぼちぼちやりますので、ぜひとも!」
で、本題ですね。
さあ、誰から話しましょうか!
「決まっているでしょう。まずは国芳師匠から」
来た! いつもの流れ! 本作とは関係が薄い順紹介!
「いや、薄くはないでしょ。メイン四人の師匠なんですから」
あ、そっか。
「まあ、ぶっちゃけ説明も不要かとは思いますが、歌川広重なんかと同時代の絵師で、今でも人気者です。それこそ何年に一回かは大きな展示がありますし、浮世絵師の中では今でも歌麿や写楽、広重なんかと並ぶスターですね」
すごいですよね、この人。
「弟子もかなり多く、塾のような形態で物を教えていた様子が河鍋暁斎さんの著作によって判明しています。本作での『国芳塾』というのはそのあたりをヒントにしましたよ」
でも、本作だとほとんど登場しませんでしたよね。っていうか、一言もしゃべってない……。
「まあ、冒頭で死体の形で転がしましたから」
ひどい!
「いやいや、これはこれでいいのです。推理小説なんかでも『まず死体を転がせ』っていうのはセオリーじゃないですか」
いやいや、それは推理小説の話でしょ!?
「実は(文字色反転)テーマがともすると『師匠という偉大な人がいなくなった喪失感』になりかねなかったテクストで、本作の狙いはそこじゃないので序盤で死んでもらった次第(文字色反転ここまで)です」
そんな狙いが……。
「いや、それと、国芳師匠はもっと別の形で書けそうな気がしたので……」
そういうことかよ。
温存策出たー!
というわけで、続く!
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「おもちゃ絵芳藤」(文藝春秋)大好評発売中です!
はいどうもー。新刊が発売して一月余りが経ちました! というわけで毎度恒例のライナーノーツ企画やるよー。
って、なぜ谷津さん、どんよりしているのだ。
「いえね、このライナーノーツ、一番楽しみにしているのは編集者さんなんですって」
なんですと?
「あたしの担当をしてくださっている編集者さんたちが、答え合わせに使用しているらしいですよ」
いいじゃないかそれはそれで! 自分で褒め処を自己申告しているようなもんだと思えば!
「そ、そうなのか…?」
絶対にそうだ! 自信を持て!
「で、ですよね……では気を取り直して、『おもちゃ絵芳藤』のライナーノーツ、行きましょうか!」
まずなんですけど、歌川芳藤さん? って何者なんですか。
「そこですか。まあ、なぜか皆さんにそこから聞かれてしまうんですけど」
そりゃそうだ。一般にはあんまり知られた人じゃありませんからね!
「幕末から明治の二十年まで活動していた浮世絵師です。玩具絵というジャンルで知られた人で、”玩具絵芳藤”という綽名が与えられている人です。ただし、この綽名は案外新しいものです」
どういうことですか!?
「玩具絵、という言葉自体が昭和の頃の造語(学術用語)らしく、幕末から明治に活躍していた芳藤がこの言葉を知るはずはありません」
マジかよ…! 本作で使いまくってるじゃないですか。
「いいんだよ! 読むのは現代人なんだから!(それに、玩具絵という響きが本作の芳藤を体現しているんだからいいの!)」
ま、まあ……いいけどさぁ……。
で、玩具絵っていうのはいったい?
「当時の子供向けの絵一般のことです。今でいう雑誌の付録みたいなもの(組立絵・立版古)や、すごろく絵、今でいう「はたらくくるま」みたいに特定のものを一枚の絵に納めたものなど多岐にわたっています」
双六絵なんかも……?
「はいまさしく。この言葉、ちょっと範囲が広すぎて逆に使いにくい学術用語かなあ、とあたしなんぞは愚考するものです」
へえ。で、なんで芳藤さんが「玩具絵芳藤」と呼ばれるんです?
「芳藤さんは色んな絵を描き残しているんですが、その中でも点数が多いのが玩具絵と呼ばれる絵の一群なんです。まあ、役者絵とか相撲絵ばっかりが浮世絵じゃないってことです」
なるほどねえ……。
で、その芳藤さんを主役に何を書いたんです?
「浮世絵の時代の終わりを書きました」
ひょおー。またこれは難しそうなテーマを!
「まあ実は浮世絵の衣鉢を継ぐものは芳藤さんの死後も残るんですが、けれど彼の死んだ明治二十年というのは一つの節目かなあという気がしています。なんとなく江戸時代の終結と共に消えた気がしている浮世絵ですが、色んな紆余曲折を経て、明治の時代にも生き残っていて、その葛藤を浮かび上がらせることができないかしら、というのが本作のコンセプトでした」
なるほど……! なんとなくわかってきたぞ。
しかし、紙幅がいっぱいなので、続きは次回だ!
「しばらく続きますのでよろしくお願いいたしますー」
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