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「はい?」
なんでも、このブログ、谷津さんに関係している編集者さんが覗いているんですって!
「なあにぃ〜、それはやっちまったな」
いや、なにが『やっちまった』のかわかりませんけど。
確かに時折めちゃくちゃカウンターが回ってるなあと思ったらどうやらそういうことのようです。
「読者サービスなのか、それとも編集者さんとのお付き合いツールなのかよくわからなくなってきましたね!」
そう言うなよ。
というわけで、次のキャラクター説明に行くよー。
今回は津田信澄さんと織田信長さん……。って、最重要キャラじゃないですか!
「はい。今作においては、『喪失』を担っていただいた二人です」
そうですよね。
二人とも、(ネタバレのため文字色反転)本能寺の変でお亡くなりになりますもんね(ここまで)。
「文字色反転する意味はあるのか」
まあまあ……。でも、なんで津田信澄を?
「はい、これは善応院(お応)が津田信澄の父である織田信行(信長の弟)の元奥さんであるという説がありまして(ライナーノーツ参照のこと)、この説を念頭に置きました」
でも、今作だと信行の元奥さん説を採用してないじゃないですか!
「今作では、信行の奥様とお応が親しかったという、設定(説は存在しません)で書いたんですね。つまり、善応院からすれば親しかった女性の子供、ということになります」
むむ、ややこしい。
「はい。この辺のややこしさは、ぶっちゃけ「善応院が信行の奥さん」だったら解決する話なので、いっそのことそうしたほうがよかったんじゃね、と思っています」
うわー、ここにきて反省かい!
「いずれにしても、信澄がああなってしまったことで池田の命運が変わっていったという風に転がしていったので、信澄の存在は大きいです」
ほうなるほど…。
では次は、信長なわけですが……。
「信長さんって、ツンデレだと思うんですよ」
( ゚Д゚)ハァ?
「戯独堂さんが顔文字を! これはめずらしい!」
そりゃやりたくもなりますわ! 信長さんがツンデレとかお前……!
「いや、ツン(全力で殺しにかかる)を乗り越えればデレが待っているという印象でして……」
なるほど……?
続けろ。
「あっはい。というわけで、信長さまに関してはひたすらツンデレに設定しましたよ。
そもそも、本作で恒興に秘伝書を渡すのだって、あれは究極のツンデレですよね。「俺のことをわかって! でも、自分から話すつもりはないの!」という……」
やめろ。これ以上傷口を広げるな! 全国の織田信長ファンから射殺されるぞ!
「でもこう、本作でも活動シーンを極端に減らしたので、その分『あなたの好きな信長さま像をそこに入れてね!』という仕様になっているので、その点は信長さまファンにも楽しんでいただけたのではないでしょうか!」
うわあ……。信長を正面から書かなかったのはそれが狙いかよ……。
「はい! 読者様に『自分の信長さま』を当てはめていただくためです!」
なんて狡いのだ……!
続く(次回最終回)。
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観察日記
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「信長さまはもういない」(光文社) 大好評発売中! J−NOVEL2016.10号8実業之日本社)、小説すばる2016.10号(集英社)
に縄田一男先生より本作書評を、
サンデー毎日、毎日新聞にて歴史学者の本郷和人先生より本作書評を、
日刊ゲンダイに本作が取り上げられました。
ありがとうございます!
書評は本当にありがたいです。励みになりますね。
「はい、なんとなくむず痒いのですが」
というわけで、張り切ってライナーノーツに行きましょう!
今回は、羽柴秀吉と蜂須賀小六ですが……?
「実は本作の肝になっているのがこの二人、っていうか、蜂須賀小六さんが肝といっても過言ではありません」
そーなの!?
「はい。実は蜂須賀小六さんは拙作『曽呂利!』(実業之日本社)でも書いておりまして。そちらにおいてもかなり重要なキャラというか、軋む豊臣政権を象徴するような人物だったのですが、本作ではその軋みの前日談が描かれている形なのです」
あ、なるほど!
「曽呂利!」においては(ネタバレ含むため文字色反転)織田家に仕えているはずだった小六さんが羽柴に仕えることになってから折り合いをつけきれずにいるところを曽呂利新左衛門に突かれる、(文字色反転ここまで)っていうお話でしたね。
たしかに、本作の問題意識はまさにそこ……!
「はい。実は本作、「曽呂利!」のテーマの一部を突き詰めて成立したというお話でもあるのです」
なんてこった!
「ただ、本作は、小六の悩みを羽柴秀吉にも押し付けたところに意味があります」
ですよね。自分の主君がいきなり死んで、御家の簒奪を行なったわけですからね。良心の呵責とかいろいろあったでしょうね。
「というわけで、めちゃくちゃ鬱になっている秀吉像が出来上がりました。ただ、著者のイメージとしては、小牧長久手の戦が終わったあたりで吹っ切れたのではなかろうかと思います。根拠はないよ!」
でも、ああやって悩む秀吉像は新しいかもですね。
「どうでしょう? 英雄が悩むところなんて見たくないよ、といわれてしまえばそれまでのことのような気も」
うわあ……。乾いた発言だなあ……。
「とにかく、この二人もまた、織田家の家臣だったものが、信長の死によって翻弄されて……、という、ある意味で池田恒興さんと鏡合わせになったキャラクターではあるわけです」
へえ…。
っていうか、今回のお話、結構このお話の核心ですよね?
「どきっ」
続く。
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「信長さまはもういない」(光文社) 大好評発売中!
ええと、種明かしの前にちょっとご報告。
『週刊新潮(2016.9.15号)』に『信長さまはもういない』の書評が掲載されました!
「おお、やったー!」
今回も縄田一男先生が書いてくださいました。『こんな信長物語は、これまでなかった』というお言葉を頂いております!
「いつもありがとうございます!」
さて、今日は誰のことを話すんですか?
「そうですねえ。まずは柴田権六さんでしょうか」
ああ、柴田勝家さん。この方はめちゃくちゃ有名ですもんね。
「はい、イメージからそんなに逸脱していないはずです。実はこの柴田権六は、様々な事情で世に出すことのできないテクストから抽出して形にしました」
なんかさらっと怖いこと言ってね?
「いいんだよ。この話に触れるとわたしは怖いよ?」
ひいっ! なんか昔あったみたいですね!?
「若書きとはいえあの権六はイメージとして悪くないので、流用した次第です。―-逆に言うと、本作ではあんまり権六さんって語ることが多くないんですよ。恒興さんともほとんど絡みませんしね」
まあ、そうですよねえ。
「そうそう、実は、津田信澄さんの後見人が柴田さんです。あ、これは作中でも書いてましたね」
では、次は……。
「丹羽長秀です」
うわ、来た。今回一番の問題児じゃないですか!
「どうして?」
いやだって、丹羽長秀といったら米五郎左の愛称で知られて、人格者というイメージが強い人じゃないですか。あの人をああも悪辣に書きますか?
「でもさー。信長幕下の武将たちってみんなアク強いじゃないですか。その中での“人格者”なんて、どれほどのもんじゃいと思ったんですよ」
すげえ言い分……。
「で、丹羽さんは前線での働きというよりはむしろ帷幄の奥に居て領国経営や造作なんかに辣腕を振るっているので、吏僚的なイメージで造型しています」
なるほど、石田三成みたいな。
「そうそう。信長さんって頭いい人が好きなんじゃないかなと思いまして」
でも、だからってあんなにイヤミに書かなくても……!
「うーん、それは、津田信澄さんを殺しちゃったという一点において、このお話においては割を食っちゃう運命だったんですよねー」
なんてこった。でもあれは実話なんですよね?
「ええ。実際に殺っちゃってます。信澄さんの嫁が明智の娘だったとはいえ、この殺害は丹羽さんの野心が見えちゃってるなー、という逸話のような気がしています」
でもこう、対照的な二人でしたね。
「はい、自分の仕えるべき新たな主を探そうとしていた節のある権六と、主を自らがコントロールしようと思っていた丹羽、という違いですね。そういう意味では、丹羽の方が羽柴に近いという設定です」
なるほど……。そういえば、清洲評定の件なんですが。
「はい?」
清洲評定って、あんなに紛糾しなかったという説がありますよね。
当然ご存知ですよね。
「もちろん。今一般に膾炙している清洲評定の元ネタは、江戸時代に成立したとされる川角太閤記という書物で、その中で「四宿老が次なる御世継ぎを選ぶ際、すったもんだがあって三法師になりました」という筋書きがなされていたのですが、同時代史料にこの筋書きを否定するような証言もあるのでかなり怪しいです」
でも谷津さんのこのお話では、完璧に川角太閤記のまんまですよね? なんで?
「決まってるでしょ、そっちの方が面白いからだよ!」
ええええええ!?
「だって見たいですか? 実は四宿老(この内訳にすら諸説ある)の間で既に三法師擁立ということで話は決まっていて、僅かに紛糾したのは遺領配分だけだった、みたいな清洲評定。ドラマがないでしょ」
確かにそれはそうですが……。
「というわけで、川角太閤記を全面採用した次第です」
すげえ正面突破……。
続く。
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「信長さまはもういない」(光文社) 大好評発売中!
はい、では今回からはキャラクター説明となりますが。
誰から説明を……?
「はい、まずは池田恒興の奥さんであるお応さんですね。この人が一番史実から外れた感じですから」
えええええええ。史実から外れてるってどういうこと!?
「正確には、このお応さん、本作ではチョイ役のくせに、凄く考証が厄介であると言えます。そもそもこの時代の女性にはありがちですが、本名すらつまびらかではありません」
え、じゃあ『お応』というのは?
「池田恒興さんの奥さんは史料上、”荒尾御前”や”善応院”の形で出てきます。一般に、奥さんが入道するのは未亡人になってからという場合が多いので、本作の時間軸にあっては”荒尾御前”と呼ばれていたはずです。しかし、そのままではほかのキャラクターとの名前の重さがちぐはぐになってしまうので、彼女の院号から一文字取って名前としました」
なるほど。そういえば、他の創作物なんかだと、信長に対抗した織田信行に最初嫁いでいて、本作でも出てくる津田信澄の実母という説がありますけど、本作ではガン無視ですねえ。
「実はそうしてやったほうがはるかにお話としての必然性が高かったんですが、善応院が津田信澄の母である、すなわち織田信行の妻だった時期があるというのはあまり有力説ではなく、織田信時という人に嫁いでいたという説が有力です。なので、お話の必然性ではない評価軸でもって彼女をイメージしました」
ふーん、つまり、日和ったというわけですか。谷津さんらしからぬことですなあ。
「ええ、善応院の扱いについては今後の反省点です。ただ、恒興さんと善応院さんは非常に仲のいい夫婦だったらしく、一説には間に六人も子供がいた上、恒興さんに側室がいたという形跡は今のところ見つかってません。そんな仲の良さが滲んでいるといいなあと思います」
さて次は……。
「はい、池田之助さんです」
え、もう!? メインキャラクターの一人じゃないですか!
「けれども、実はお話の中で出てくる以上に語るべきことはそう多くないんです。之助周りのことは本作を読めばわかると思います」
そうなのか……。
「ただ、恒興さんもそうですが、この之助さんも後世の史料がお世辞にも多い方ではありません。そもそもこの人、本名が「之助」なのか「元助」なのかもはっきりしていません」
ま、マジですか!?
ああでもあれか。崩し字にしたときに「之」と「元」ってめちゃくちゃ似てますからねえ……。
「実は、お子さんの名前が由之さんと元信さんと言いまして、通字(親の名前の字を一つ取って名前をつけること)からもわからないんですよ」
なんと、「之」でも「元」でも通字として通用しちゃうってことですか!
「しかも、そのあと由之さんの系譜は『由』が通字になってしまうので、なおのことワケワカメでしてな」
どうでもいいけどワケワカメ、古くないっすか。
「んなことはどうでもいいんだよ。――とまあそんなこんながありまして今一つはっきりしなかったので、比較的珍しい『之助』を選んだ次第です。実は、学者さんの間では『元助』が有力らしいんですがね」
そうなの!?
「ええ。語感で選んだということをここでゲロッておきたい」
なんてこった。
「でもまあ、『元助』ではきっと、あの愛すべき息子は生まれなかったと思うので、これはこれでアリだと思っています。『三人孫市』の時もそうでしたが、わたしのスタンスは『わかりやすさと面白さ重視』です」
言い切った!
次回へ続く!
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「信長さまはもういない」(光文社) 大好評発売中!
さて、海底に潜んでいたわたしも、もうそろそろ地上目指して浮かび上がろうではないかッ……。
「なんか言うてはる」
おう、谷津さん。久々にお呼びがかかってうれしいんだわたしぁ。
「だろうね。ってか、もうそろそろいい時期ですからね」
おおう。始めようではないか。
谷津さんの新作、「信長さまはもういない」のライナーノーツ企画を。
「やっていこうじゃないですか」
まず、第一回目はたいてい作品のコンセプトとか裏話なんかを話しているんですが。
「でも実は、コンセプトなんかに関しては小説宝石9月号にエッセイを寄稿していまして、そちらをご参照頂くのが一番なんですよね」
そうなのか。んじゃあここで話すことが無くなっちゃうじゃないか!
「そうでもないんだな。あちらで語れないこともたくさんあってですね。というわけで、エッセイと重複しない程度に語っていこうと思ってます」
ほう。
「『信長さまはもういない』は本能寺の変の後に遺された家臣たちを描きたくて描いたものです。そう、つまりは拙作「曽呂利!」(実業之日本社)の蜂須賀小六のくだりで描いたモチーフを掘り下げているんですね。本作は「曽呂利!」の片割れみたいな面があります」
ほうほう、片割れ、と。そういえば、本作でも蜂須賀小六が出てきますよね。
「はい。新しい時代を迎えたときにそうそう素早く人は順応できるものだろうかという問いが、「曽呂利!」での小六ですし、本作のテーマでもあるわけです」
なるほど。で、なぜ池田恒興さんが主人公なんです?
「いろんな理由がありますが、彼は『信長のいない世の中』に順応しているようであり、死に急いでいるようですらあり、彼の後半生はなんとも不思議だったからです。それに、なまじ秀吉に近く、家康に敵対したという関係で二次史料すらあまり残っていないというのもミソです」
つまり、書きやすい人物である、と。
「ええ。それに本作、かなり嘘をついていることをここに表明しておきますね」
まあそれはいつものことだ。
そもそも、「信長の秘伝書」なんていうのも大嘘でしょうしね。
「こらこら、それじゃあ何のことだかわからないでしょうに。
ええとですね、本作では、姉川の戦いの終わりに、恒興が信長から彼が徒然に書いていた秘伝書(ハウツー本のようなもの)を下されるところからスタートします。信長亡き後、恒興が秘伝書を振り回して先行き不透明な政局を乗り切らんとする、というのが本作のスタートです」
もちろんこのくだりは大嘘なんですよね?
「言うまでもなく!」
ってことは、この「信長の秘伝書」こそが本作最大のフックということですね。
「もちろんそういうことです。わたしの小説だけに限りませんが、歴史小説を読む際には、史実と異なるところや史実の隙間に挟まれた創作部分を追っていくことで、作品の仕掛けがわかりやすくなると思います」
なるほど。
「ちなみに、本作のイメージはショーペンハウアーの『読書について』と、スピッツの『トンビ飛べなかった』です。ご参考にしていただけるとこれ幸い」
ね、ネタバレもいいところじゃないですか!
「いや、案外そうでもないのです」
というわけで、続く!
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