【ただいま新刊「しゃらくせえ鼠小僧伝」発売中です!】
前回の続き。
さて、今回は……。
「今回は松浦静山と鈴ヶ森親分です」
おお、実在の人物キタ!
「ええ、いちおう本作は歴史小説のつもりなんですが、今一つ実在の人物が出てきませんで……。その例外の一人がこの静山さんです」
しかしなぜ松浦静山が本作に?
「いえ、彼の著作に『甲子夜話』というものがありまして、その中で結構鼠小僧のことを叙述しているんですよ。それゆえです」
そもそも『甲子夜話』って何ですか!?
「ええとですね、隠居時代の静山が、江戸の町に流れていた噂とか見聞きした事件をまとめておいたエッセイみたいなものです。実は、鼠小僧義賊伝説の形成にも、この『甲子夜話』が関わっています」
というのは?
「鼠小僧が義賊だとされたのは、人を殺さなかったこと、金にしか手を出さなかったこと、武家屋敷にしか手を出さなかったことにあるとされています。そのイメージを同時代で描き出したのが、この『甲子夜話』なんです」
ほうほう。
で、あの静山さんの人物造型は一体どういう……。
「こういっちゃアレですけど、静山さんって相当上昇志向強いっすよ。彼の現役時代は、幕府のお役目につくためにいろんな人に贈答を送っていたくらいですからね」
え? あれ? 松浦静山さんって外様じゃありませんでしたっけ? その人が幕府の役職を求めているんですか?
「実は、外様大名でも願い出て受理されれば譜代大名並みになることができて、幕府のお役目にもつけるんですよ。というわけで、彼は出世したくてもできず、大名として不遇であるがゆえにああして面白いことに首を突っ込む俗物として描きました」
俗物……。でも、あの人、そんなに悪党ですか。
「どうでしょうねえ。とんでもない悪党だと思います」
著者が言うならそうなんでしょうなあ。
さて、次は鈴ヶ森親分ですが……。
「あっはい、ここからはリアルな悪党が続きますので比較的紹介が楽です。鈴ヶ森親分に関しては、『ヤクザが描きたい』という一心で描き出したキャラクターです」
ヤクザが描きたいってあんた。それに、鈴ヶ森親分って目明し(岡っ引き)でしょう?
「あの時代、ヤクザが目明しを兼ねているなんてよくある話です。というか、目明しというのは裏の世界に通じている人間を登用して検挙率を上げる、というなんともアレな仕組みなので、結構こういう悪党は多かったみたいですよ」
そうなんですか……。
「まあ、かなり恨まれる稼業であったようで、何らかの罪で目明しが牢に押し込められると囚人たちの手にかかって殺されるなんてことは日常茶飯事だったそうで」
うわあ……。聞きたくなかった!
「そんな、ある意味でベタな悪党が鈴ヶ森親分でした。性格なんかについては、まあそのあれだ、どこまでもベタに造型しました」
おい!
続く。
|