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真名(まな) [ 日本大百科全書(小学館) ] .漢字の音・訓を仮借(かしや)した仮名(万葉仮名、平仮名、片仮名)に対して、漢字そのものをいう。「ま」は真正、「な」は文字の意で、まんな、本字ともいう。仮名または仮名交じり文で書かれた仮名本に対して、同一内容を漢字だけで書いたもの、つまり漢文体のものを真名本とよび、『真名本伊勢(いせ)物語』『真名本平家物語』などが有名である。また、草書、行書に対する、漢字の楷書(かいしょ)を意味することもある。 [ 執筆者:沖森卓也 ] ・・・・・・・・・・・・・・・ 『万葉集』や『日本書紀』に現れた表記のあり方は整っており、万葉仮名がいつ生まれたのかということは疑問であった。正倉院に遺された文書や木簡資料の発掘などにより万葉仮名は7世紀頃には成立したとされている。実際の使用が確かめられる資料のうち最古のものは、大阪市中央区の難波宮(なにわのみや)跡において発掘された652年以前の木簡である。「皮留久佐乃皮斯米之刀斯(はるくさのはじめのとし)」と和歌の冒頭と見られる11文字が記されている。 しかしながらさらに古い5世紀の稲荷山古墳から発見された金錯銘鉄剣には「獲加多支鹵(わかたける)大王」という21代雄略天皇に推定される名が刻まれている。これも漢字の音を借りた万葉仮名の一種とされる。漢字の音を借りて固有語を表記する方法は5世紀には確立していた事になる。 平安時代には万葉仮名から平仮名・片仮名へと変化していった。平仮名は万葉仮名の草書体化が進められ、独立した字体と化したもの、片仮名は万葉仮名の一部ないし全部を用い、音を表す訓点・記号として生まれたものと言われている。 万葉仮名を「男仮名」と呼ぶのは、和歌を詠む時など私的な時や、女性に限って用いるものとされていた平仮名が「女手」とされたのに対し、公的文章に用いる仮名として長く用いられたためである。 種類 1. 字音を借りたもの(借音仮名) 一字が一音を表すもの 全用 以(い)、呂(ろ)、波(は)、… 略用 安(あ)、楽(ら)、天(て)、… 一字が二音を表すもの 信(しな)、覧(らむ)、相(さが)、… 2. 字訓を借りたもの(借訓仮名) 一字が一音を表すもの 全用 女(め)、毛(け)、蚊(か)、… 略用 石(し)、跡(と)、市(ち)、… 一字が二音を表すもの 蟻(あり)、巻(まく)、鴨(かも)、… 一字が三音を表すもの 慍(いかり)、下(おろし)、炊(かしき) 二字が一音を表すもの 嗚呼(あ)、五十(い)、可愛(え)、二二(し)、蜂音(ぶ) 三字が二音を表すもの 八十一(くく)、神楽声(ささ) 一字一音の万葉仮名の一覧<略> 「上代特殊仮名遣」 現代日本語の50音のうち、イ段のキ・ヒ・ミ、エ段のケ・へ・メ、オ段のコ・ソ・ト・ノ・(モ)・ヨ・ロの13音について奈良時代以前の上代には甲類と乙類の万葉仮名の書き分けが見られ、両者は厳格に区別されていたことがわかっている。ただし、モの区別は『古事記』のみに見られる。またエにも2種類の書き分けが見られるが、ア行とヤ行の区別と見られ、上代特殊仮名遣には含めないのが一般的になっている[1]。なお、甲乙の区別は濁音のギ・ビ・ゲ・ベ・ゴ・ゾ・ドにもある。 甲乙の差異については、例えば「き」を表す万葉仮名は支・吉・峡・来・棄などの漢字が甲類の「き」とされ、「秋」や「君」「時」「聞く」の「き」を表す。そして己・紀・記・忌・氣などが乙類の「き」とされ、「霧」「岸」「月」「木」などの「き」を表す。上代の文献では一部の例外を除いてこのように整然たる仮名の使い分けが見られる。 こうした甲乙の区別は、一々の単語ごとに習慣的に記憶されて使い分けられたものではなく、上代においては何らかの音韻の区別によるという説が立てられた。例えば母音がアウの2音の他にイエオのみ甲乙の2種類に分かれ、8母音であり、上代日本語は50音でなく87音(あるいは88音)あったとする。そして、平安時代以降になってそのような区別が薄れたため、それぞれ統合されていったと考えるのである。ただし、実際の音価については不明な点も多く、また音素として別だったかについても異論がある[2]。 上代特殊仮名遣が廃れてから「かな」が発達したため、これを表現する仮名文字は存在しない。そのため、文字上で甲乙の区別をする必要がある時は「甲」「乙」と明記するか、右左の傍線、ローマ字のウムラウト、カタカナ化などで対応している。
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