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僕のトレログもこれで最後となりました。 今回は、僕が西武ライオンズのコーチとして ふだんどんなふうに選手と接しているか、 その一端をご紹介しようと思います。 プロ選手の場合、入団してきたばかりの選手であっても、 投げ方を一から教えることはありません。 はじめは、アマチュアのときによかったときの投げ方はどうだったのか、 指導者にはどんなことを言われていたかという話から入ります。 新しい球種も、自主的に覚えます。 投げ方には決まった形があるわけではありませんので、 握りをヒントとして与えて、 キャッチボールから投げていくという形を取り入れています。 曲げたり落としたりするときは、 しっかりした腕の使い方、手首の使い方が必要ですが、 最初からできるものではありません。 変化球の握りでまっすぐ投げる感覚を最初に覚え、 アウトサイドやインサイドに投げ分けて、 自然に変化するようになることが 変化球をマスターする第一歩です。 選手にもいろんなタイプがいますので、話す内容も 投げ方だったり、精神的なことだったり、逆にほったらかしだったり、 ふだんは野球以外のことはまったくしゃべらないなどそれぞれです。 ただし、フォームを見ていて、無駄な動きを注意したり、 よかったときと比べて「今日はひねりが大きかった」とか、 「背番号が見えすぎている」ということは言っています。 うちの松坂大輔投手レベルの選手になると、基本的にわかっているので、 「前回はこうだったけど、今日はこうだった」と言えば、 自分でうまく修正することができるので、比較的楽に話が進みますね。 高校生くらいまでだと、 ピッチングだけを見てくれるコーチはいないことがほとんどでしょう。 選手同士でフォームをチェックするときのポイントは、 無駄な動きを省いていくことです。 これは基本中の基本ですが、投げるだけでなく、 打つ、走るということにも同じことが言えると思います。 僕がマウンドに行くのは、ピッチャーがピンチになったときです。 この状況で、マウンド上のピッチャーが落ち着いていることは まずありえませんから、とにかく相手側に傾いてしまった流れに 間をとってあげるだけのことしかできません。 つまり、投げ急いでしまうピッチャーにストップをかけて、 少しの間マウンドから下ろしたり、 話をすることで、呼吸をとれるようにするのです。 これまでの内容を振り返ってもしょうがないですし、 反省はあとからでもできるので、終わったことはもういいとして、 その場では「前を向いて」「しっかり抑えろ」と声をかけたり、 時にはおしりを強く叩いたりします。 ピンチの場面を引き継ぐピッチャーには、 「思い切って行け」としか言いようがありませんよね。 大変な場面で抑えることのほうが難しいわけですから。 実際に選手に言ったことはありませんが 「前のピッチャーが出したランナーだから返してもしょうがない。 そこからイニングが終わるまでのアウトを取ればいいだけだから」 という気持ちで送り出します。 ピッチャー自身としては、ただ向かっていくだけ。 相手よりどれだけ強い気持ちになれるか ということが大事だと思います。 これまで約3か月間にわたり、ピッチングを中心に トレーニング方法についてご紹介してきました。 少しでも皆さんの助けになれば、これほどうれしいことはありません。 練習は大切ですが、無理は禁物です。 大好きな野球をできるだけ長く楽しんでほしい、そう願っています。 |
【野球】荒木大輔のトレログ
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われわれ西武ライオンズにとっての2006年のシーズンが終了しました。 残念ながらリーグ制覇はなりませんでしたが、 来年の日本一を目指してさらに頑張っていきたいと思っています。 これからも応援よろしくお願いします。 今回は、ピッチング以外にも大事にしてほしいことについて、 2つ書いてみたいと思います。 ピッチャーも投げ終わったら野手の1人になるので、 投球動作後すぐに野手のような体勢をとれるようにすることが必要です。 基本的に、それがきちんとできていれば、 ピッチャーに向かって打球が飛んできたときに ファーストでアウトにすることができますし、 ライナーなどの速い打球の場合でも、 グローブでボールをたたき落として拾ってから ファーストに投げればアウトは取れるので、 あまり慌てることはありません。 マウンドよりも左側(一塁側)に打球がいった場合には、 必ず一塁方向にスタートを切ります。 そして、セカンドがとるボールのときはスピードを緩め、 ファーストが動くようだったら全力で一塁ベースカバーに入るというように、 飛んだ方向によってどう動けばいいのかを判断します。 ちゃんとスタートを切っていれば、次の判断はそのときにできるので、 まずは走り出せる体勢をとっておくことが大事です。 キャッチャーのサインと自分が投げたい球種が合わないときは、 首を振って自分が投げたい球種のサインがキャッチャーから出てくるまで待つか、 もしくは、首を振らずに見ていてもサインが合っていないという合図になるので、 投げたい球種のサインが出たらうなずきます。 ところで、ピッチャーとキャッチャーの どちらが考えたボールを投げるかは、 2人のどちらが支配的な立場にいるのか という力関係によるところがあります。 例えば、西武ライオンズも伊東監督が現役のときは キャッチャー主導でしたが、 今のように若いキャッチャーがマスクを被るようになると、 石井貴投手や三井浩二投手のようなベテランが投げる場合は投手主導になります。 ただ、先発投手に主導権があってイニングが長くなると、 精神的に疲れてしまい集中力を欠いてしまうので、 基本的にはキャッチャーに任せて ポイントだけ自分の投げたいボールを投げるなど、 いろいろな組み合わせを使ったほうがいいでしょう。 バッテリーのどちらかだけが主導権を持ってしまうと、 その癖や傾向が相手に読まれやすくなるので、主導権を固定せずに 攻撃側に考えさせる球のバリエーションを増やすことも作戦の1つです。 |
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夏の暑さも遠のき、野球を観戦するにも、 プレーするにも気持ちのいい気候になってきましたね。 依然白熱するペナントレースを前に、 僕らプロ野球関係者は息つくゆとりもありませんが、 球場は盛り上がっています。 みなさんもぜひ、スタジアムに足を運んでみてください。 さて、このブログも残すところあと3回となり、後半戦に突入です。 今回は野球の醍醐味のひとつでもある 駆け引きについて書きたいと思います。 以前、ピッチャーは速い球で三振をとるのが 究極にうれしいものだとお話しましたが、 三振をとるにはそれ以外にも、タイミングを外す、 きっちりしたところに投げるという方法があります。 タイミングを外すためには、 ・速い球を投げたあとに緩い球を投げる ・インサイドに投げて恐怖心を与えて、外へ投げる…… などが考えられます。 ですが、これはあくまでもセオリー。 このままだと、インサイドに投げたら、 次はアウトサイドだと分かってしまうでしょう。 そこを、もう一度インサイドにいってみる。 セオリーをもとに、駆け引きをするのです。 バッターがどんなボールを待っているかを察知することも必要です。 たとえば、バッターのタイミングの取り方を見てみると、 変化球よりストレートを待っているときのほうが始動が早くなる。 そのほんのちょっとした動き方を見逃さない。 それがキャッチャーの仕事でもあるし、 マウンドからピッチャーが見なければいけないことでもあります。 バッターが待っていると分かっている球を投げることもあります。 カウントにもよりますが、 バッターが待っている球をわざとボールゾーンに投げる。 そうすると、バッターはそのボールを待っていたわけなので、 打ちにいってしまう。 逆に、フォームやちょっとした動きで、 ピッチャーの癖を見抜くバッターもいます。 そういうバッターに当たったときは、 ストレートのようなフォームで変化球を投げてみる。 バッターとピッチャーのだまし合いですね。 でも、それがピッチャーの楽しさでもあります。 いまの時代、ビデオが大変普及していますので、 相手の動きを撮ってコマ送りにしたり、写真にしたりして よく研究することができます。 われわれプロの場合は、それをずっと続けなければなりません。 次に対戦するときは相手も研究してくるので、 また新しい策を考えたり、 別の癖を探したりと終わることはないのです。 バッターとの駆け引きはピッチャーの醍醐味です。 バッターの裏をかいたり、裏をかくと思わせて素直にいったりなど……。 そう考えると、バッターと対戦するのがワクワクしてきませんか? |
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9月に入り、朝晩はずいぶんと涼しくなりましたが、 パ・リーグのペナントレースはますます熱くなるばかりです。 一戦たりとも負けられない大切な試合ばかりで、 毎日が緊張の連続ですが、充実したシーズンを過ごしています。 さて、4回目となる今回は球種について書きたいと思います。 それは、永遠のテーマです。 プロかアマかにかかわらずピッチャーをやっている人なら、 速いボールを投げて空振りさせ、 三振に打ち取るというのが究極の喜びでしょう。 西武ライオンズの松坂大輔のストレートは、 僕らが見ていてもうらやましいくらいの球ですし、 あんな球があったらなとか、投げてみたいなと思わされます。 松坂のようなストレートを投げることは、 ピッチャーの夢であり、あこがれです。 だからこそ、松坂はあれだけの人気があるんです。 では、どうしたら松坂のようになれるのか。 将来、そういう選手になれるように、 子どものころにきちんとした食事をとったり、 総合的なトレーニングをすることは可能かもしれませんが、 “これさえやっておけば速くなる”という答えは、 残念ながらないのです。 コントロールを良くするためには、バランスが大切です。 軸足で立ったときに、その体勢がしっかりしていること。 そして、そのままうまく体重移動をして投げられれば、 コントロールは自然とよくなります。 また、投げるときは、キャッチャーのミットから目を離さないようにしましょう。 体に負担がかかってけがにつながるので、 子どものころはカーブやシュートのような曲げる変化球は 投げないほうがいいという研究結果が出ています。 ですから、アメリカの子どもたちは、 曲げないチェンジアップから変化球を覚えていくようです。 チェンジアップを投げるときは、 壁をなでるように腕を動かしていくのがコツです。 変化球の“楽しみ”という点からいうと、僕はカーブが面白いと思います。 曲がりが大きく変化がよく分かるので投げていて本当に楽しいし、 打たれるか打たれないかではなく、曲がること自体がうれしいんです。 ただし、曲がることばかりを求めてそれに満足してしまい、 ピッチャーとして伸びなかったり、 打たれたりという場合もあります。 西武ライオンズでも、非常にスピード差があって 変化も大きい有効な球種ということで、 カーブはマスターしなければならない大きな課題となっています。 |
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8月も、もう終盤です。 甲子園は僕の母校でもある早稲田実業が優勝しましたね。 決勝は両校とも力を出しつくしたすばらしい戦いでした。 われわれ西武ライオンズも優勝に向かって、 いま1試合1試合を大切に戦っています。 野球を長く続けるためには、 できるだけ故障をしないようにしなければいけません。 僕は、プロになって肘の手術を3回受けて、 現役の半分くらいはリハビリに費やしてしまいました。 プロの一部のピッチャーは手術を受けていますが、 それは仕事だからですからね。 故障をしないようにして、 いい状態でプレーをすることが大切です。 「肘を肩のラインより上げて投げる」ことが、 故障をしない投げ方の基本です。 肘が肩のラインより下がってしまうと、 肘や肩に負担がかかってしまい、故障しやすくなってしまいます。 オーバースローはもとより、 サイドスローやアンダースローでも同じことです。 うちのチームの場合、試合後のケアは トレーナーが指示してくれています。 皆さんも、投げ終わった後、 ベンチに座っているピッチャーの肩が異様に盛り上がっているのを 見たことがあるでしょう。 あれは、肩に氷のうを当ててアイシングをしているんです。 投げて熱を持った筋肉や関節をアイシングし、 いったん血管を収縮させる。 適切にアイシングできたら氷のうを外します。 そして、冷やした部分が温かくなって 血管が広がったときに血液の流れが良くなり、 疲労を最小限に抑えてくれます。 選手の体のケアについては高校野球の世界でも力を入れていて、 甲子園大会では試合後、アイシングやストレッチの時間を必ず設けています。 各学校にも健康管理をするトレーナー的な人がいると思いますが、 ここでは、高野連から依頼を受けた理学療法士が、 アイシングやストレッチの指導をしてくれます。 疲労が怪我や故障につながることもありますので、 きちんとクールダウンすることを心がけてください。 |


