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「週報第 321號」から2年後の昭和十九年十月一日付け「音樂文化」第二巻第十號は、もはや2年前のような余裕は感じられず、追い詰められている様子が伝わってくる。特輯「音樂の戰力化」を組んでいる。
「直接戰力としての聴覚訓練」及び「決戰下の音樂総動員 挺身活動の強化力」の二つの座談会構成である。出席者の中には、軍人や技術者などのほかに、聞き
覚えのある増澤健美と清水脩という二人の音楽関係者がいる。 増澤健美は、戦後も長らく、ラジオの音楽番組で解説などをしていたように記憶する。肩書きは日本音樂文化協會理事長となっている。
清水脩は合唱曲「月光とピエロ」の作曲者だろう。両座談会の司会者となっているところを見ると、事務方の責任者のような地位に就いていたのだろうか。
ほかに、伊藤武雄という名前もある。同姓同名の人物をドイツ文学者として知っていたが、この場面にはそぐわない気がして、ネット検索したところ、やはり別人で、クラシック歌手であった。
雑誌の編集・発行の責任者は堀内敬三となっている。
これらの人たちは戦後も元気で、随分活躍された。軍部独裁下の総動員体制に組み込まれて、誰もが聖戦遂行をすべてに優先させざるを得なかった時代状況を理解する必要が有る。それでも、戦後、己の行動を恥じて潔く身を引き、不遇のうちに生涯を終えた人たちと比べざるを得ない。
なお、楽譜が6曲掲載されている:
音樂挺身隊用野戦樂曲「燃ゆる大空」(ピアノ独奏曲)山田耕筰 作曲、高木東六 編曲
國民歌「一億總進撃の歌」(情報局選定)佐藤春夫 作詞、草川 信 作曲
「朝の挨拶」城 左門 作詞、深井史郎 作曲
國民歌「復仇賦」(情報局選定)尾崎士郎 作詞、中村俊介 作曲
「風鈴」岩佐東一郎 作詞、伊藤完夫 作曲
「縄跳運動伴奏曲」深海善次 作曲
ここにもお馴染みの芸術家の名前を見ることが出来る。情報局選定の國民歌の作者には、所属先として日本文學報國會、日本音樂文化協會の名が明記されている。
「風鈴」は、全く戰時色を感じさせない歌詞である。「朝の挨拶」も、検閲対策と解することも出来る勇ましい語句が2,3盛られているだけである。
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