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森村誠一の「悪道シリーズ」を順読中。その第3「悪道 御三家の刺客」を読み終えた。この商品の内容紹介は次の通り:
≪徳川家五代将軍・綱吉に成り代わった影将軍の善政によって、天下の悪法「生類憐みの令」も緩和され、江戸の町も明るさを取りもどそうとしていた。影将軍の秘密を知る、忍者の末裔・流英次郎と仲間たちは〜影将軍の親衛役を務めていた。
英次郎は町なかで人買いに捕まっていたという娘を助けることになる。ちさと名乗るその娘は、英次郎たちに保護されるとすぐに禁断症状を起こした。おそでの見立てによると、麻薬の中でも最も毒性の強い「阿芙蓉」のせいらしい〜
他方、市中で頻発する「神隠し」の正体が、人買い商人の仕業であることがわかってくる。この阿芙蓉と神隠しが結びつくことで、組織的な巨悪がその輪郭を現してきた〜巨悪の候補に、なんと御三家の一家・紀州藩と、海商・十文字屋の名が浮かび上がってきた≫
森村の時代小説を読むのは初めての筈だ。社会問題の匂いはさせず、娯楽読み物に徹しているようだ。時代考証については判断できないし、楽しむうえでは問題にする必要も無いと割り切って読む。要するにフィクションと見做して読めばよい。
娯楽読み物と言いながら、思考ゲームの素材をたっぷりと提供してくれる。対立勢力が互いに裏の裏まで読んで相手の殲滅を図るゲームの連続というスタイルは、内容の現実味は別として、読み手の頭の体操になる。
本書の話の筋には関係ないが、序盤pp.42-43に、次のようなくだりがあった:
≪毒を飲んで死んだ刺客が、もしかして行き返るかもしれない、と名医おそでが告げる。断末魔の様子からすると、毒物は、南蛮に生育するフジウツギの種子に含まれる毒ではないか。この毒に冒されると、繰り返し痙攣し、呼吸困難に陥り、死んだように見えるが、仮死状態から蘇生することがある≫
フジウツギは数年前、当欄に登場している(ナツフジ〜藤色の花〜固い莢2013/9/3(火),2013/9/18(水))。その頃は、毒性の記述など目に入らなかった。改めて検索してみると、≪全草にサポニンの毒を含む。毒を流して魚を取る漁法に使われたこともある≫と知れた。 サポニンは結構様々な植物に賦存する成分だと承知するが、本書に言うほどの強い毒性を有するものなのか。勿論、摂取量にもよるだろうが。
フジウツギの仲間は、ウィキペディアによれば≪ヨーロッパ・オーストラリアを除く温帯・熱帯に分布し≫、≪日本にはフジウツギB. japonica とウラジロフジウツギB. curviflora が自生する≫とある。
つまり、本書にいう「フジウツギ」は、日本に自生せず、南蛮(主に東南アジア)に生育するフジウツギ属の植物を指すのだろう。
そこで更に検索したところ、かつて広義のフジウツギ科とされた≪東南アジアに分布するマチン属のマチン(馬銭)は猛毒のストリキニーネをもつ≫との記述があった(出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ))。
また、ストリキニーネは≪主にマチン科の樹木マチンの種子から得られ≫るとあり、その中毒症状は、ほぼ本書の記述の通りのようである。≪マチンの毒の主成分はストリキニーネ及びブルシンで、種子一個でヒトの致死量に達する≫ともある。
それにしても、森村さん、よくお調べになったものだ。
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