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以前紹介した月刊誌「科学」(岩波書店)の連載「物理の響き♪こころのひびき♯♭─音楽への認知的アプローチ 伊東乾」の5月号のタイトルは「俳句とベートーヴェンを繋ぐもの」である。
錯覚の効果、原理、応用について、視覚(美術)と聴覚(音楽)を対比して論ずるシリーズのうちで、「補完」という脳内の認知作用についての巻である。
芭蕉の「閑さや岩にしみ入蝉の声」の句で、「閑さ」と「蝉の声」とが、論理的に繋がらないとし、この意味上の「距離」を人は脳内で高次に補完するところから、俳句への味わいが始まるというのである。
そのプロセスは、「蝉の声」をずっと聴いているうちに、馴化により、それを認知しにくくなることから、脳内での「閑さ」が生まれるのであり、人はそれを無意識に補完しながら論理的には繋がらない俳句を味わっているということらしい。
つまり、省略部分の補完によって俳句を幾重にも味わうことが可能になるとの説である。
そのこととベートーヴェンとが、どう繋がるのかというと、ベートーヴェンも作曲における省略と鑑賞における補完との対応を見事に活用しているというのだ。
詳しいことは当管理人の理解力を超えるが、古典的な和声で「カデンツ法則」と呼ばれるコード進行のル
ールによる冒頭部分を省略し、「途中」から曲を始めるという破天荒な手法を採るなど、無数の省略を併用する、気の利いた音楽家なのだそうだ。
具体例として、交響曲第5番の演奏解釈を紹介している。プロもアマも、この点に関しては、理解が薄いと嘆いていらっしゃる。伊東先生はオーケストラの指揮をなさる実践的音楽家でもあることが分かる。
http://blogs.yahoo.co.jp/yhakrymd/45776708.html
http://blogs.yahoo.co.jp/yhakrymd/47441777.html
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