|
古書展で一群の古い楽譜が目に付いた。大正から昭和に掛けての頃の出版である。どれもこれも興味深いものだが、ぐっと我慢して、一つだけ買った:
チャイコフスキー作曲「混声合唱 鶯」(福居鎌一郎 譯歌)。
短い解説によれば、有名なロシア民謡「鶯の別れ」を主題として作曲作歌した極めて名高いものだそうだ。
とすると、ロシアの歌をロシア語で歌う主義の者として、見過ごすわけにはいかない。各声部のメロディーを追ってみた。比較的単純だ。しかし、知っている曲ではない。もう少し調べてみよう。
何気なく奥付を見ていて、眠気が覚めた。印刷所の住所が金澤市となっている。もう一度見ると、発行所は東京の新響社で、その振替口座として、東京66402番と共に、金澤出張所の金澤5930番が付記されている。
発行日付は、大正13年1月8日である(現物は5月10日の3版)。関東大震災の直後に当たるから、実務は地方都市の拠点に移していたものと合点がいった。
テノール部には、愛しの「ハ音記号」が使われている。ただし、ドの位置が第4線でなく、第3間になっているのは、結局、ト音記号と同じ効果だ。単なる衒学趣味の観がある。
まさか、印刷ミスじゃないだろうな。
|

- >
- エンターテインメント
- >
- 音楽
- >
- クラシック


