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「岡田英弘著作集」(全8巻)が一部で評判らしい。“待望の第2巻”の内容要旨と思しき“世界史はモンゴル帝国から始まった”と題する編集部宣伝文を読んだ。面白いので、それを更に勝手に要約してみよう:
“モンゴル軍の行動範囲は、サハリン、九州、ジャワ、インダス河、パレスティナ、ポーランド、ハンガリー、アドリア海岸にまで及んだ。
モンゴルの軍事力がユーラシア大陸の東西を結ぶ交通路の安全を保証したので、前例を見ない広域の経済圏が出現した。元朝は世界史上初の不換紙幣を発行して成功した。シナで芽生えた資本主義経済がモンゴル帝国時代に西方に波及して、13世紀ヴェネツィアにヨーロッパ最初の銀行が誕生した。
モンゴル帝国が中央ユーラシアの外に残した遺産は、世界の歴史に永続的な影響を与えている。中国が中央ユーラシアの東半分を領有しているのは、モンゴル帝国の遺産である。ハングル文字は元朝のパクパ文字(チベット文字を基にし、縦書きにしたもの)からつくられた。
モンゴルのハーンの代官として勢力を得たのがモスクワ大公であった。大公イヴァン4世は初めてツァーリ(ハーンのロシア語訳)を称した。そのモスクワ大公もクリミア・ハーンには貢納しなければならなかった。ロシアのツァーリも、清朝の皇帝と同様、モンゴルのハーンに起源をもつものである。
ロシア、ソ連が中央ユーラシアの西半分を領有したのも、モンゴル帝国の遺産である。
このように、中央ユーラシアの諸種族はモンゴル帝国に結集して、最終的に中国とロシアを生み出した。モンゴルに統合されなかった日本、西ヨーロッパから現在の世界三大資本主義経済(日本、アメリカ、EU)が生み出された。”
かなり乱暴に省略した部分があり、原文の意図するところは十分に伝わらないかも知れない。が、結論は、現在の世界情勢を理解するには、(モンゴル帝国を軸とする)中央ユーラシアの歴史からの視点が不可欠である、ということにある。
“待望の第2巻”のタイトルは「世界史とは何か」と格調高く、著者の意気込みが伝わる。従来の西欧中心の歴史観は世界史の本当の姿を見ていないということを、モンゴル帝国の事績に基づいて実証的に述べているのだろうと想像される。
“世界史はモンゴル帝国から始まった”が、著者の言葉なのか、編集部によるキャッチコピーなのか、気になる。著書を読まずに決め付けるのはナンセンスであるが、無数の歴史的事実の中から、何らかのシナリオに合致するものを選び取って“歴史”を描くことは可能だろう。反証、否定することのできない物語の世界だ。
“現在の世界情勢を理解するには、中央ユーラシアの歴史からの視点が不可欠である”と言う点も、抽象論でなく、具体的にどのような事実について言えるのか、例示があれば、と惜しまれる。
拙文の蛇足になるが、ツァーリの原語だとされるハーンが、ボロディンの歌劇《イーゴリ公》の中の合唱曲「ポロヴェッツの踊り」(韃靼人の踊り)の歌詞に頻繁に現れるのを思い出した。
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2013年11月12日
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