愛唱会きらくジャーナル

♪美しく青きドナウ,モルダウ,Waltzing Matilda,ナブッコ,ダニー・ボーイ♪次回9月10日2pm アカデミー向丘

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文学とはおよそ縁の無い身には些か気恥ずかしいが、かの有名な古今和歌集仮名序の冒頭文の権威に縋って、きょうは書き始める:
 

(やまとうたは、、、、、)力をも入れずして天地を動かし、目に見えぬ鬼神をもあはれと思はせ、男女のなかをもやはらげ、猛き武士の心をも慰むるは、歌なり(ウィキペディア)

 

【宣長訳】

(歌と云物は、、、、)ちからも入れずに天地をうごかしたり、目に見えぬ鬼や神を感じさしたり、男と女とのあひだをむつましうなるやうにしたり、あらくましい{荒々しい}武士の心をやはらげたりなどするものは歌ぢや。

http://www.asahi-net.or.jp/~sg2h-ymst/yamatouta/sennin/kanajo_y.html

 

ここに論じられている「歌」は「和歌」であり、現今言う「歌曲」つまり音楽ではない。しかし、音楽と解しても文意に何ら不自然さを感じない。


紀貫之が和歌について述べたことは、そのまま歌曲ないし音楽にも当てはまる。と言うより、歌曲についての方が、一層よく当てはまるのではないか。


平安時代においても同様であったのではないか。雅やかな言葉に親しんでおらず、和歌を十分に理解できない人であっても、メロディに乗って耳に入る歌には心を動かされるのではないか。


そもそも、詩歌は節(ふし)をつけて朗詠されるものだったという説もある(と理解している)。その通りだとすれば、紀貫之さんの言う“偉大な力を有する歌”とは、単なる三十一文字ではなく、歌曲としての和歌だったのではないか。


と、この程度のことは夙に先人が書き散らしているかも知れないが、歌(音楽)の効用という観点で最近目にしたエッセーを登場させるための前置きとした。


日経夕刊2013.7.2の文化面(p.16)に、木村敏氏(精神病理学者)が次のようなことを書いておられる:


“(大学での)音楽漬けの日々は、その後の精神病理学の理論構築に大いに役立つこととなった。「あいだ」という概念を巡ってである。

(合奏の)出来がよければ、音楽がひとつの大きな意思を持っているように感じられる。その意思は個々の奏者の演奏に影響しながら先へと導くのだが、誰かひとりが譜面を間違えると、たちまち消えてしまうものでもある。人と人との会話でも、この意思のようなものが現れると言えまいか。

 合奏や会話を成立させるのは、個々の奏者や話者の「あいだ」で働く、不思議な成り立ちのこの意思の力だ。〜〜〜統合失調症の患者の場合、人との「あいだ」に働く力と、患者個人の関係がうまく行っていないのではないかと考え、以来、臨床の場を通じて、理論を築き上げてきた。”


表面的には至極当たり前のことを述べておられるようにも読めるが、「あいだ」に働く意思、力などという概念からは、深遠な哲学的思想が見え隠れする。

とにかく、ご趣味で若い日に熱中した音楽が、後年、学者として成果を上げるのに大いに役立ったということだ.

音楽が人の心を穏やかに、豊かにするという効用、生計を立てる手段になるという効用の外に、思想誕生の引き金になるという実利的かつ高貴な効用をも発揮することが判る。
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