昨日の音楽サロンで、シューベルト作曲“DerLindenbaum”を当方が荒唐無稽に歌う羽目に陥ったのは、好意でピアノ伴奏を引き受けた主宰者が近藤朔風訳詞による簡約楽譜を用いたのに対し、当方は原曲版に拠ったためであることは記した通りである。
危惧しつつも、主宰者の強い勧めに応じたのは、打合せ無しでも何とか歌えるだろうと安易に考えたからである。実際にはそうは問屋が卸さなかった事情をこの際確認しておきたい。簡約版楽譜は今手許に無いが、両者の歌詞を対応させて掲げれば次のようになる筈である:
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Der Lindenbaum Wilhelm Müller
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菩提樹 訳 近藤朔風
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1
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Am Brunnen vor dem Tore,
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泉にそひて、繁る菩提樹、
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Da steht ein Lindenbaum.
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慕ひ往きては、美し夢みつ、
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Ich träumt´ in seinem Schatten,
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So manchen süßen Traum.
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Ich schnitt in seine Rinde
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幹には彫りぬ、ゆかし言葉、
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So manches liebe Wort
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嬉し悲しに、訪ひしそのかげ。
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Es zog in Freud und Leide
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Zu ihm mich immer fort.
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(長い間奏)
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2
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Ich musst` auch heute wandern
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今日も過ぎりぬ、暗き小夜なか、
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Vorbei in tiefer Nacht,
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眞闇に立ちて、眼とづれば、
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Da hab ich noch im Dunkeln
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Die Augen zugemacht,
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Und seine Zweige rauschten,
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枝は戦ぎて、語るごとし、
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Als riefen sie mir zu;
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来よ愛し侶、こゝに幸あり。
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Komm her zu mir Geselle,
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Hier findst du deine Ruh.
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(短い間奏)
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3
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Die kalten Winde bliesen
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面をかすめて、吹く風寒く、
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Mir grad ins Ansgesicht,
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笠は飛べども、棄てゝ急ぎぬ、
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Der Hut flog mir vom Kopfe
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Ich wendete mich nicht.
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(長い間奏)
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Nun bin ich manche Stunde
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遙か離りて、佇まへば、
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Entfernt von jenem Ort,
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なほも聴こゆる、こゝに幸あり。
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Und immer hör ich rauschen:
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こゝに幸あり。
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Du fändest Ruhe dort!
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Nun bin ich manche Stunde
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Entfernt von jenem Ort
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Und immer hör ich's rauschen:
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Du fändest Ruhe dort!
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両者の大きな違いは、簡約版では1番のメロディーを2,3番にもそのまま適用することだ。それは無論承知の上だった。
原曲では間奏が入ることも大きな違いだ。簡約版では間奏は無かったのではないかと思う。はっきりとは覚えていない。
この間奏の違いが曲者だった。恐らく(楽譜上)3番の前の間奏が極く短く、中間の間奏が長いことに惑わされてメロディーの開始を間違えたようだ。これは致命的で以後はメタメタになってしまったというのが実態だろう。
最後、3番の歌詞の繰り返しが原曲と訳詞とで異なることで止どめを刺された。
形式的には全部歌い終わった後で言い訳をする当方に、聴いていた皆さんは≪そんな歌だと思った≫と口々に慰めてくれた。社交辞令半分、本音半分かも知れない。
いい加減に歌う癖を付けないよう、気持ちを引き締めなければならない。
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