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散歩に読書、ぶらり旅、散策手帖
団塊世代の散歩、お昼寝、そして読書。漱石さんに会いに、さあ〜、散策にでかけよう!

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<『昭和史』半藤一利著>
 2004年と06年に単行本として刊行され、ベストセラーとなった半藤一利さんの『昭和史』。このほど、新たに講演録を増補し、文庫本サイズとなって出版されました。刊行のきっかけ、昭和史の見方について半藤さんに聞いたインタビュー記事がありました。


――文体は語り調で、随所に人物や日記などが登場し、エピソードもふんだんに盛り込まれています。昭和史でとかく分かりにくい「戦前・戦中」も読みやすいですね。刊行されたきっかけは何ですか。
◆昭和史が教えられていない
 平凡社の編集者から「学校では昭和史をほとんど習わなかったので、知らないことばかり。分かりやすい手ほどき的な授業をしていただけたら」といわれたんです。初めは乗り気じゃなかった。「そんな簡単には喋れない」と断っていたんですが、編集者から「日本の明日のためにもなるのですが」と食い下がられ、引き受けることにしたんです。
 それに加え、実はわたし、文藝春秋を辞める頃に、ある女子大に頼まれて3ヶ月半ぐらい講師をやったことがあるんです。国際情報学部といったかな、そこの3年生の女子大生50人にジャーナリズム論を教えました。そこで、「太平洋戦争」に関するアンケートをとったことがあるんです。「日本と戦争をしなかった国はどこですか」との質問に、「アメリカ、ドイツ、カナダ、豪州」から選んでもらったところ、アメリカに○をつけた学生が50人中12人いたんですよ。ふざけているのかと思ったので聞いたら「いえ、まじめにやりました」と。「ほんとにアメリカと戦争しなかったと思っているの」と尋ねると「はい」という。驚きでしたね。そしたら、手をあげてくる学生がいた。「それ、どっちが勝ったんですか」というんですよ。これには、さすがに、ぼくもひっくり返った。いくら昭和史が教えられていないからといって、あんまりだ。その体験があったので、仕事として残しておいた方がいいのかなという思いもあって、引き受けることしたんです。
 生徒は編集者を含め4人。このうち30代が3人。寺子屋の授業といった雰囲気で毎月一回、テーマを決めて1時間半ぐらい喋りました。授業では質問などは一切受けませんでした。質問は話が終わってから、というスタイルで進めました。

――「戦前・戦中編」の「昭和がダメになったスタートの満州事変」のなかで、奉天(現中国・瀋陽)で当時、関東軍参謀だった板垣征四郎たちが酒を飲みながら、柳条湖付近の鉄道爆破計画を「協議」している場面があります。人間模様が生々しいですね。軍事国家へひた走る国の姿を作家たちはどうみていたのか、永井荷風の日記「断腸亭日乗」も随所に出てきます。新聞記事なども入れて幅をもたせてありますね。
◆人間を通して歴史をみていく
 歴史の基本は人間学だと思っています。人間というものをどう描くか、人間を通して歴史をどうみていくかという考えで取り組んでいます。ですから、満州事変を定義するよりも先に当時、陸軍中佐の石原莞爾とはどういう男か、板垣征四郎とはどのような人物だったのか、そっちの方から先に話すようにしました。そうしないと、聞いている方も飽きてしまいます。

――城山三郎さんの著書『落日燃ゆ』では広田弘毅元総理・外相は「善人」として描かれていますが、この本から受けるイメージでは「悪人」ですね。海軍にしてもそう。山本五十六、米内光政、井上成美といった海軍の3人の最高幹部に対しても、この本ではいくらかは冷ややかに語られています。
◆歴史は見方によって随分違う
 一方的な見方をしたくないので、できるだけ公平にしたいと心掛けています。『落日燃ゆ』を読んだときは、こういう書き方をしたら歴史を見誤るなと思いました。広田内閣(1936年3月〜37年2月)では、「軍部大臣現役武官制」(現役の軍人でなければ陸軍大臣、海軍大臣になれない制度)が敷かれ、日本とドイツが「防共協定」を結び、陸軍の統制派、エリートの幕僚グループが海軍の軍令部と相談し、その後の「国策の基準」を決めました。さらに、「不穏文書取締法」をつくり言論弾圧をしました。しかも、そのあとの近衛内閣で、広田弘毅は外務大臣として日本の外交の総大将として日中戦争に関わっているんです。その責任はあると思いますよ。
 ところが、『落日燃ゆ』では「潔さ」をテーマに書かれています。東京裁判での「一切、語らず」は広く知られていますが、「潔さ」と政治責任とはちょっと違うんじゃないかと思いますね。海軍にしてもしかり。山本五十六、米内光政、井上成美などは「善玉」として受け取られていますが、完全にそうかなと思いますね。歴史は見方によって随分違います。ただ、やったことはやったと、いうべきことはいわないといけないと思う。

――「戦後編」では文藝春秋社に入社し、編集部員として目撃したことなどが記されていますね。石原慎太郎・現東京都知事が『太陽の季節』(1956年)で芥川賞を受賞した際、選考委員のなかで評価が割れ、大激論が交わされたその場にいたんですね。55年秋、ホンダ創業者・本田宗一郎の苦労談話を「文藝春秋」に「バタバタ暮らしのアロハ社長」のタイトルで掲載したところ、当の本人にいたく気に入られ、「お礼にうちの株をあげましょう」といわれて、断ったというエピソードも面白いですね。
◆ホンダの株はのちに数百倍?
 『太陽の季節』を最後まで認めようとしなかったのが佐藤春夫。井上靖が「先生がおっしゃるほど悪い作品じゃないと思いますよ」というと、このひとことで、佐藤春夫は「きみもか」という顔をして芥川賞が決まったんです。それと、ホンダの話は、神楽坂で藤沢武夫専務も同席し、ごちそうになったんです。本田社長が「うちの株をやる」といってきたので、興味もないし断ったら、随分、あとになってパーティーで「あんとき、断られたから株をあげなかったけれど、うちの株はあれから数百倍になったんだよ」といわれたことがありましたね(笑)。
 1958年に皇太子妃が決まり、ミッチーブームで週刊誌が次々に創刊されました。59年に「週刊文春」が創刊されたときに、週刊誌に異動になったんですが、当時は連載小説がもっとも読まれていました。全盛の作家は松本清張ですよ。当時、サラリーマンの通勤圏が郊外へと広がっていた時代だったので、5ページぐらいの週刊誌の小説は通勤時に読むのにちょうどいい長さだったんです。


――「昭和史」でもっとも関心がある人物は誰ですか。
◆昭和は「特異な時代」という司馬遼太郎さん
 今、ちょっと関心があるのは、司馬遼太郎さんですね。司馬さんは「昭和は日本の歴史のなかでは“異体”である。つまり、特異な時代だ」とおしゃってます。生前、司馬さんと話し合ったときに、「それは、間違っています」といったことがあります。「日本人がつくってきた歴史として昭和があるわけで、昭和だけ、突然、違ったものができたわけではないですよ」と。そしたら、司馬さんは「いや、それは認められないな」といっていました。これでは、昭和があまりにもかわいそうですよ。明治も昭和も繋がってきている。『昭和史』ではそういうことも明らかにしておきたかった。敗戦までの20年間が日本じゃないというのは、ちょっと違う。この本では、その点だけは丁寧に喋ったつもりです。日本人が昭和を生きたから現代があるのであって、現代から明日の日本を考えるためには、昭和の歴史をもっと丁寧にみないといけないんじゃないかと思っています。
【プロフィール&近況】

 半藤一利(はんどう・かずとし)1930年、東京・向島(現・墨田区)生まれ。東京大学文学部国文科卒業。1953年に文藝春秋入社。「週刊文春」「文藝春秋」編集長を経て、出版局長、取締役専務などを経て94年に退社。執筆活動に専念する。『漱石先生ぞな、もし』で新田次郎文学賞、『ノモンハンの夏』で山本七平賞を受賞。『荷風さんの戦後』、『幕末史』など著書多数。『昭和史』は毎日出版文化特別賞を受賞。現在、連載を4本抱え、今月下旬に共著『占領下の日本』、8月上旬に共著『東京裁判』(仮題)を刊行予定。

 最近、「昭和史を学校できちんと教えろ」という声をよく耳にするという。「だけど、教える先生がいません。きちんと昭和史を教えられる先生を養成しないと、この国はただごとではなくなってしまう」。講演はそんなに受けないが、「昭和史を高校生相手に話すのであれば全部、受けます」。毎日、午後の2時から6時ごろまで机に向かう。「夜は酒を飲むので仕事はしません」。


親族 [編集]
妻の半藤末利子は、松岡譲(作家)・筆子(夏目漱石の長女)夫妻の四女で随筆家。
• 義祖父:夏目漱石(小説家)
• 義祖母:夏目鏡子(随筆家)
• 岳父:松岡譲(小説家)
• 義叔父:夏目純一(バイオリン奏者)
• 義叔父:夏目伸六(随筆家)
• 妻:半藤末利子(随筆家)
• 義姉:松岡陽子マックレイン(文学者)
• そのほかにも、夏目房之介(義従弟)など遠縁の著名人が多数いるが、ここでは半藤一利の親族に該当する者のみを図示した。

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    文庫サイズ、1000ページに及ぶ図書です。集中して読めば1週間もあれば、しかし、1日30分の読書が限界、流れに乗ってやっと読み終えた。
    さすが、昭和の語り部、飽きさせることはなかった。
    webサイトにも関連情報がたくさんあり、とてもわかりやすい。

    yhj*7*1

    2010/9/9(木) 午前 9:35

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