私的な考古学

丹沢山麓で考古学を学ぶ学生諸君との対話

考古学の話題

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本日先ほど、某女子大副学長にせかされて書いた論文の原稿と挿図を編集者(といってもご本人)に手渡しました。この土日の2日間の猶予をいただき、ようやく仕上がりました。

論文の題名は表題のとおりです。改めて数えてみれば(400字詰め原稿用紙換算で)本文64枚、註と文献リスト8枚の合計72枚となりました。

査読は某副学長ですが、枚数制限などないものですから、気がついたらこうなりました。サバティカル中だからこそこなせたことですが、さすがに3日間で70枚はきついですね。

さて、前回の記事からの修正点を申し上げます。唐古・鍵遺跡の稲束(下段の右から2番目)推定茎数を79本から73〜76本に減じました。圧縮されて潰れている部分に該当させた推定本数を少し多めに見積もりすぎた可能性が高いと判断したからです。

それと稲束の結束にもちいられたワラ茎の端部を、それと気づかずカウントしていたことも接写写真の点検の結果わかりました。どういうことかというと、結束の端部を巻のなかにくぐらせて収束させていたのです。そういうことか!と改めて本例の結束の丁寧さに気づかされました。

今回の原稿は、この巻の丁寧さにも注目して、それが流通に供された稲束であり、唐古・鍵遺跡まで巡ってきたのち、この場で他の束とともに竪臼のなかに穂先が入れられ、杵で挽きとられるようにして籾の部分は脱穀のために失われ、残りの束の残滓が下段の写真なのだという復元案を提示します。

まるでみてきたかような言い方をしますが、これら5束は土坑内から多量の籾殻とともに出土したものだと藤田さんにご教示いただきましたので、出土状況はむしろ私の解釈を支持するものなのです。言い方を変えれば、これらの稲束は籾殻層のなかに一括放棄されパックされていたがゆえに、ここまで良好な遺存状態だったということになるのです。束と籾殻との共伴事例であるところがミソなのです。

比較のために上段には、大中の湖南遺跡の出土稲束の写真を報告書から転載します。こちらの束の結束は、稲ワラ紐で3重に弱く巻いたまま(水田域近くの)溝に破棄された状態です。ですからこのような束は、収穫時の様相をそのままとどめていると評価できるのです。じっさいにこちらの例では、まだ穂先に籾が残っていたと報告されています。

なお唐古・鍵の穂束残欠が5束というのも非常に興味ぶかく、断定はできないものの、5握1把となる可能性を示唆するものです。5カタティ1タバリ(西表島的呼称、ただ西表島では2カタティ1タバリが実態)ですね。

なお今回の原稿、先の記事に対して福岡の久住さんから頂戴したコメントをふまえ、後半ではなぜこの稲束が貨幣だといえるのかについて、理論的な整理に力を入れました。ご指摘いただいたポランニーの用語法「限定目的貨幣」と「一般目的貨幣」も参考例として取りいれ言及しています(しかしいかにも翻訳用語ですね)。

ですから論文の後半は、経済人類学、アジア経済史学、社会思想史、各地の民族誌や民俗学などからの情報をとり込んで、私には不似合いな(と私自身は思うところの)抽象的議論になりました。弥生時代社会は市場経済下にあったのだという主張を展開するものですから、しかたありません。

ただし改めて気づかされたのは次の点でした。これまでにも弥生時代の交易、とくに遠距離間の交易の問題は普通に論じられてきましたよね。弥生都市論だってそうです。こうした事象が貨幣なくして現れるのか、貨幣の不在ないし存否保留のままで議論を進めることはどこまで有効なのか、今となっては強い違和感を覚えるのです。

もちろんこれまでの私自身への反省をこめて、ですが、流通論や都市の問題、さらには集団関係論について早急に見直しの必要性を感じています。理論面でも実証面でも、です。

しかし、肩は凝るし腰は痛くなるし寝不足だし、と大変です。今も肩がガチガチで文字入力さえ痛みを感じています。といっても書き込みが進むのは、頭が依然原稿モードだからです。

やはり肩を揉んでくれる妻と一緒のほうが、たしかに楽は楽ですね。妻にも送りつけて査読をしてもらっています。

夕方になりましたので、宿舎に帰って酒を飲んで寝ることにします。本日は正面の「勇み湯」も定休日だし。


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