私的な考古学

丹沢山麓で考古学を学ぶ学生諸君との対話

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小路田泰直さんのところで開催されるシンポジウムのご案内です。先に『日本中世の民衆像』を<本と論文>のところで取り上げたばかりで、タイムリーですし、面子をみても魅力的なシンポジウムに違いないと思います。先月西谷地晴美さんからいただいた論文も非常に刺激的でした。しかし私は間違いなく行けません。返す返すも残念です。

そういえば、西表島と黒島の交換では、ごく最近までコメが貨幣に近い役割を担っていたとの民俗誌があります。15世紀にもコメが近隣一帯の市場でもっとも重視される交易品でした。だからその意味では、「コメの力は人口の爆発的増加を招く」という私が最近しばしば口にしている命題は、コメ自体を直接口にしたからでは必ずしもなくて、コメの貨幣としての力、あるいはみんなを惹きつける「酒と麹の主原料」ゆえのことだという側面が濃厚なのかもしれないな、と、ふと思いました。
以下はパンフレットからの貼り付けです。
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米は、この国の歴史において、最初から自給作物としてではなく、交換を目的とした作物としてつくられていたとしたらどうだろう。日本史の見方が根本から変わるのではないだろうか。

網野善彦非農業民論の21世紀的継承をはかり、日本古代史認識の根本的な転換をはかりたい。

問題提起者 大久保徹也(徳島文理大学・考古学)
 「弥生時代農耕社会論・再考」
コメンテイター
      西谷地晴美(奈良女子大学・中世史)
        −記紀論の視点から
      村上麻佑子(奈良女子大学・経済史)
        −貨幣論の視点から
司 会   小路田泰直(奈良女子大学・近代史)

時 間   2009年8月7日(金) 午後5時〜7時30分

場 所   奈良女子大学文学部北棟 N202教室

連絡先 奈良女子大学文学部比較歴史社会学講座共同研究室 西村さとみ
    ?鷙/FAX 0742−20−3319

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昨日の大学院の授業「1970年代の学界情勢を振り返る」では故網野善彦氏の『無縁・公界・楽』(平凡社新書)を取り扱いました。私が学部学生だった頃に話題となった書です。

ただし当時は手にしてはみたものの、読みづらい印象しかなく、長らく「積ん読」状態でした。しかし友人達の何人かは「面白い」と言うし、いっぽう先生方は対極的に強い批判を口にするし、で、置いてけぼり状態の自分のふがいなさに苛立ち、不安な気分に浸っていたものです。

そんな状態でしたから、当時は岩波新書黄色版の『日本中世の民衆像』(1980) に代替させて、網野善彦理論を理解した気になっていました。

本書の主張内容が頭の中にすっと入ってきたのは、恥ずかしながら40代に入ってからです。章立てや構成の特徴は、一見すると事例列挙型なので、冒頭から目的地の方角がどこかをイメージしながら読み進むことは不可能です。しかしそのような構成にも目論みがあって、通読したときには、読者が抱く既成観念を根底から揺さぶるよう意図されているものと感じました。要はキーワードの心象付けとキーワード間の関連付けに大半は費やされているのです。それが成功すれば、第23章の結論が鮮明になるという仕掛けです。構成ないし体裁それ自体は有名な『ハーメルンの笛吹男』と類似しています。

とはいえ、現在の私は、藤木久志氏の著作の方にも、より一層の興味を抱きつつあります。急激な気候変動と中世社会の相互作用を見いだしながら、歴史を再構成しようとの目論みです。この視座を汲み取れば、網野善彦自身がその著作のなかで高校生からの質問への返答に窮したと紹介している逸話「なぜ新仏教は鎌倉時代にだけ集中して生み出されたのか?」への解答の糸口も見つかるのではないか、そのように思いました。

ちなみに学生諸君に聞きますと、すっと読めたというDELL君と0嶋君、読めなかったというK籐さん、さらには苦痛で中途放棄したというN谷君の対照性がきわだって、非常に面白く感じました。

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昨日の2限「古墳時代演習」では古市古墳群と百舌古墳群の配置関係を統一的に把握するための討議を行いました。0石さん・M宅君とK崎君が配列関係について仮説を提示し、それを皆で確認しながら揉んでゆく、というスタイルです。

今回は大学院生2名にも加わってもらい、応援側と批判側にそれぞれ分かれて意見を出してもらう(私が指示しなくても、そのあたりの案配は心得てくれる2人でしたが)ことで、議論の活性化を図りました。

両古墳群の配置や配列関係については、古代史の岸俊男氏・原島礼二氏・森浩一氏といった方々が研究の先鞭をつけられておりますが、70年代まででほぼ収束してしまいます。古市大溝と古墳との関係についても、耕地開発や周辺遺跡の展開過程との関わりについても、ごくたまに散発的な言及があるにとどまり、むしろ埴輪の変化や墳丘規格の変遷などといった「個別要素を見つめる」方向へのシフトが進んでいます。

修羅の発掘やら鉄器埋納施設の発見やら、はたまた初期横穴式石室の発見やらと、注目される発掘事例の積み上げは着実なのですが、分布や配列関係といった全体を包括する法則性を追求は、じつは今ひとつ進んでいないのです。

そうしたなかにあって、昨日の議論には興奮を覚えました。単純な解ほど真理に近い、というモットーで仮説構築に取り組んでもらうことをお願いしてきましたが、意表をつく試みに舌を巻きました。具体的内容については、とりあえず内緒にしておきましょう。批判派の意見をも汲み取って、彼ら彼女ら至極真っ当な、かつ常識的な疑問や違和感を超えられたら、それこそ正解なのです。

しかし正解にたどり着くまでの過程では、一見非常識なアイデアこそが発展性をもつに違いないと思います。なぜなら、常識的なアイデアで解決がつくテーマであったなら、70年代に決着済みだったはずだからです。その意味で、今回は次のステップへの端緒を掴んだ感がある、というところでしょうか。

今後への漠然とした期待ではなく、光の差し込む方向が見えたそれでした。古市・百舌古墳群についての今学期の発表は今回までですが、こうした作業は是非継続していただきたいと思いました。

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