私的な考古学

丹沢山麓で考古学を学ぶ学生諸君との対話

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西相模考古学会

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先日は、神奈川県埋蔵文化財センターで開催されたこの学会に久しぶりに参加しました。報告者は齋藤あやさんと西川修一さんでした。

西川さんはたびたび本ブログに登場いただいているので説明は必要ないでしょうが、齋藤さんは若手の玉類の研究者。今後の研究の進展に期待するところ大の“有望株”です。というのも彼女は大賀克彦さんの直弟子の一人で、彼の特訓に耐えたという実績を背景にもつからです。大賀さんは「我が娘たち」と呼んでいるようですが、彼の場合は「オバサン」が入っているからでしょうか。女性の弟子たちばかりです。

その齋藤さんの報告は弥生時代後期の方形周溝墓から出土したガラス玉の分析結果とその評価でした。きわめて希少性の高い種類の玉が出土したという事実をどう解釈するかに議論は収斂するのかな、と予測しながら彼女の淡々とした説明に耳を傾けていたのですが、暫定的な結論は振るっていました。「たまたまの、いわば偶発的な紛れ込み」であろう、というのです。このあたり、師匠の影響が色濃く出ていることに舌を巻きました。

いっぽう西川さんの報告は、いかにも西川さんらしい問題提起、というか西川節で、関東一円では弥生後期後半から終末期に集落構造や集団関係における画期が見いだせるのであるが、その解釈の方向性としてどのような仮説を構築すべきか、という問いかけでした。弥生時代後期の大規模集団移住を実証的に解明したご本人ですが、とはいえ「フロンティアの東遷」をキーワードに据えた今回の報告には、日頃の西川さんとは異質な領域国家論的な相貌が垣間見えるようで、現在も模索の途上にいらっしゃることを確認したところです。もちろん、私とて代替案は準備できていませんが。

写真は会の終了後に開催された「新年会」の様子です。肝心の西川さんはいつしか寝てしまい、約束だったはずの2月の研究会の打ち合わせはせず終い。

とはいえ、もうひとりの事務局担当である山口正憲さんからは、以前にお渡しした拙著の抜き刷り「『歴史』を領有する水稲農耕民」に対する真摯なコメントをいただくことができ、真に有り難く思いました。歴史が無価値化する過程を描いた私の論旨には納得できるものの、では今後の社会や歴史学をどのように見据え、かつ展望するのか。それがなければたんなるニヒリズムに終わるのではないか、との問いかけでした。

痛いところを突かれてしまいましたが、私の見解は「過去を記述し今を意義づけたい」との欲求は農耕民(とかれらの打ち立てた国家)に特有のもので、「過去も現在も常に循環の中にある」という狩猟採集民のバージョンもあり、対極は「過去は無価値で現在が肝心」という交易民であろうというものです。そのうえで、こうした各種の民が抱く時間への価値付けに焦点を絞れば、全体に脱農耕民化している現代社会は歴史の無価値化へと向かっている、というものです。山口さんの問いかけに対しては、過去を知りたいという欲求が人類に普遍的に備わるものかどうかが鍵になりますので、この問題、今後とも折りに触れて考え続けたいと思った次第です。

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考古学研究会東京例会のお知らせです。当日司会を担当される西川さんから、先日「ブログに貼っといてね」との依頼をいただきました。

いろいろあって、私自身はごくたまに参加はさせていただくものの、東京例会には後ろ向きの姿勢をとり続けています。しかしこのミニシンポジウムには素直に参加したいと思います。非常に重要な企画だと思いますし、パネラーはなぜか古墳時代研究者で占められているし。

卒業生の小茄子川歩君が留学先への「帰国」を延期して私のところの仕事を手伝ってくれたので、その御礼と新年会を兼ねてと、N谷君共々先ほどまで学前で呑んできたものですから、日が改まってしまいました。しかし本日1月17日は、あの阪神大震災の起こった日でした。あれからもう17年が経つのですね。

あの日の朝は忘れられません。徳島市内は震度5前後で済んだのですが、さりとて突然の縦揺れは衝撃的でした。親戚や友人に連絡をとらなければ心配だね、と妻と話し合いながら朝出勤してみると既に職場は騒々しく、学食に備え付けのテレビの前に皆が集まっていたことと、市街から黙々と黒煙が上がっている情景が空から撮影され、画面に映し出されていたことを覚えています。

さりとて私自身は不摂生とストレスと飲み過ぎが重なり、急性の肝臓と脾臓障害になっていたことを知らないまま二・三日が経過した後で、全身にどうしようもない倦怠感を覚えながら、そのテレビの映像を、当時は同じ職場に勤めていた妻と観ていたことを思い出します。当日の夕方には緊急入院となり、そのまま以後3ヶ月間は病院のベッドの上でしたから、被災地への応援には駆けつけられませんでした。私にはそのときの負い目があります。

そして昨年の3月11日、再び深刻な震災と放射能汚染に今度は東日本が襲われました。いろいろあって、まだ被災地へは行けてません。現地の様子を直視すべきだとの思いはありながらも、やはり気兼ねがあります。

ただし先日岡山で、岡山理科大学の富岡直人さんから「是非現地を見て欲しいとの声は地元からもある」と励まされて、少しばかり気が楽になりました。そのような思いでいるところに西川さんから舞い込んできたポスター掲示の依頼でした。だから是非とも日が変わる前に、とは思ったのですが。

古事記誕生1300年記念

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土曜日に逗子市での講演会を終え、ようやく2011年秋に予定していた諸行事が一段落しました。逗子での話は「長柄桜山古墳群を考える」と題するものでしたが、神奈川県域の弥生後期から古墳前期までの様相を紹介したら予定の90分が過ぎてしまい、後期の様相や、古墳時代全体を景観史という観点からみればどうなるか、といった締め括りの話には至りませんでした。ご参加くださった方々には秘かにお詫びしておきます。

そして今週は東海大学研究フォーラム(産学連携フェア)という集まりがあり、そこでポスターセッションを行います。今年の西表島の調査成果報告です。予稿集用の原稿は入稿し終えていますが、そういえば、肝心のポスターの印刷依頼を忘れていました。明日(正確には本日)さっそく発注しなければなりません。沖縄地域研究センターの河野裕美先生とN谷君と私3名の連名での報告となり、私とN谷が説明に立ちます。宮原俊一先生が中心になって進めてくださっている鈴木八司先生の写真コレクション整理事業の報告もあります。興味のある学生諸君は、どうぞ。

            http://www.u-tokai.ac.jp/about/collaboration/fair/

私が関わるところでいうと、前期古墳に関連する次回のシンポジウムは2月。先日紹介したとおり横浜で開催予定の「関東前方後円墳研究会」です。それまでに同成社関係の原稿を仕上げなければなりません。一段落とはいっても、なにかと忙しい日々が待ち受けています。

そんななか、奈良女子大学の小路田さんからポスターが届きました。大学に貼ってくれとの依頼ですが、さっそく本ブログに貼り付けることにします。古事記誕生1300年記念の行事ということなのでしょう。そのうえ水林彪先生のコーディネートとは、おそらく史学系では最高水準のシンポジウムになるに相違ないものと思います。

私も行きたいのは山々なのですが、12月18日といえば文学部主催のTOEIC団体試験があり、試験監督の業務が当たっているので誠に残念ながら行けません。幸いN谷が沖縄出張の帰りに関空で降りて奈良女に立ち寄るつもりだと言っていますから、彼に様子を聞くことにしましょう。

同成社の『古墳時代の考古学』は、第1巻が出るようです。福永さんの総論に眼を通しました。さすがにそつなくまとめられています。私が担当した第3巻の総論については、38度の熱にうなされながら執筆したとものだとはいえ、誤植の指摘から始まり、私にしてはそっけない文章で実に意外だったとのコメントも頂戴してしまいました。不徳のいたすところですが、第1巻の私の執筆分「古墳時代研究の歩みー①戦前」の方は、「戦前」と「戦後」の関係について少しだけ踏み込んで書きましたし、そこでは小路田泰直さんの著作に学んだ事柄を活かせたかと思います。要するに戦後の古墳時代研究は、当事者の自覚とは異なって戦前との決別というような積極的な意味でのパラダイム転換を生じておらず、生じたとすれば、それは萎縮であった、という内容になります。

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満51歳になった11月26日(土)には遺跡資料リポジトリのワークショップなんとかを終え、安里進さんから依頼されて頭を悩ませ続けてきた沖縄県八重山郡与那国町史の原稿「与那国のあけぼの」を、今朝ようやく入稿し終えました。これから今週末12月3日に逗子市で開催される、神奈川の前期古墳に関する講演会資料の作成に入ります。頭の切り替えになんとか慣れたとはいえ、いささか疲れを覚え始めました。

さて国立情報学研究所を会場に行われたワークショップには、東海・関東の広い地域からの参加者をえました。とはいえパネラーや事務局側のメンバーを除くと20名弱となり、首都東京の千代田区で行われたにしては、ごく小規模な会議であったと言わざるをえないのかもしれません。

ただし個人的には、今後の方向性に関して有益なヒントを頂けたものと思います。とりわけ強力な推進論者たちが居並ぶ中で、若手の行政担当者としての率直な意見を述べてくれた沼津市教育委員会のK村君には感謝します。

本学の卒業生でもある彼がどのような意見を示してくれたかというと、次のようなものです。すなわちリポジトリ事業を積極的に推進すべきとの主張を行政の担当者から見れば、当面のところは研究者間の研究環境整備としか映らない。その意義を認めるものではあるが、需要は限定的である。いいかえれば専門的な性格をもつ発掘調査報告書をネット上で公開するからといって、それがただちに「国民共有の財産を皆のものに」する事業である、という論理には現時点で飛躍がある。市民や国民への還元については間接的なものでしかない。だから行政側が本事業に踏み出すためには、市民側に受け止められるだけの相応の説明が必要であり、報告書本体を開示することがどのような意味で市民にとって意義のある情報提供行為になるのかをもっと積極的に打ち出して欲しい。という趣旨のものでした。

至極もっともなご意見だと思います。このご意見について私見を述べれば、本事業は個別自治体から刊行される報告書が、文化庁のいう「適切な調査にもとづく客観的な報告」であるか否か、まさしくこの点についての点検がすべての人々によって可能になる環境の整備であり、個別報告書が専門家から一般市民に至るまでの幅広い批判に耐えられるものであるのかの判断を、開かれた場のもとで可能にし、客観性を担保する事業であるといえるかと思います。その意味では、公共事業がまさしく公共であることを市民の方々に胸を張って主張する格好の材料になりうるものだと思います。

報告書の執筆者に対しては、一面では厳しいものかもしれません。しかしそのような環境整備なくして公共性も主張しえませんし、そうした姿勢が求められている御時世なのではないか、そのように思います。

学界にとっても同様です。旧石器のねつ造問題を未然に防ぐことができなかった学界が襟を正し、専門家集団としての存在証明を今後とも主張する効果的な素材としても、そしてK村君のいうような研究環境の整備という観点からも、本事業は必要不可欠な試金石ではないか、と思うのです。

K村君にとどまらず、関東の3県からわざわざ出席いただいた行政担当者の方々には心から感謝します。と同時に、本事業の定着と波及に向けて今後とも注視し、機会があれば積極的に動いていただければなによりかと思います。以前から本事業の必要性を唱えてきた研究者や、考古学分野への厳しい視線を向けてこられた文献史学者側からは、会場でも厳しいご意見が発せられました。考古学界全体に主張の真意が必ずしも届いていないことへの焦りと苛立ちが確かに含まれておりました。しかし、そのような声に怯むことなく、本事業のもつ意義を冷静な眼で見つめていただければ、と思います。

つたない?偏向した?コーディネーターのもとでの議論でしたが、文化庁の水之江さんを含め、東京会場のワークショップに参加いただいた皆さんには深く感謝いたします。

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来る12月1日(木)の午後5時から7時まで、14号館4階406教室にて今年度秋の研究集会を開催します。今回は西アジアと南アジア地域を検討対象として、国家形成・都市形成とイデオロギーの問題に焦点を当てます。

報告者は下に示したお二人ですが、ともにそれぞれ現地でのフィールド調査を進めながら古代都市や古代国家形成過程を研究中。新たな切り口でこのテーマに取り組んでいる新進気鋭の若手考古学者です。

ちょうど留学先から帰国中なので実現した研究会です。どのような話題が展開されるのか、今から楽しみです。

写真は報告者のひとり小茄子川君のブログ「南アジアの考古学」から勝手に借用したものです。最上段が彼。明日大学に本人が来てくれるので、そのときにお詫びしておきます。イデオロギーの発露としての祭祀の様子がアップされていて興味深いものです。

学部生から院生まで、また外部の方でもご自由に参加可能です。興味関心のある方の参加をお待ちしています。

                東海大学史学会 秋期考古学研究集会

発表① 有松 唯(ありまつ ゆい)
所属:広島大学文学研究科・日本学術振興会特別研究会(PD)
「西アジア領域国家形成期におけるイデオロギー物質化様態の変質」

発表② 小茄子川 歩(こなすがわ あゆむ)
所属:Ph.D. Student, Department of Archaeology, DECCAN COLLEGE, Post-Graduate & Research Institute(Declared as Deemed-to-be-University under section 3 of the U.G.C. Act,1956)
「クッリ式土器『絵画』の構造―都市無き社会と都市社会の世界観に関する一考察―」


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