私的な考古学

丹沢山麓で考古学を学ぶ学生諸君との対話

本と論文

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

全6ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6]

[ 前のページ ]

イメージ 1

イメージ 2

 ご存じ旭川市博物科学館の瀬川拓郎さんによる名著です。
 非常に読みやすいだけでなく、読者を惹きつける魅力的な著作です。瀬川さんの文章は独特のリズム感をもっていて、テンポよく読み進められますし、随所に小粋な表現が散りばめられているために、思わず唸ってしまう。そんな本ですので、ここ数年間におけるもっとも魅力的な著作として周囲の皆に勧めています。『アイヌ・エコシステムの考古学』は2005年刊(北海道出版企画センター)で、『アイヌの歴史』は2007年刊(講談社メチエ)です。

 瀬川さんの研究はもちろん北海道のアイヌや擦文・続縄文・縄文といった諸文化の展開に軸足が置かれています。しかし同時に、地域や時代を超えた普遍性への眼差しが明確です。だからこそ、古墳時代を専門分野とする私なども、思わず惹きつけられてしまうのです。

 特に「青苗文化」の提唱は圧巻です。境界領域に設置されるバッファゾーンとしての青苗文化の役割は、和人側の「商品」を擦文側の「贈与」に転換することで両者の交流を可能にさせ、かつ和人側からの浸食を防御する共生のための必要不可欠な装置であったとするのです。

 こうしたコンバージョンシステムの必然性や立地の特性を加味すれば、この問題はもっと普遍的な、たとえば都市とは何か、という問いかけに直結することが明らかです。博多などはその典型でしょう。

 同時に、市とは何か、という問いかけとも連動する可能性も示唆されます。非日常性の空間に交易の場を限定することから市が生まれたことはよく知られています。その際に、なぜ非日常性なのか、といえば、それは交換が日常化することを避けるためだった、といえるかもしれないのです。モノの交換は、モノだけに留まらないことを為政者たちは敏感に嗅ぎ取った可能性があるからです。

 だから、こうした性格の市を、あえて日常化させた空間が都市ではなかったか、という作業仮説がいやおうなく浮上してくるわけです。そしてここまでくれば、網野史学との接点もごく身近なところにみいだせるような気がしてきませんか。

 ここに紹介する二著は、上記のような事柄を深く考えさせる類い希な良著だといえるでしょう。

イメージ 1

イメージ 1

2008年度はこの本のためにあった、とでもいったような状況でした。原稿完成までの失態と思い出を綴ります。

10月に奈良女子大学での報告を、と近代史が専門の小路田泰直さんに依頼されたのが9月初旬。私は北海道から西表島に移動を終えて調査に入ったばかりの頃でした。たしか私より先に西表島に入った学生諸君が酒を飲み過ぎて民宿で失態を演じたという報告を聞いて頭を痛めていた頃でした。

話の内容を考え始めたのは9月26日。秋学期が始まったばかりのことでした。これまで棚上げにしていた古墳の方位と立地の問題を、せっかくの機会だから奈良盆地東南部に焦点を絞ってまとめてみようか、とエクセルに向かっていて、ふと単純な配置の法則性に気がついた次第。そこからはトランス状態に陥り、以後学務関係の事務仕事から会議などをすべて放り投げ、夜も眠れない状態で分析と思考と文献あさり三昧でした。こういう時の読書は膨大な量になりますが、なにかに憑かれたようになるので、理解力も飛躍的に高まる(つもりになる)のが不思議です。

本番の前日には早朝の新幹線に乗って天理に出向き、駅前のレンタルサイクルをお借りして、背広にネクタイのまま古墳の間を走り回っていました。山の辺道を通って箸墓古墳まで南下し、上ッ道を北上しつつあった途中で、実はその日入試業務が入っていたことに気がついたものの、もはや後の祭り。始末書を覚悟して顔面蒼白になったところへ、なんと大学院生のN谷君とその彼女と彼女の妹の3人が黒塚古墳の方面から歩いて来るのに出くわしてしまう始末。いや、恥ずかしい思いをしました。

もちろん翌日の本番時もトランス状態のままでしたから、私の話はかなりの空転気味だったようです。また、どういった性分なのか相当攻撃的になっていたようです。討論の場面でも旧友である徳島文理大学の大久保徹也君に再々攻撃の矛先を向けてしまいました。もちろん私自身は意気揚々と引き上げてきたのですが、会場にいたN谷君に翌日研究室で諭されて、とんだ失態ぶりであったことに気がつかされたのでした。

とはいえ、始末書を書いたのちも原稿を仕上げるまでの1ヶ月間はトランス状態が戻らず、とうとう夢の中で見た図面の探索を、翌朝になって妻と鴨田さんと研究室にいた学生達にお願いしたりもしました。思い描いたものとドンピシャリの古代中国の図だったのですが、妄想と現実が混濁するという経験は生まれて初めてでした。そんな作品です。

いやはや、本当に多忙な2008年度でした。しかし多忙の中で生まれた400字詰め原稿用紙換算で125枚の論文は、いい記念です。こんな長文を載せてくださった小路田さんには、本当に感謝しています。

さて当の小路田さんの論文は、力業とはまさしくこのことか、と実感させられる作品に仕上がっていて見事です。考古学の方々にありがちな、個別の事実関係のところで疑問や違和感などを抱いて、先へ読み進めることをやめてしまってはいけません。それはそれとして思考の脇に置いて、最後まで読破すべきです。そうかもしれない、と思わず唸らざるをえない論文ですから。それと麻生武さんの論文にも惹きつけられるものがありました。

全6ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6]

[ 前のページ ]


.
flyingman
flyingman
男性 / O型
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31

過去の記事一覧

スマートフォンで見る

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

スマートフォン版Yahoo!ブログにアクセス!

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

数量限定!イオンおまとめ企画
「無料お試しクーポン」か
「値引きクーポン」が必ず当たる!
ふるさと納税サイト≪さとふる≫
実質2000円で好きなお礼品を選べる
毎日人気ランキング更新中!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事