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|父親から届いた一通のメールが土居聖真を変えた
3−0で勝利したJ1 1stステージ第7節の湘南ベルマーレ戦で、ダメ押しとなる3点目を決めた鹿島アントラーズの土居聖真を囲んでいたほとんどの記者が、スッと引いた後だった。
前節のサンフレッチェ広島戦に続くゴールに加え、攻守に貢献していた姿を見て、「プレーの選択肢に幅がでてきたのでは?」と告げると、「今は周りがだいぶ見えるようになった。自分の特徴も活かしつつ、周りも活かすことが好きなので、納得のいくプレーができています」と、充実の答えが返ってきた。そして、彼はこうコメントを続けた。
「父親のおかげなんです」
しばらく間があり、次の質問を投げかけようとしていた矢先の発言にこちらが驚いた。おそらく、本人も言おうかどうしようか迷っていたのだろう。
「父親は普段、僕のプレーに全くダメ出しとかしない人なんですけど、珍しく厳しい指摘を受けたんですよね」
それはケガにより出遅れ、途中出場の多かった土居が、ようやく今シーズン初先発のチャンスをつかんだ3月23日のナビスコカップグループステージ第1節、ヴァンフォーレ甲府戦の後だった。土居は先発しながらも無得点に終わり、鹿島も1−2で敗れていた。土居の携帯電話に父親からメールが届く。
「幼稚園からお前のプレーを見てきているけど、人生で一番悪かったなって言われたんですよね」
自分自身も分かっていただけに「図星だった」と言う。ただ、メールに書かれていたのは、単に厳しい言葉だけではなかった。
「やりたいことはあって、やらなきゃいけないことは分かっているんだけど、それをどうしたらいいかが分からなかった。それを父親は聞いたわけでもないのに、こうしたらいいんじゃないかって言ってくれて。もう、それを聞いた瞬間に、殻が破けたというか、目の前が広がったんですよね」
|父親の言葉で開眼した土居は2試合連続得点を記録
父親の言葉がどれほどのものだったかは、その後の土居のプレーを見れば明らかだ。第5節の川崎フロンターレ戦では得点こそ奪えなかったが、途中出場から何度も決定機に顔を出した。川崎戦では何度もゴール前に走り込み、パスではなくシュートという強気な選択をする土居のプレーが見られた。足りなかったのは、もはやゴールという結果だけだった。
ゴール前での積極性やゴールに向かう姿勢は石井正忠監督に評価され、第6節、広島戦での今季リーグ戦初先発につながった。その試合で今季初得点をマークした土居は、さらに調子を上げると、湘南戦の65分、カウンターから金崎夢生のラストパスに身体を投げ出すと、右足で合わせ2試合連続ゴールを挙げた。
「どのサッカー関係者よりも、父親の言葉って一番説得力があるんですよね」
少し目をこすりながら話す彼には、もしかしたらこみ上げてくるものがあったのかもしれない。言ってしまえば、チームメイトよりも、監督よりも、コーチよりも、父親こそが自分だけを見てくれる最大にして身近な理解者である。自分だけのコーチであり、サポーターであり、ファンでもある父親の言葉は彼を大きく突き動かした。
「父親の言うことをしっかり受け止めて、やれば変われるなって思った。ケガをして、いろいろと考えてたこともきっかけといえば、きっかけですけど、父親の言葉は大きかったですね」
|優勝して初めて父親への恩返しになる
堅守をベースに勝利を重ねてきた鹿島は、広島戦では4−1、湘南戦では3−0と、攻撃も結果を出し始めている。昨季はホーム&アウェイともに敗戦した湘南に勝利できたことも自信になったはずだ。
「みんな、口には出さないけど、どこかで前からガツガツ来るチームは苦手というか、押し込まれるイメージがあったと思う。でも、今日(の試合)は逆に相手のやりたいことを自分たちがやることができた。出られないときに感じていたのが試合の入り方。いい形で試合に入れれば、このチームは負けない。それを自分が試合に出たら、行動やプレーで示せればとは思っていた」
だから、土居はキックオフと同時にフルスロットルでプレーする。攻撃だけでなく、本人曰く「勝手に身体が動く」という守備でも、前線からプレスを掛けて相手の攻撃を限定している。
「いい守備ができれば、いい攻撃につながりますからね」
常勝軍団と言われる鹿島が目指すのは準優勝や2位ではなく、優勝である。タイトルを渇望するファン、サポーター、そして自分自身を常に見守ってくれる親のために、土居は最後にこう言った。
「優勝して初めて父親にも恩返しになると思います」
開眼した鹿島の背番号8は、果敢にゴールを目指す。
文:原田大輔
写真:佐野美樹
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2016年04月18日
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