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近未来、どこからともなく供給されるドラッグ、物質Dがアメリカ中に蔓延していた。麻薬捜査官たちはDの供給ルートの解明に躍起になっていた。彼等は安全のため、普段はスクランブ・スーツを着用しているため、お互いの正体すら分からない。
覆面麻薬捜査官フレッドはボブ・アークターとして麻薬中毒者のグループに潜入捜査を行う。売人のドナにも接触し、恋人関係になる。ボブはジャンキーたちの信用を得るため、自らもDを服用するが、依存症に罹ってしまう。
そんなある日、フレッドは上司から命令をうけた。Dの密売組織の大物と思われるボブというジャンキーを監視せよと。そう、上司もフレッドの正体を知らないのであった。
自分の家に仕掛けられた盗撮カメラの再生映像で自分自身を監視(スキャン)するフレッド捜査官。そんな倒錯した仕事を続ける中で疲弊したフレッドはますます麻薬に溺れ、彼の精神は次第に左脳と右脳、フレッドとボブに分裂し、その日常は現実と幻覚が混濁した悪夢へと向かい始める・・・・・・
作者自身を含む実際の麻薬中毒者(ジャンキー)に取材したフィリップ・K・ディック原作のドラッグ小説を、プロットのみならず「ディック感覚」をも忠実に映画化。本作は実際の俳優を撮影した映像をデジタル画像処理によってアニメーション化するロトスコープという技法によって制作された。この映像が、現実感希薄で違和感ありありの白昼夢的世界観(ディック作品に共通する、虚実の境界が曖昧な混沌とした世界観でもある)に上手くマッチしている。
麻薬中毒者たちのトリップ表現が何ともリアル。ラリっている感を出すために殊更に映像を歪ませる、といった手垢の付いた手法を採らなかったのは高く評価できる。
役者の演技にしても、暴れまくったり叫びまくったりという、ドラッグ映画にありがちな過剰な狂気アピールがない。特にロバート・ダウニー・Jrのナチュラルな狂いっぷりが素晴らしい。常人と微妙に、しかし決定的にズレている、その匙加減が絶品である。さすが実生活において薬物で捕まっただけのことはあるwwww
アイデンティティ・クライシスに陥る主人公に扮するキアヌ・リーブスの繊細な仕草も良かった。
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