古今亭日用工夫集

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「国民が基本的な勉強もせず、民主党に政権担当能力がないと感情的に決めつけるのは困ったものだというのが、ある政治家の嘆きだ」「国民が便宜供与や利益誘導、そして権利拡大を無責任に求め続ければ、政治家の『信頼』を失う。そして、政治家に信頼されない国民の行動は、究極的に民主主義社会を破壊してしまうだろう」(2010 年12月28日:上久保誠人「再び敢えて問う、実は国民こそ政治家から『信頼』されていないのではないか」http://diamond.jp /articles/-/10598)


 小選挙区制の導入による55年体制の崩壊は、政権交代の可能性を生み出した。その結果、以後の政権運営においては世論の方向を見極め、国民から幅広い支持を得ることが何よりも重要になった。しかし小泉以後の政権は世論を味方につけることに失敗し、迷走を続けている。そのことを端的に示すのが、国政選挙における与党の大敗や世論調査における内閣支持率の乱高下である。政治家や報道関係者、政治評論家は政権への支持が安定しない状況を「移り気な世論」と解釈し、政策をきちんと吟味せずにその時々の雰囲気で政権への支持・不支持や投票行動を決めていると有権者を批判する(テレポリティクス批判)。冒頭で紹介したような嘆き節はその典型で、愚民観の表明とすら言える。

 しかし本当に国民は政策を理解しないまま、感覚的・感情的な判断によって“何となく”政権への支持・不支持を決定しているのだろうか。現在では、新聞・テレビ・ネットなどで頻繁に世論調査が行われているし、国政選挙が行われれば、その結果の詳細が新聞に載る。世論を知るためのデータは豊富にあるわけだが、果たして政治家や番記者たちは、そのデータを正確に読み解いているだろうか? 
 著者はそんな疑問に基づき、世論調査や選挙結果に対し、印象論を排した計量分析を試みる。選挙結果のどの部分に注目すれば、得票構造を正しく把握できるのか(著者は「農村度」という指標を重視する)。質問文の表現や選択肢の作り方、調査対象の抽出方法といった世論調査の手法の違いが、調査結果にどのような影響を与えるのか。膨大な情報を的確に処理する著者の手際は鮮やかだ。そして、異なる定義・条件で調査した数値を比較する(面接方式とRDD方式の結果を単純比較etc.)といった従来の杜撰な分析結果の誤謬を白日の下にさらけ出す。


 曰く、
☆2005年の郵政選挙における自民党の圧勝は、テレビ受けの良い国民的人気のある小泉純一郎が総理総裁であったからでも、「刺客候補」などの自民党のメディア戦略が奏功したからでもなく、「構造改革」という小泉の政治路線が都市部の若・中年層に支持されたからである。
☆2007年の参院選で自民党が惨敗したのは、「構造改革」で傷ついた地方・農村部が自民党から離反したことが原因ではなく、1人区で野党が選挙協力を行ったことと、安倍政権が「構造改革」の継続に不熱心であるのを見た都市部の若・中年層が離反したことが真の要因である。
☆2007年自民党総裁選の最中にメディアで報じられた「麻生人気」は、実態を伴わない虚構でしかなかった。ネットにおける極少数の熱烈な麻生支持者の声を大マスコミが「国民の声」と誤解したことにその淵源を持つ。
☆2007 年総裁選以後に何度と無く行われた世論調査において、麻生への支持率が上昇していったのは、「麻生人気」によるものではなく、競争者が次々と脱落する中で麻生1人が「総裁候補」としてマスコミに注目され続けたからにすぎない。“現実的な選択肢が麻生以外にない”という国民の消極的支持を「麻生人気」と誤認し、麻生を「選挙の顔」として総裁に選んだことで自民党の下野は運命づけられた。
☆2009年の総選挙での自民党の惨敗は、「小泉構造改革への反発」によるものではなく、「地方の衰退」を口実に小泉構造改革を放棄して「古い自民党」に戻り、政権の針路を世論とは逆方向に取って突き進んだ結果、自民党が都市部(改革派)の有権者の支持を失ったことに起因する。

 要するに「国民は政治のことなど分からないから、ワイドショー受けする人気者を党首に据えれば選挙に勝てる」という有権者をバカにした態度が、自民党の完敗を生んだというわけだ。自民党は世論を曲解したことで、世論からしっぺ返しを受けたのである。現在の菅政権も、「国民が政策を理解してくれない」などと言い訳を始め、バラマキ政策やイメージ戦略で支持率浮揚を図るという愚策に走っている。そういう浅知恵は、既に国民に見透かされているということに気づいた方がいいだろう。上辺のイメージに騙されて投票するほど選挙民はバカではない。むしろ政治家こそが世論を上っ面でしか理解できていないのだ。


 あらゆる政党は、大多数の政治家は、選挙区に戻ったりネットを見ることで、有権者の熱のこもった“生の声”を懸命に拾おうとする。だが、その努力こそが落とし穴なのだと筆者は説く。政治家に陳情してくる支持者の声やネットに氾濫する政治的意見も、世論の一部でしかない。この一部の偏った意見を「国民の声」と錯覚することで、政治家は世論を見失ってしまうのだ。
 2009年の衆院選において自民党は民主党の日の丸切り貼り問題や日教組との関係を批判し、麻生太郎総裁(当時)は応援演説で「われわれは保守党だ。郷土、家族、日本、日の丸を守るのは自民党だ」と絶叫した。
http://blog.goo.ne.jp/05a21/e/14e7331388ffb3061d7d9710ea1bc610
http://unkar.org/r/newsplus/1250799147
演説会は大いに盛り上がり、ネットでも麻生に対し賞賛の声が挙がったが、こういうイデオロギー的主張に拍手喝采するのは、旧来からの熱心な自民党支持者とネット世論だけであるということを自民党は完全に見落としていた。この誤断こそが自民党の敗因だったのである。

 実際に選挙の趨勢を決めるのは、政治活動はおろか政治的意見を声高に語ることもない、日常的には政治との接点が乏しい“普通の”有権者である。この大多数の“声なき声”を聞くために最も有効な手段は、街頭に立つことでもなく、2ちゃんねるをチェックすることでもなく、世論調査や選挙結果の無機質で冷たい “数字”と真摯に向かい合うことだ。この冷厳な事実を、若干の皮肉を込めて淡々と語る本書は、政治活動や政治評論を生業とする専門家にとって必読の本と言えよう。そして「大手マスコミの世論調査は偏向で、ネット世論こそが真の世論」と勘違いしているネット中毒者たちにとっても。

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ホント、今こそ「『大攘夷』実現への平成維新」が必要では・・

2011/3/5(土) 午後 8:23 [ tero19632001 ]

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おっしゃる通りですね。

2011/3/6(日) 午後 1:36 yjisan

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