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若者よ、挫折力を鍛えよ/冨山和彦(経営共創基盤CEO)

Voice 1月11日(火)12時16分配信

 本年度の新卒の就職状況は、統計史上、最悪の水準だそうだ。いまのところ企業業績、とくに大企業の業績は極端には悪化していない。にもかかわらず、大企業側の求人指標はきわめて悪く、むしろ中小企業のほうが採用に積極的。他方、新卒の若者は大企業、なかでも「寄らば大樹」の優良企業をめざす。私も大学生と高校生の子をもつ親である。また、産業再生機構のCOOの時代から、日本の企業社会の構造問題をもっとも間近でみてきた。この就職問題から浮かび上がってくるのは、世の通説、いや風説とはまったく異なる、「いまどきの若者」の姿だ。

 世の中では、「いまどきの日本の若者は草食系だ」「内向きだ」という大人たちの声がかまびすしい。ある人は「就職が厳しいなら、中小企業へ行けばいいじゃないか」という。逆に「海外に雇用をもっていく大企業はけしからん」「それもこれも市場原理、競争原理を進めた小泉、竹中のせいだ」と、お定まりの大企業批判や、5年も前の政府のせいにする人もいる。

 しかし、よく考えてみてほしい。ここ数年、労働市場規制は明らかに強化の方向。資本市場では大々的な外資バッシングをやり、反ビジネス型の政策を推し進めた結果、いまや日本に対する海外からの産業投資など、頼んでも誰もやってこない。貿易自由化でさえ、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の議論をみればわかるように、世界からどんどん取り残されている。

「開かれた競争はいやだ」「外国からのお金も人材も嫌いだ」と、むしろ鎖国の殻に閉じこもり、つかの間のムラの平和の延命に必死になっているのは、こういった政策転換を支持してきた「上の世代」のほうだ。日本は立派な民主主義の国。しかも人口構成は逆ピラミッドで、かつ投票率は「上の世代」のほうが高いから、当然、政策の方向性は、私自身も含めた中高年世代や高齢世代の影響を強く受ける。

 政治的多数派である「上の世代」は、大半の富を抱え込み、社会保障制度も逃げ切り世代だ。数の少ない若年層から搾取する構造に陥っている年金や、医療における世代間賦課方式を本気で変える気配はない。後期高齢者医療制度のように、世代間賦課方式から少しでも転換しようという政策は、あっという間に叩き潰す。政府税調の議論では、所得再分配も、現在「金持ち」である「上の世代」の資産を再分配するのではなく、現役で高所得の人の収入を再分配するという。若い世代が頑張って高給取りになる道を強制的に塞ぎながら、自分たちが貯め込んだ富には指一本触れさせない構図だ。こうした閉塞を打ち破ろうと「勤皇開国モード」で頑張る若手に対しては、やれ「売国奴」「ハゲタカの手先」とバッシングにまわる。

 かかる状況で、新卒就職という、正社員への唯一の入り口を閉ざされた若い世代が、できるだけ代謝を減らし(≒草食化)、「平家、海軍、国際派」のレッテルを貼られないようにする(≒内向き化)のは、当然の適応現象だ。

 大人たちが繰り出す彌縫策が、本音では大人たちの既得権を守ることを大前提にしていることを、若者はよく知っている。どこかの元国営航空会社がその典型。明らかに後輩から搾取する構造になっている企業年金を改革しようとすると、受給者の少なからずが、「再生の将来ビジョンがみえないあいだは応じられない」「まだまだ削れる無駄があるはずだ。それが先だろう」と騒ぎ出す。どこかで聞いたようなセリフと同じ。本来、違う次元の問題、あるいは因果関係が逆の問題を、自分たちの既得権の延命のためにすり替えているにすぎない。

 いまや若い世代にとって、一度もぐりこめれば終身雇用、年功制、豊かな企業年金が既得権として保障される豊かな会社(≒ムラ)の数は限られ、今後、さらに減少することも明白。これは一国の政策とか規制でどうなる問題ではなく、世界の動向や人口構成といった、もっと根底的な社会の構造問題だということを、当事者であり、すぐ上の「ロストジェネレーション」の先輩の苦労を間近でみている彼らは、大人よりもよく理解している。

 逆に、そのムラ、いわばシェルターから一度、放り出されたら、日本の社会は冷たい。ぎりぎり、そのシェルターのなかで逃げ切れる既得権者比率の高い「上の世代」が、そこに本気で手を付ける気がないことも、彼らはよく知っている。だから、絶対安全そうなシェルターへの就職人気は極端に高くなるが、それ以外は、どこへ行っても同じと判断しているのだ。これはまったく正しい。幸い、デフレの進行で、草を食んで静かに生きること自体はやりやすくなっている。

 ということは、「いまどきの若者たち」は、じつはしたたかで、与えられた環境にしっかり順応して、混沌の時代を生き抜く準備を本能的にやっているのだ。実際、女性に多いパターンだが、世界のフィールドで一人で生き抜く力を鍛えるために、単独で海外に飛び出す若者も増えている。そこまでの闘争力、狩猟能力がなさそうだという大多数の若者は、デフレの国内に残り、草食的な冬眠モードで生き残りをめざす。それぞれに大したものだ。

 私や私より上の世代は、そのうちいなくなるか、力を急速に失っていく。偏狭な攘夷論にすがりついている連中は、あと10年もすればどんどん消えていくのだ。本当に日本全体が危機になったとき、いい時代を生きてきた「上の世代」、典型的には団塊世代から私の世代くらいまでは、意外と役に立たないはずだ。幕末の直参旗本八万騎と大差ない。

 だいたい、「いまどきの若者は」の類いは、ヤキが回ってくると言い出すフレーズ。エジプトの遺跡にも同じ言葉が刻まれているそうだ。無名時代の勝海舟も、坂本龍馬も、そして若き平清盛や織田信長も、当時の大人からみれば、生活態度も根性もなっていない、思わず顔をしかめるような「いまの若いやつ」である。慌てることはない、若者よ。この不遇と閉塞のなかで、せいぜい苦しみ、失敗し、逼塞して、心と体を鍛えておけ。早晩、君たちの時代はやってくる。そのときに、そうやって培った「挫折力」が必ず生きるはずだ。

(引用終わり)

リベラルを標榜する学界で、身分社会が形成されていくという皮肉。

何かもう、大部の紙束を正副総計五部も印刷していると、我ながら壮大な紙資源の無駄遣いではないかという懸念を払拭することができませんでしたね。コピー代もバカにならないし。

地球環境のために再生紙で印刷しようかと一瞬考えましたが、曲がりなりにも博士論文を再生紙に印刷したら後で怒られそうな気がしたので、やめました。


しかし博論審査が今から憂鬱です。
どんな先生方が審査なさるか、何となく想像がつくだけに。
数ヶ月は待たされるでしょうから、蛇の生殺しですよ。
うちの大学の場合、公開処刑審査ではなく、非公開であることが唯一の救いですね。

山崎元のマルチスコープ
【第158回】 2010年12月1日

山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]


就職内定率の低水準に思う「年齢差別禁止法」の必要性


(前略)

来年新卒者の就職内定状況の悪さの主因は、企業が人員の削減を主として新卒者の採用抑制で行おうとしているからだ。既存の正社員を簡単には解雇出来ないので、採用の抑制で人員を減らす訳だが、1年分では目標に達しないので、翌年の採用をさらに抑えることで対応しようとした結果、今年は昨年よりももっと酷い状況になってしまった。

(中略)

全体的な不況で、雇用情勢全般が厳しいのは仕方がないとしても、そのしわ寄せが特に「新卒」に集中して、しかも、「新卒」の時期の就職を逃すと、好条件な企業の正社員になることが難しい。新卒就職の可否で職業人生の相当部分が不可逆的に決まってしまう状況は過酷だ。


(中略)
世代間不平等を解消するために

この調子では来年も顕著な改善は見込めないだろうから、問題は、昨年・今年・来年辺りに大学を卒業する年代全般に及ぶ。

厚労省の調査によると、20代、30代(20歳〜39歳)の男性で正社員は51%が結婚しているが、非正社員は17%しか結婚していないという。就職難は、日本の一層の少子化にもつながっている。

現在の世代にのみ不況の影響を集中させないためには何が必要だろうか。


先ずは、「新卒」という区分の廃止ではないだろうか。

たとえば、同様の能力を持っている求職者に対して、23歳なら採用できるが、26歳なら不採用だというのは、明らかに差別的だ。企業としても、個人をより丁寧に評価すべきだろう。日本もそろそろ年齢による雇用上の差別を禁止すべき頃合いではないだろうか。もちろん、既卒業者で他の企業に勤めていた求職者も、分け隔て無く選考対象にすべきだ。

候補者の選考に関して細かく規制で縛ることは望ましくないが、一定規模以上の事業所には、採用の際の選考基準の明示を義務づけることと、その中で年齢、職歴を基準にしないことを求めることが必要ではないだろうか。

「新卒」の年齢にこだわらなくていいとなれば、学生もゆっくり大学院に行くこともできるだろうし、必ずしも第一志望の会社でなくても職業経験を積んでから希望の会社に再チャレンジしやすくなる。

(中略)

加えて何よりも、正社員解雇のルール確立が必要ではないだろうか。

若手世代が集中的に割を食う現状の多くは、不況に対する人員整理が年代によらず必要に応じて行えないことに起因している。つまり、空きが出来ないから若手が就職しにくいし、企業としてもコスト調整が遅れている。

一定の金銭的補償の下に整理解雇、指名解雇が出来る法的な枠組みを作るべきだろう。現状では、不当な解雇を受けても争えない労働者が中小企業を中心に多数居たり、いじめに近い嫌がらせを受けて自主退社に追い込まれるような悲惨なケースが発生している。解雇の際の補償条件を法的に決めておくことは、多くの「弱い労働者」にとってメリットとなるのではないだろうか。

もちろん、企業の側にとっても、人員整理の際のコストを前もって見積もることが出来るから、経営計画が立てやすくなる面がある。

何れにせよ、「新卒」の範囲を一時的に拡げたり、就職協定を復活させるような小手先の対応ではなく、雇用に関する制度全般を抜本的に見直すべき時期ではないだろうか。その際には、(1)人材の流動性を高める施策であること、(2)企業と労働者の選択の自由を拡大する施策であること、(3)年齢、経歴などによる差別を排除するものであること、(4)労働に対してなるべく早い時点で報いる制度とすること(長期雇用による報酬の長期延べ払いを解消すること)、の4点が必要だと思う。

(了)




辻広雅文 プリズム+one
【第118回】 2010年12月2日

辻広雅文 [ダイヤモンド社論説委員]



「成長率も失業率も低い社会」と「成長率も失業率も高い社会」のどちらを選ぶか〜ノーベル賞受賞の「サーチ理論」で解く日本の労働市場


2010年のノーベル経済学賞は、サーチ理論と呼ばれるモデルの構築に対し、米マサチューセッツ工科大学のピーター・ダイヤモンド教授ら3氏に決まった。サーチ理論は労働市場の分析に極めて有効だ。今井亮一・九州大学准教授に、サーチ理論から見た日本の労働市場の特質を聞いた。「失業率は低いが、成長率も低い」という特質が浮かび上がる――。


(中略)


国によってリーマンショックの影響度が異なるのは、各国に固有の構造的要因があるからだ。日本については、二つのことが言える。第一に、そもそも失業率が低い。第二に、リーマンショックによってGDPは10%以上減少したのに、失業率は1.5%程度しか増えなかった。

その理由を解明するために、サーチ理論の分析手法は極めて有効なのだが、これ以降はその分析によって得られた結論だけを述べる。

第一に、失業者のためのセーフティネットが他の先進国ほど充実していない。雇用保険の適用期間、金額が生活を保全するほどのものではなく、受給資格も厳しい。さらに、一度職を失うと次の仕事では低賃金に甘んじざるを得ない場合が多く、しかも最低賃金も極めて低く設定されている。つまり、失業すると手ひどい状況に追い込まれる。それを、国民がよく知っている。

第二に、企業から見れば、整理解雇が極めてしにくい。企業が従業員を整理解雇するには厳格な4要件が必要であることが、判例で固まってしまっているからだ。

第三に、政府は「整理解雇の4要件」に代表される労働法制を維持する一方で、雇用調整助成金によって失業者を増加させない政策方針を採っている。

労働者は解雇されまいと必死になり、企業は極めて解雇しにくく、政府はその構造を崩さないように支援しているという構造だ。

――他の先進国の失業率が高い理由は何か。

理由はさまざまに考えられるが、たとえば、米国はセーフティネットが充実しているわけではないが、解雇規制が日本より緩和されている。欧州はセーフティネットの整備が進んでいて、労働者が解雇、失業を日本ほど恐れない、と言われている。


――失業率が極めて低く、他国に比べて雇用状況は安定しているが、経済の低迷は20年も続き、成長率は極めて低い。それはどうしてか。

失業率と成長率は、トレードオフの関係があるからだ。

解雇されたくなく、また解雇しにくいという構造の結果、失業率が低いということは、会社を辞めて次の仕事を探そうとする人が少ないつまり、労働市場の流動性が低い、ということだ。流動性の低い労働市場からは、イノベイティブな新しい事業、産業は生まれにくい。また、現在の仕事の生産性が極めて低いにもかかわらず、雇用が維持されているために会社の生産性が向上せず、ひいては産業界の生産性が向上せず、日本経済の成長率を低下させている可能性がある。

逆に言えば、セーフティネットの充実や解雇規制の緩和などの労働市場改革を行うと、失業率は上昇し、国民負担は増加する。だが、企業は解雇がしやすくなることで、低生産性の事業を廃止して高生産性事業に集中することができる。また、流動性が高まることで、能力の高い人が能力の低い人にとって代わって仕事をするようになるので、生産性が向上するようになる。

(後略)



何度も言うけど、うちの業界にも通底する問題。
この問題に目を瞑り、「弱者切り捨て」などと政府批判をするなど、
チャンチャラおかしい。
政府を批判する前に、自分たちの足下の弱者を救済してはどうか?

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今の若者は「内向き」で上昇志向に欠けている、もっと海外を目指せ・・・
という若者批判を、最近良く耳にする。
だが、そういう大人たちもまた、実は「内向き」なのである。

政治家も官僚も財界人も評論家も文化人もマスコミ関係者も、その殆どが日本国内でしか通用しない「内弁慶」である。「内弁慶」たちが内向きの発想で日本を動かしているのだから、日本が衰退していくのも当然である(勿論このことは、政官財トライアングルを批判して「政権交代」を果たした民主党政権の面々にも当てはまる)。


その点、世界を股に掛けてビジネスの最前線で活躍してきた大前氏の提言は、日本国内でしか通用しない「ガラパゴス」な議論とは異なり、グローバル・エコノミーの本質を踏まえており、説得力がある。



ボーダレス化・IT化が進む現在の世界経済は、もはやマクロ経済学(「神の見えざる手」)では説明できないものになっている。
だから、既存の経済学に則った従来型の景気対策や経営戦略では「デフレ不況」を克服できない。田舎で無駄な公共事業をやる「緊急経済対策」や同業他社との「価格競争」では、「成長」には結びつかないのだ。
大事なのは、今までとは全く異なる(一見「不合理」な)消費行動を取るようになってきた消費者個々人の心理―民の見えざる手―を正確に読み取り、彼等の需要を刺激することである。その仕掛けを大前氏は「心理経済学」と名付けている。


数多の連載を持ち、多作家である大前氏なので、本書の記述は過去の主張と重なる部分(湾岸100万都市構想や容積率の大幅緩和など)も多いが、コンパクトな内容にまとまっており、大前氏の現時点での構想の概略を知る上では有用である。
なお、大前氏が(時代に合わせて更新しているとはいえ)同じような主張を繰り返しているのは、大前氏の考えに進歩がないからではなく、日本の政官財が大前説を受け容れずに見当違いの彌縫策を繰り返してきたからである。大前氏の大胆な主張を知れば、民主党が目玉政策としている事業仕分けが「改革」の名に値しないことは一目瞭然である。


「既存の経済学の数式モデルはもう役に立たない」と断言する大前氏だけあって、本書には小難しい数式は一切出てこない。具体的なエピソード満載で、非常に分かりやすい。
ただ幅広い分野におけるエピソード紹介に紙幅を取られた分、本書では大前氏お得意の「グランドデザイン」(道州制、グレートソサエティーなど)の話はやや少なめである。
とはいえ、大前氏の政治理念の根幹は明快に読みとれる。
すなわち、官僚の恣意的な裁量権を奪い、「すべてのルールは住民が決める」ことで、全国一律の悪平等社会から自立した地域が互いに競い合い高め合う社会に変えよう、ということだ。大前氏は言う。「本当の霞が関の埋蔵金は、霞が関が独占していた『権限』なのである」と。




それにしても、大掛かりな政策提言を行ってきた大前氏が、本書の最終章で「定年後のグッドライフ」指南という、非常にミクロな話をするのには驚いた。現代は「個人」が世界を動かす時代であるという認識が根底にあるのだろうが、「中央集権に固執しバラマキを続ける今の日本の政治家や官僚には期待できない」という氏の深い絶望も垣間見える。特に、野党時代は割とまともな経済政策を唱えてきた民主党が政権を獲った途端に、自民党顔負けの利権漁りに走ったことへの失望が大きいようだ。

そこで、大前氏は日本人1人1人に望みを託した。
要するにお金を銀行に預けていても、そのお金は国債の購入に使われ、政府の無駄遣いを助長するだけだ、というのである。貯蓄好きの日本人が多くの趣味を持ち活発に消費を行えば、景気は上向き税収は増え、国債破綻リスクは遠のく。う〜む、なるほど。そう来ましたか。



日本の経済がここまで悪化したのは、政官の無能と堕落によるものだが、国民の側の依存心にも問題がある。国民が“お客様”感覚で行政に過大な“サービス”を求め続けたからこそ、日本の財政支出は膨れ上がった。いわゆる「大きな政府」である。自主自立の精神によって政府の介入を最小限に抑えることが、日本復活のための必須条件と言える。我々は「そんなサービスはいらないから、税金を減らせ」と言い続けなければならない。


もはや、この国の破滅を救うのは、「政・官の見える手」を断固拒絶するという意識変革を遂げた国民だけなのである。

財部誠一の「ビジネス立体思考」


守るべき日本の農業とは何か

2010年11月15日



 TPP(環太平洋経済連携協定)やFTA(自由貿易協定)の議論が起こるたびに、日本では農業関係者から「絶対反対」の気勢があがる。既得権死守にしがみ付き、国益などおかまいなしで自己保身にだけ走る農業関係者たちのいつもの光景だ。なんの驚きもない。


既得権益にしがみ付く農業関係者

(中略)

 いま日本では米余りで米価が下がり続けている。かつては1俵(60キログラム)あたり2万円だった米価が、需要の減少から下がり続け、昨年は1万 2000円まで下がった。コメ農家の窮状を見事に「票田」と見た当時の小沢民主党は、「農家への戸別所得補償」で政権交代実現の一助としたが、米の流通業者はそれを見逃さなかった。激しい値下げ要求が起こり、今年の米価は1万円を割り込んだ。地域によっては8000円台まで落ち込んでいる。要するに戸別所得補償分をまるまる値切られたようなものである。

 減反政策をやらないよりもましなのだろうが、減反政策が米価下落の歯止めとして機能していないことだけは明白だ。


コメの小売価格はさほど下がっていない

 ここで冷静に考えてほしい。かつて60キロあたり2万円していた米価が半分以下まで値下がりしているのに、私たちがスーパーや米屋から購入しているお米の値段は半分になっているだろうか。そんな話は聞いたことがない。要するに米農家の手取りは激減しているが、中間流通や小売りが値下がり分を利益に換えているだけで、米価下落のメリットは消費者には届いていない。

 米農家には我々の税金があの手この手で投入されているというのに、米価下落で米農家の収入は激減、だが下落メリットは消費者に届かない。

(中略)

 全農や農協の機能は証券会社のようなもの。株の売買注文をしたい投資家と証券取引所とを仲介して、手数料をもらうだけである。2万円の米価が1万 2000円になろうが、9000円台になろうが、リスクはすべて農家が負う。全農や農協は手数料収入を取り続けるだけである。しかし巨大化した全農、農協の経営は農産物流通の手数料収入などでは到底賄えず、全農、農協の屋台骨を支えているのはいまや金融業だ。農家に対する融資や保険業で生計を賄っている。


TPP推進を機に農業を改革せよ

 TPPの関税ゼロでいったい誰が困るのか。最大の被害者は全農、農協だ。だが彼らのために日本の産業がグローバル競争の中で危機にさらされる理由などあるわけがない。総論賛成、各論反対の政治家たちは自分の選挙優先、国益無視に走っているだけである。

 さらにいえば生産者も悪い。農家はみな無垢(むく)な善人だなどと思っていたら大間違いだ。高速など道路の開通、再開発やスーパーの出店など、土地の値上がり目当てに農地を資産運用の対象としている農家がどれほど多いことか。自分で生産ができない、あるいはやる気がなくなったのなら、せめてやる気のある農家に農地を貸してあげればいいのに、それすらやらずに放置。耕作放棄地として荒れ放題にされた日本全国の農地が埼玉県ほどの面積にまで拡大している事実がすべてを物語っているではないか。

 先日、福井県で大規模な農業をたった一人で実現している生産者、片岡仁彦さんにお目にかかった。耕作面積は50ヘクタール。中古の農機を全国から安く手に入れ、すべて自分で修理、手入れをしている。機械化で農業の大規模化を実現したわけだが、その現実は過酷だ。

 農地法は度々改正され、農地の貸し借りどころか、売買まで相当に自由化したものの、その実態はお寒いばかり。耕作放棄地が急増していることからも分かるように、農家自身が手放さないのだ。少しでもたくさんの農地で生産活動をしたいと願っている生産者を苦しめているのは、貸与せず耕作放棄を選択する農家が多いことだ。「使わないなら貸してくれよ」といくら頼んでも、いったん他人に貸してしまうと、売却でぼろ儲(もう)けのチャンス到来時に厄介なことになるというのが主な理由だ。


(中略)


関税がなくなれば輸出すればいい

 耕作放棄地拡大に歯止めをかけるためには株式会社などの新規参入が一般的には話題になるが、片岡さんのような生産のプロに農地を集約するだけでも日本農業の生産性は飛躍的に高まる。

 また山形県庄内には米の輸出を本格的に行っている農業法人がある。この法人のトップはTPP論議についてこう言ってのけた。

 「関税なくなるんでしょ。どんどん輸出すればいいじゃないですか」

 日本農業は世界でも高い競争力を持っている。貿易自由化のなかで間違いなく花開くポテンシャリティを日本の農業は備えている。TPPのネガティブキャンペーンをやる暇があるなら、能力とやる気のある生産者が思い切り農業に打ちこめる環境整備に農業関係者は力を注ぐべきだ。

 だがそんなことは100年たっても起こらないだろう。自己保身に勝る改革エネルギーが全農や農協から沸き上がってくるはずがない。だからこそTPP推進なのである。TPPは日本農業滅亡ではなく、滅亡寸前の日本農業の腐った既得権構造に大ナタを振るう最高の動機になる。




辻広雅文 プリズム+one
【第117回】 2010年11月18日

開国か鎖国か――TPPが問う「この国のかたち」


「この国のかたち」を決める選択を、日本経済を構成するおよそ10%程度の既得権集団が左右していいものだろうか。

 環太平洋経済連携協定(TPP)への参加を巡って、農家と農家に関わる数多くの企業、団体、政治家、官僚が必死の抵抗を試みている。

 日本の国内総生産(GDP)における農業の比率は、わずか1.5%に過ぎず、極めて小さい。ただし、関連産業が多数存在する。土木、建設、機械、肥料、飼料…それらすべてを合計すれば、「GDPの10%程度に膨れ上がるだろう」と浦田秀次郎・早稲田大学院教授はみる。

 このGDP10%の構成員たちは、政治においてはその数倍もの力を発揮する。彼らは主に地方に根を張っており、全国農業協同組合連合会(農協)を核として結束力が強く、選挙における投票率も高い。自民党政権時代には、地方出身の農林族を支配し、農林水産省を含めて既得権のトライアングルを構成し、強力な存在感を発揮した。

 近年は、就農人口の減少に加え、政権交代などで農協の組織率の低下とともに政治力に陰りを見せていたのだが、「TPPを絶好のチャンスと捉え」(官邸関係者)て、農業関係者の危機を煽り立てることで再び結束、圧力団体としての力を取り戻しつつある。その凄みに、にわかに菅政権がたじろいでいる。

(中略)

 国際交渉に乗り遅れそうなほど参加成否の検討に時間がかかるのは、いうまでもなく抵抗する農業対策のためである。政府は農業構造改革推進本部を設置、来年6月に政策決定を行うことにした。

 たとえば、農水省はTPPに参加すれば低価格の農産物の輸入急増によって、日本の農業は11兆6000億円の損失が生じ、340万人の雇用が失われると試算している。

 一方、経済産業省はTPP不参加ならば、2020年の時点でGDP10兆5000億円が減少し、81万2000人の雇用機会が失われる、としている。逆に、TPPに参加すれば、自動車や電子製品といった日本が国際競争力を保っている分野の輸出が拡大し、GDP10兆5000億円と81万2000人の雇用が得られるということである。

 農業保護に固執する農水省と自由貿易促進の経済界を代弁する経産省に対し、内閣府はTPP参加で得られる利益と損失を差し引けば、2兆4000億円〜3兆2000億円のGDP増加が望めるとしている。多くの専門家は、「内閣府の試算は中立的で、妥当なもの」(浦田・早大大学院教授)として受け止めている。

 そうだとすれば、このGDP増加分はさまざまな経路で全国民に還元されることになる。全体の利益という立場に立てば、TPPに参加しないという選択肢はないのである。

 ただし、長期的には全国民に利益をもたらすことにはなるが、短期的には非常な痛みが局所に発生する。兼業農家、とりわけ第二種兼業農家では損失が発生する。第二種兼業農家とは、全収入の50%以上を農業以外から得ている農家である。彼らは低価格の輸入農産物に対してまったく競争力を持っていないから、おそらく撤退、廃業、失業に追い込まれることになる。

 だが、それは農業を救うチャンスにも変わる。

 なぜ、兼業農家が競争力を持っていないか。過去数十年に渡って、日本はコメ、小麦、酪農製品などに高い関税をかけ、農地所有者を税制で優遇することで保護した。規制強化によって守られた産業は、例外なく生産性を下げ、イノベーションを欠いて、競争力を落とす。とりわけ、固定資産税や相続税を大幅に軽減されている既得権を最大限に生かそうと、休眠地や農作放棄地を抱え続けた農家の堕落ぶりはひどく、さまざまなメディアに取り上げられている。それが、農業以外の収入のほうが大きく、農作をしなくても生活に困らない第二種兼業農家である。

 かねて日本の農業には構造改革の必要性が叫ばれてきた。小規模農地、休耕地、農作放棄地を集約し、土地の大規模化を図り、専業農家にモチベーションを与え、新規参入を緩めて競争を刺激し、生産性を向上する――。一言でいえば、兼業農家には農業をあきらめ、土地を拠出してもらうことが、構造改革である。

(後略)


転用を夢見て農地を抱えている農家の皮を被った山師たちをさっさと退場させろ。

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