古今亭日用工夫集

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 頑固で不器用ゆえに世間から取り残されている孤独な師弟が「ボクシング」を唯一の武器としてのしあがっていく・・・となると、日本人なら『あしたのジョー』を想起しますね。あの漫画もラストは悲劇ですが、精一杯戦って敗れたので、まだ救いがあります。本作はあまりに残酷。 

 前半の高揚感に満ちたサクセスストーリーから一転して絶望へと叩き落とされましたが、物語当初から「練習生が帰った後の夜のジム」など画面を暗闇が覆うシーンが印象的でしたから、まあ明るい話で終わるわけはないですね。「自分の身を守れ」という教えを受けたボクサーが自らの命を絶とうとして、選手の身を極端に案じる過保護トレーナーが自殺幇助すべきかどうかで悩む。この劇的な暗転が胸を衝きます。


 本作をめぐって尊厳死の是非がアメリカで議論になりましたが、マギーが病院に延命治療の停止を要求する、というのでは、何の意味もないわけですね。マギーに「ボクシング」という充実した“生”を与えてくれたフランキー自身の手で“死”がもたらされなければ、マギーの人生は完結しません。 

 フランキーはマギーに娘の代替を、マギーはフランキーに父の代替を求めましたが、悲しいかな、両者の関係は所詮「ボクシング」を介してのものです。マギーはもうフランキーにトレーナーとしての喜びを与えることはできないし、ボクシングしか知らないフランキーがマギーにしてやれることは限られている。ボクシングが失われた今、両者の関係は決定的に変容してしまい、互いの愛をもってしても、どうすることもできません。「本物以上の親子」へと両者の関係を昇華させるには、あの結末しかなかった。それこそが本作の真の悲劇でしょう。 


 『ボーイズ・ドント・クライ』で体当たりの演技を見せたヒラリー・スワンクが今回も渾身の演技。他の女優は考えられないほどハマっていました。身体もメチャメチャ鍛えてましたね。イーストウッド監督・主演作は「イーストウッドのイーストウッドによるイーストウッドのための映画」になりがちなのですが、本作では彼女の存在感が光っています。 
 
 素直に真情を口に出せないフランキーの代弁者であるエディを演じたモーガン・フリーマンも良い味出してました。フランキーとエディの息の合ったやりとりが観ていて心地よかったです。

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