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1994年、アフリカのルワンダ内戦において大量虐殺事件が発生した。虐殺を逃れてきた1200人もの人々をホテルに匿い、彼らの命を守り抜いた1人のホテルマンの奇蹟の逸話を映画化。虐殺の地獄絵図にせよ、その中で燦然と輝く主人公の勇気と人類愛にせよ、とても実話に基づくとは思えぬほど衝撃的だ。
見かけも変わらず、仲良く暮らしていたはずの隣人に襲われるという恐怖。民族紛争の理不尽と愚昧が執拗なまでに描かれる。ただ本作は欧米先進諸国の人々によって作られただけに、欧米諸国の責任をより強く問う構成になっている。白人が植民地支配を円滑に進めるためにフツ族とツチ族の対立を煽ったこと、国連やアメリカが内戦への人道的介入を避けて虐殺を放置したこと、フランスがルワンダ政府軍に武器を売りつけ内戦の激化を招いたこと・・・・・・
特に多国籍軍が自国民だけ救出してさっさと撤退してしまうシーンは圧巻で、憤りを通り越して慄然とした。人間は他者に対して、ここまで無関心で冷淡になれるのかと・・・資源の無い小国になど関わっても仕方がない、アフリカ人が何人死のうと知ったことではない、ということなのか。
もっとも、海外の戦闘地域への自衛隊の派遣を禁じている日本に、欧米諸国を非難する資格などあろうはずもない。それどころか、この映画は当初、興行的に採算が合わないということで配給先が決まらず、日本での公開が見送られそうになったのである。我々はまさに「ニュース映像を観て、『怖いね』と言って、ディナーを続ける」人間に他ならない。
それにしても主人公ポール・ルセサバキナには感嘆せざるを得ない。単なる人格者というだけでなく、あのような非常事態において、あそこまで冷静に頭を働かせ、果断に行動できる人間は滅多にいないだろう。
彼は「電話作戦」において、「助けて」と絶叫するのではなく、「最後のお別れ」をすることで相手の心を動かせという、実に理にかなった指導を行っている。この辺りの頭脳の冴えは抜群だ。交渉における機転と胆力も素晴らしい。
彼は内戦の最中においても、四つ星ホテル“ミル・コリン”の支配人としての誇りを保ち、お客様にサーブするという姿勢を貫いた。ホテルを一歩出れば狂気が支配する地獄という極限状況の中、通常通り粛々と業務を遂行することが、理性を維持する唯一の手段だったのだろう。「ここは難民キャンプではなく四つ星ホテルなんだ」とポールは言うが、正しくその事実は外の政府軍や民兵に対する抑止力であると同時に、ホテル従業員や避難民にとっての最後の心の支えでもあった。
この映画は人間の救いがたき愚かさを描く悲劇の物語であると同時に、「非日常の中の日常」を驚異的な精神力で成し遂げた男を通じた人間讃歌でもある。エンドロールの歌も胸に迫る。
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