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松江・家老屋敷跡の歴史資料館計画 考古学の視点で遺跡活用 /島根
◇市と専門家対立、より慎重な論議を
松江市が松江城下町遺跡家老屋敷跡(松江市殿町)に計画する「松江市歴史資料館(仮称)」を巡り、行政と考古学専門家の対立が際立っている。「遺跡を丸ごと壊した上で観光的側面を重視した施設と展示」とする島根考古学会と、「外部委員会を設けて専門家や市民の意見を取り入れている」とする松江市との溝は深い。遺跡は失われれば二度と戻らない。松江城築城の近世を前面に出して観光に力を入れる松江市は、考古学の視点を取り入れる必要があるのではないか。【御園生枝里】
松江市歴史資料館の設計は、基本計画検討委員会の意見を踏まえて今年3月にまとまった。瓦屋根にしっくい壁の江戸屋敷風。「松江の開府」「松江城下町の人々の暮らし」など9テーマに分けて資料や写真パネルなど計147点を展示する基本展示室と企画展示室を設け、松江市の遺物を保存する収蔵庫も備える。
島根考古学会(田中義昭会長)によると、松江城下町遺跡家老屋敷跡は、堀尾氏時代の家老屋敷の礎石が残り、湿地に何度も土を盛った様子や、何度か洪水に遭って整地を繰り返した様子が分かる。また、伊万里焼の皿などの食器や祈とう具など文献で分からなかった遺物も見つかっている。
島根考古学会は歴史資料館について「発掘調査内容を早急に公開し、遺跡の活用について意見を求める」「遺跡を保護処置し、屋外展示などを通して活用する」を松江市に要望。市側は今月15日に設計の一部変更を決め、礎石などの遺構を縦・横3メートル弱、深さ約1・5メートルに切り取り、床下に地下展示するとした。
しかし、島根考古学会は「内容が不十分。より広い範囲の保護や活用を求めていく」として24日の幹事会で対応を決める。島根大法文学部の渡辺貞幸教授は「資料館を作るために遺跡を壊すのは本末転倒。全国では遺跡を生かした方策をとっている」と話す。また松江市は、開発に伴ってようやく、06年から家老屋敷跡や大手前通りの発掘調査を始めたことに触れ「当初から調査をしていれば市民の理解を得られた。壊すことを前提に掘らず、良い遺構が発掘されれば計画を見直すべきだ」と指摘する。
松江市は、基本計画検討委員会で専門家や市民の意見を取り入れていると説明するが、委員に考古学の専門家はいない。委員から「ワーキングの時は調査の全ぼうが分からなかった。考古学の専門家に参加してもらってどこを残すか議論すべきだ」との声が上がっており、より慎重な姿勢が求められている。
毎日新聞 2008年7月24日 地方版
本当に松江の歴史を尊重し、その素晴らしさを地元民や観光客に伝えようと思うのなら、「ハコモノ行政」はやめて、遺跡を保存すべきでしょう。
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