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鷺と雪<★★★★★>

 帝都に忍び寄る不穏な足音。
ルンペン、ブッポウソウ、ドッペルゲンガー…。
良家の令嬢・英子の目に、時代はどう映るのか。
昭和十一年二月、雪の朝、運命の響きが耳を撃つ―。

 北村薫さんのベッキーさんシリーズ第3弾にして
待望の直木賞受賞作です。今更直木賞云々で
箔をつける必要はないと思いますが、それでもやはり
更なる読者層の拡大にはなるでしょうか。

 いつものように中編3つが収録されていますが、
同時にシリーズ全体としても一つの区切りを迎える
結末が用意されています。この結末自体は序盤から
繰り返し暗示されているので、日本史の知識が
ある程度持ち合わせられていれば(←勉強したばかりだから偉そう)
容易に想像できるものだったのではないかと思います。

 各編ごとにもミステリとしての展開やそれに対する解決が
用意されていますが、やはりこの作品はこの1冊を通して、
またシリーズ全体を通して感じられる「時代に対する視点」を
読み解くことの方が面白いのではないかと感じています。

 上流階級の令嬢やその周辺世界を描いているために見過ごして
しまいそうになりますが、間違いなく日本がある方向性へと
動き出している時代です。また、その中で生きる人びとに
対して思いを致すべき作品であることも忘れてはいけないと思います。
どのように受け止めるかは読み手それぞれだと思いますが、
私にとっては忘れえぬ鮮烈な印象を残す作品になったことは
間違いありません。

 叙情的な描写、儚げでそれでいて強さを持った登場人物たち、
心打つ言動の数々、どれをとっても忘れられない作品ですし、
忘れたくない作品であると言えます。北村薫さんの代表作に
挙げても異論のない作品ではないかと、個人的には感じています。

 本の感想自体久しぶりすぎて書きたいことの1割も書けていない様に
思えます・・・是非このシリーズを追っている方もそうでない方も、
早く手にとって欲しい作品でした。

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