山口雅也

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独自の世界、独自の路線を突き進む本格推理作家、山口雅也です。
マイベストは「ミステリーズ」。
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 垂里家最大の懸案事項。それは長女・冴子の結婚問題!
小説家を志し、毎日、原稿ばかり書いている冴子だが、
周囲からは次々とお見合い話が舞い込む。
それでも、やっぱり、お見合いするたびに事件に巻き込まれ、
お相手そっちのけで謎を解くはめに!
はてさて、今回の冴子のお見合いの成否は、そして事件の行く末は。

 昨年の『モンスターズ』『キッド・ピストルズの最低の帰還』に
引き続き、懐かしのシリーズ復活です。こちらも実に9年ぶりの新刊。
山口さんのシリーズものでは最も読み手を選ばないと思われるこちらを
待ち望んでいた人も多いのではないでしょうか。

 正直な所、前2作の事件そのものについてはほとんど憶えていない
状態なのですが、それでも違和感無く入って行けたのはこのシリーズの
キャラクターが非常に強いインパクトを持っているからでしょう。
特に一家の妹弟は久々に読んだ気がしないくらいいつも読んでいたような
錯覚に襲われます。山口さんの作品にありがちなキャラだと言ってしまえば
それまでなのですが。

 事件そのものは非常にオーソドックスです。他のシリーズに比べると
こちらはトリッキーさが控え目になるのかもしれません。ある意味唯一
現実世界を舞台に展開するシリーズとも言えるので、若干地味になるのは
仕方のないところでしょうか。特に『神は寝ている猿』はダイイングメッセージが
出てきた時点で犯人に気付いてしまったので、その点ではかなり物足りないと
言わざるを得ないでしょう。

 冴さんが指摘されていた「冴子の変化」という部分は私も感じるところでした。
現場に赴いたり捕り物に参加したりというのは、やはり結構違和感を感じます。
もともと安楽椅子探偵よりも現場を練り歩く名探偵の方が好みではあるのですが、
このキャラクターはやはり安楽椅子のシチュエーションの方がしっくり来るように
思えます。この変化がシリーズ自体にも何がしかの変化をもたらすのであれば
また違うのでしょうが、また次巻までは結構間が開きそうな気がしますしね。

 それでも評価できるのは二大スター(?)競演がしっくりはまる形で
描かれていることでしょうか。意味も無くただ競演させたわけでもなく、
そして持ち味を殺さずに二人を描いているあたりは、「この人はキャラ勝負に
徹しても行けてしまうのでは?」などと思わせたりもします。いやいやそれでも、
やはり往年の壮大な本格推理作品を見せる機会を作って欲しいという思いは消えませんけれど。

 パンクス出身の凄腕捜査官キッド。現実と似ているようで
全然違うパラレル英国で、途方もなく馬鹿げた不可能犯罪事件に挑む。
そこには、なぜかマザーグースの唄声が響いていて…。
キッド・ピストルズ、13年ぶりの第5作。

 キッドだ〜!いやあ、実に懐かしい。山口さんに夢中だった頃には
一体何度読み返したかわからない、思い出のあるシリーズです。
「冒瀆」「妄想」「慢心」、どれも好きな作品ですが、
山口ワールドを最も堪能できる「妄想」は山口作品でも
五指に入る(というほどの作品数があるわけではないが)と思います。

 今年は「ミステリーズ」「マニアックス」に続くMシリーズも
刊行されたりと、いつになく精力的な山口雅也さん。
あとは噂の垂里冴子続編がいつ出るかですねー^^

 さて、「最低の帰還」と題されたとおり、余りにも待たされ過ぎて
もう待望感すらなくなってしまったように思いますが、やはり
このシリーズのひねりの効かせ方、キャラのやり取りの妙味は
生きています。

 このシリーズの王道を行く「誰が駒鳥を殺そうが」、音楽世界と
融和させ、ラストが印象的な「鼠が耳を澄ますとき」などは
やはりこのシリーズはいいな、と思わせるものでした。

 ただ、久しぶりに読めた贔屓目を差し引くと、ちょっと以前よりも
スケールダウンしたかな、と思わせる部分もあります。
もっと偏執的な登場人物が跳梁跋扈している方がこのシリーズらしく、
世界にもあってくるのではないかなあ、と思えてしまいます。
時代の流れとは言え、携帯電話が当たり前に登場することにも
何となく違和感があります。まあ、当たり前と言えば当たり前なのですが。
長期連載シリーズと違い、途中経過が一切ない分余計そう感じるのでしょうね。

 まあそんなことはさておき、シリーズ復活は嬉しい限りです。
願わくば、次作はこんなに間があかないといいなあ。
この辺は「女王国の城」を読み終えたときと同じ気分です。

 誰のなかにも潜んでいるモンスター。
それに乗っ取られた時に始まるミステリ。
深く、濃く、そしてゆっくりと謎は深まる……
『ミステリーズ』『マニアックス』に続くシリーズ第3弾。

 楽しみで仕方がなかった山口雅也さんのMシリーズ
(いつの間にシリーズ化されていたのだろう?)第3弾。
前2冊は私のミステリ読書道における道標になっていると
言っていい作品だったので、正直読む前から興奮を抑え切れませんでした。

 各作品群はやはり山口雅也らしさ全開です。強烈さ、大胆さ、
不可思議さいずれをとってもクオリティも高く、
私の好みに合っています。それでも、前2作が気に入りすぎていたのと、
例によって「先に期待しすぎているとはまり切れない」の
パターンにやや絡め取られてしまっていたようにも思えます。

 冒頭の「もう一人の私がもう一人」が一番お気に入りかと思います。
この不可解なパラドックスはやはり山口さんならでは。読んでいる自らも
混沌の中に取り込まれていくこの感覚が好きです。

 「半熟卵にしてくれと探偵は言った」は一番ミステリ的な色合いを持っていますが、
このシリーズ、作品に期待することから考えるとちょっと違うかな、とも
思えました。さっきとは逆にらしからぬ作品だったような。

 「死人の車」は怪談話からの着想を思わせますが、真っ直ぐ過ぎず
ひねりすぎずで意外性を出してくれています。わかりやすく予想外なオチは
結構好きなところです。

 「Jzzzy」はこれぞ!という作品でした。最後まで読んでも意味がわからない・・・

 「箱の中の中」も非常に面白い作品です。「量子力学」だとか
「シュレーディンガーの猫」だとかはこの人の作品でよく見かける
用語だと思うのですが、ある意味その流れを汲んでもいるのかなとふと思いました。
わかりにくい部分も残りますが、「魍魎の〜」を連想してしまうところに
このラストは見事ともイマイチともつかないところ。それでも面白いと思えるのが不思議です。

 「モンスターズ――怪物團殺害事件」は中編と言える分量で、なかなか
大胆な設定と展開で惹きつけてくれます。途中の展開がぶっ飛んでいた分、
最後はなんだか平凡に見えてしまいましたが、この着想はとても面白かったです。
最後を綺麗にまとめるより、もっと大胆に仕上げてほしかったようにも思えます。

 多分「ミステリーズ」や「マニアックス」に比べて驚かされる場面が
多くなかったせいもあるのか、と書きながら思ったのですが、比較対象を
考えずに読んでいけば、傑作短編集と言って間違いないと思います。

 塔から飛び降りたはずの物理学者の死体が屋上で発見され、
塔の下には別人が死んでいた…!?(「神なき塔」)、
ノアの方舟を再現し来たるべき大洪水に備えようとした男が
変死する事件の意外な真相(「ノアの最後の航海」)、
死体となって見つかった後消失した当主のものと思しき
首なし死体が広大な庭園の中で発見される…(「永劫の庭」)。
謎解き興味の横溢する傑作中編3編を収録。

 「キッド・ピストルズのシリーズで一番のお気に入りは?」と
聞かれたら間違いなくこの本を挙げます。山口雅也らしい世界観を
かもし出しつつ、非常に美しい論理でまとまった作品が揃っています。
山口雅也の作品を引き立たせる意味で、「妄想」というテーマほど
ピッタリはまるものはないな、と思わされます。
「狂人なりの論理がある」というのはよく使われるフレーズですが、
この作品でこそこの言葉は価値を出していると思います。
「神なき塔」が一番のお気に入りですが、他の2作品も遜色ない傑作です。

 山口雅也の傑作、というとやはり一番多く名前が挙がるのは
「生ける屍の死」ではないかと思います。私ももっともだと思いますが、
この「キッド・ピストルズの妄想」もそれに劣らないくらいの
傑作だと思っています。

 でも一番はやっぱり「ミステリーズ」^^

 お遊戯(プレイ・タイム)の時間、それは癒しであり、病でもある-。
古今東西の「遊び」から現代の「家族」が抱える病理を、奇妙に、
鮮やかに抉り出すアクロバティックなミステリー短編集。

 やはり山口雅也は面白いです。
「遊び」や「ゲーム」という主題が与えられていますが、
描かれているのはいつもの(パラレルワールドでない)
山口作品の世界です。舞台は日本が中心ですが、
作品の雰囲気としては私の中での不朽の名作
「ミステリーズ」や「マニアックス」の流れを継いでいる感じです。

 結構気に入ったので作品ごとに感想を。
・ぬいのファミリー
 ぬいぐるみが話題の中心にすえられています。どんよりとした雰囲気で
展開する話ですが、終盤の目くるめく展開は圧巻。
オチはよく見かけるパターンともいえますが、
それがまた静かな恐怖を煽ってくれます。

・蛇と梯子
 これは外国のとあるボードゲームの話。ある意味では最もゲームの醍醐味を
味わえる作品だと思います。イメージしやすいルールなのですが、
実はとんでもない仕掛けがあります。ぎりぎりの緊張感からいかにも山口雅也らしい
ラストへつなげていくこの作品が、この本で一番のお気に入りです。

・黄昏時に鬼たちは
 ネットで知り合った引きこもり、大学生らが隠れ鬼をしている時に起きた殺人事件。
「チャット隠れ鬼」をふと思い出します。「PLAY プレイ」の中では
最もミステリよりの作品だと思います。ホラーをイメージしている分意表を突かれます。

・ゲームの終わり/始まり
 「ああ、山口雅也だなあ」と思わずにはいられない作品です。
疑似体験ゲームについての話ですが、文章の構成が抜群です。
そしてこの展開、結末。何度も出会ってきたはずなのですが、
やはり驚きを感じさせてくれます。

 最後まで読んでみるとまたさまざまな仕掛けが見えてきたりして、とにかく飽きさせません。
私は「いいゲームとは何度やっても面白く感じられるもの」と思っていますが、
この本は「何度読んでも面白く感じられる」と思います。
名作「ミステリーズ」や「マニアックス」とまでは行きませんが、
自分が山口雅也好きなことを再確認させてくれる1冊でした。

 

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