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映画原作『ファン・ジニ』訳者あとがき(その3)
ところで、二〇〇二年という年に南北朝鮮で同時に黄真伊を主人公にした小説が登場し、大きな反響を巻き起こしたのは、決して偶然ではないだろう。
本書の舞台、松都(ソンド)(開城)は、高麗時代に王都となり、朝鮮王朝がソウルに遷都するまでの約四百七十年にわたって政治経済の中心地だった。一九四五年八月、日本の植民地からの解放とともに朝鮮は南北に分断され、北緯三十八度線のすぐ南に位置する開城は、南の領域に組み込まれた。だが、朝鮮戦争を経て開城は軍事境界線の北側に入り、いまでは北の領域となっている。
こうした経緯から、開城は離散家族が多く、南にも開城出身者は多い。ソウルからはわずか数十キロメートル、自動車なら一時間の距離である。にもかかわらず、南の人々にとっては、開城は禁断の街となっていた。
その状況に劇的な変化をもたらしたのが、二〇〇〇年六月の南北首脳会談だった。歴史的な六・一五共同宣言では、分断された鉄道と道路を連結するとともに、開城に工業団地を建設することが合意された。〇二年十一月には北側で開城工業地区法が制定され、いまでは南側が建てた五十以上の工場で、約三万人の北側の労働者が働いている。〇七年十二月からはソウルから日帰りの開城観光も始まり、毎日数百人がバスでこの美しい高麗の古都を訪れるようになった。
このような南北関係の大きな変化が、南の人々の間に開城への関心を呼び起こし、いまの黄真伊ブームへとつながったと言える。
本書では、ノミを始めとする登場人物たちが、臨津江(リムジンガン)を渡って開城とソウルの間を自由に行き来している。分断以前は、これが当たり前の姿だった。そして近い将来、たとえ紆余曲折はあろうと、それが当たり前の姿になるだろう。
不幸にも、現在の日本から見た「北朝鮮」は、そこに生きる人々の表情を想像することも難しくなってしまっている。こうしたなかで、本書翻訳の貴重な機会を与えてくださった朝日新聞出版の林るみさんに謝意と敬意を表したい。
日本の読者が本書を通じて、隣国の人々とともに笑い、涙していただけたなら、翻訳者としてこれほどうれしいことはない。
二〇〇八年八月
訳者
http://www.amazon.co.jp/dp/4022504676
http://www.amazon.co.jp/dp/4022504722
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先週上中下3巻読み終わりました。ホント面白かったです。翻訳が自然だったと思うのですが、北朝鮮の小説だと忘れた位です。ちょっとドキドキする内容も有りましたね(^^;)
2008/11/11(火) 午後 3:07
itohさん、お疲れ様でした( ^-^)o旦~~
面白いのはやはり作家の腕だと思います。朝鮮でもすごく売れたらしく、本屋さんを何軒か訪ねても在庫がありませんでした。お色気の場面も、現地では「革命的」だったようですね。
2008/11/11(火) 午後 8:56