訳者あとがき

朝鮮語翻訳家です。最新作は「愛の群像」のシナリオ作家ノ・ヒギョンの初エッセー集『いま愛していない人、全員有罪』です。

映画「ファン・ジニ」

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  ファン・ジニ(ソン・ヘギョ)を抱き上げる下僕のノミ(ユ・ジテ)
  (「ファン・ジニ 映画版」から」)


韓国の映画・ドラマを精力的に日本に紹介している「韓流ナビゲーター」の田代親世さん。
韓流ファンから大きな信頼を集めている田代さんが、スカパー!サイトの連載コラム、
「田代親世の韓流ダイヤリー」の中で、「ファン・ジニ 映画版」を紹介し、次のように
絶賛されています。

「田代親世の韓流ダイヤリー」
(コラムの下の方の「9月のおすすめ映画」の欄です。)

映画は北朝鮮のホン・ソクチュンが書いた小説をもとにしていて、両班の娘として育った女性チニが、
ある日、自分の出生の秘密を知り、妓生として生きていく決意をして、幼なじみのノミとの愛を
貫いていくという話です。ラブストーリー好きの方は期待して見てください。


すごくおもしろくて、これを読んでから見ると、映画のいろいろなことがより深くわかると思います。

と紹介してくださっています。
田代さんとは面識がありませんが、この場を借りてお礼を申し上げます。

映画「ファン・ジニ」とその原作本は、両班(リャンバン、貴族)のお嬢様
(ファン・ジニ=ソン・ヘギョ)と、彼女を想い続ける使用人(ノミ=ユ・ジテ)
の悲恋を軸にした歴史ラブロマンス+アクションが売り物です。

そこにひかれる理由について田代さんは、こんなふうにおっしゃっています。

「絶対的な上下関係にあり、たとえ好きでもその気持ちを容易には表せない男女」という
シチュエーションに非常に“萌え”てしまう

このような愛のかたちにひかれる女性は多いのでしょうか……?


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9月27日から東京・川崎を皮切りに公開が始まった
ソン・ヘギョ主演の「ファン・ジニ 映画版」ですが、
観客の出足はなかなか好調なようです。

配給元の関係者によれば、初日は上映30分前で行列が
できていたとのこと。
http://blog.cinemacafe.net/showbiz/archives/kanai/008549.php

私のマイミクの方からも、平日の昼間に見に行ったのに満席で、
男性客も多かったとの報告が寄せられました。
劇場で原作本を買っていく人も多かったそうです。
とりあえず、原作本の翻訳者としては安心しました。

それと、YouTubeにNHKハングル講座で放送された
ソン・ヘギョのインタビューがありました。
彼女の発音はとてもきれいなので、聞き取りの練習にもいいですね。
http://jp.youtube.com/watch?v=YJnqt6JNXnA



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映画原作『ファン・ジニ』訳者あとがき(その3)


 ところで、二〇〇二年という年に南北朝鮮で同時に黄真伊を主人公にした小説が登場し、大きな反響を巻き起こしたのは、決して偶然ではないだろう。

 本書の舞台、松都(ソンド)(開城)は、高麗時代に王都となり、朝鮮王朝がソウルに遷都するまでの約四百七十年にわたって政治経済の中心地だった。一九四五年八月、日本の植民地からの解放とともに朝鮮は南北に分断され、北緯三十八度線のすぐ南に位置する開城は、南の領域に組み込まれた。だが、朝鮮戦争を経て開城は軍事境界線の北側に入り、いまでは北の領域となっている。

 こうした経緯から、開城は離散家族が多く、南にも開城出身者は多い。ソウルからはわずか数十キロメートル、自動車なら一時間の距離である。にもかかわらず、南の人々にとっては、開城は禁断の街となっていた。

 その状況に劇的な変化をもたらしたのが、二〇〇〇年六月の南北首脳会談だった。歴史的な六・一五共同宣言では、分断された鉄道と道路を連結するとともに、開城に工業団地を建設することが合意された。〇二年十一月には北側で開城工業地区法が制定され、いまでは南側が建てた五十以上の工場で、約三万人の北側の労働者が働いている。〇七年十二月からはソウルから日帰りの開城観光も始まり、毎日数百人がバスでこの美しい高麗の古都を訪れるようになった。

 このような南北関係の大きな変化が、南の人々の間に開城への関心を呼び起こし、いまの黄真伊ブームへとつながったと言える。

 本書では、ノミを始めとする登場人物たちが、臨津江(リムジンガン)を渡って開城とソウルの間を自由に行き来している。分断以前は、これが当たり前の姿だった。そして近い将来、たとえ紆余曲折はあろうと、それが当たり前の姿になるだろう。

 不幸にも、現在の日本から見た「北朝鮮」は、そこに生きる人々の表情を想像することも難しくなってしまっている。こうしたなかで、本書翻訳の貴重な機会を与えてくださった朝日新聞出版の林るみさんに謝意と敬意を表したい。

 日本の読者が本書を通じて、隣国の人々とともに笑い、涙していただけたなら、翻訳者としてこれほどうれしいことはない。

    二〇〇八年八月
                                          訳者


http://www.amazon.co.jp/dp/4022504676
http://www.amazon.co.jp/dp/4022504722
http://www.amazon.co.jp/dp/4022504730

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映画原作『ファン・ジニ』訳者あとがき(その2)


 幸いにも、わたしはこの北と南の『ファン・ジニ』を翻訳する機会を得た(同タイトル、同一訳者名となると紛らわしいため、本書では筆名を使用した)。そのふたつの作品を読み比べてみることも、なかなか興味深い。両作品から、黄真伊の印象的な独白を抜き出してみよう。

最高になりたい。何を学ぶかよりも、学ぶこと自体が目的でした。限界をひとつずつ越えていくときの喜び。これまで見えなかったものを見つけたときの胸の高鳴り。(中略)何人かの童妓たちといっしょに、歌や舞、楽器を学びましたが、他の子のことはひとつも目に入りませんでした。
――キム・タクファン『ファン・ジニ』(早川書房、拙訳)上巻、一〇四ページ

仮に愛というものが本当にあるとしても、産神の目から見たら、それは子どもを作るためのひとつの過程にすぎません。(中略)ところが、わたしも考え方を変えなくてはならないようです。この世の中には嘘偽りのない、本物の愛があるばかりでなく、その愛こそは、このうえなく美しく神秘的なものだと。
――ホン・ソクチュン『ファン・ジニ』(朝日新聞出版、拙訳)中巻、二一〇ページ

 つまり、一言でいえば、キムの描く黄真伊は“完全な人間”を目指して学びに没頭する一方、ホンの描く黄真伊は自立した女と男による真実の愛を追い求める自立した女性なのだ。そのため、黄真伊と親交があったとされる儒者・徐敬徳(ソ・ギョンドク)も、前者では黄真伊とともに真理を追究する一生の師として、後者では“愛の旅人”たる黄真伊の挑戦を受けて立つ存在として描かれている。もっとも、黄真伊の生きた時代は、学問も、真実の愛も、女性にとって手に入れることは困難だったに違いない。両作品の『ファン・ジニ』のいずれもが感動を呼ぶのは、その困難に立ち向かう自由な人間の姿を描いているからだ。

(その3につづく http://blogs.yahoo.co.jp/ynz98ynz/44021028.html


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映画原作『ファン・ジニ』訳者あとがき(その1)


 黄真伊(ファン・ジニ)は十六世紀前半の朝鮮、つまり人気ドラマ『チャングムの誓い』に登場する“王様”中宗(チュンジョン)(李朝第十一代王、在位一五〇六〜一五四四)と同時代を生きた女性である。だが、生没年など詳しい経歴は明らかではない。というのも、彼女は身分差別・性差別の激しかった李朝時代においても、最もさげすまれていた妓生(キーセン)だったからだ。

 妓生とは、歌や舞、詩作などで酒席に興を添えるとともに、性売買に携わっていた女性たちだ。彼女たちは幼いうちから芸事、時調(シジョ、朝鮮固有の定型詩)、礼節などを学び、十五歳になると本格的な妓生の仕事に従事した。だが、その盛りは短く、二十歳半ばですでに「老妓」として扱われたという。

 賤民として、はかない人生を送った妓生が歴史に名を残すことはほとんどなかったが、黄真伊は例外的に、彼女自身が書いたいくつかの漢詩や時調ととともに、『松都紀異(ソンドギイ)』(李徳?迩)、『惺翁識小録(ソンオンジソロク)』(許?勣)、『於于野談(オウヤダム)』(柳夢寅)など、両班(リャンバン)たちが書き残した様々な“伝説”にその面影が伝えられている。本書に描かれる黄真伊の“男性遍歴”も、こうした書物に材を取ったものだ。

 それらの記録に見る黄真伊は、「容貌と才覚がずば抜けており、歌も絶唱だった。人々は彼女を仙女と呼んだ」(『松都紀異』)といい、性格については「気概があり、物事にこだわらず、男のようだった」(『惺翁識小録』)、「品性高潔で、派手な装いは好まず、官府の酒席でも髪を梳(す)いて顔を洗うだけで、服も着替えずに出ていった」(『松都紀異』)とあるから、当時から豪快で破格な人物と見られていたことは確かだろう。

 このように、古くから黄真伊は朝鮮の人々を魅了してやまず、これまでに植民地期の李泰俊(イテジュン)(一九三六年)をはじめとして、多くの作家が彼女を主人公とする小説を著してきた。二〇〇二年には大韓民国の作家キム・タクファン(金琸桓)と朝鮮民主主義人民共和国の作家ホン・ソクチュン(洪錫中)が、それぞれに黄真伊の生涯を作品化した。キムの『ファン・ジニ』は〇六年に韓国KBSで「チェオクの剣」で知られるハ・ジウォン主演でドラマ化された(〇八年八月現在、NHK海外ドラマで放映中)。一方、ホンの『ファン・ジニ』は〇四年に韓国でも出版されてベストセラーとなり、北の作家として初めて南の文学賞(萬海文学賞)を受賞した。また〇七年には「秋の童話」のソン・ヘギョ主演で映画化(〇八年九月に日本公開)され、「南北のファン・ジニ競演」として話題になった。 

(その2につづく http://blogs.yahoo.co.jp/ynz98ynz/44020863.html


http://www.amazon.co.jp/dp/4022504676
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