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創作BL小説を書いています。
 普段の外での休日の過ごし方となると、祐樹が全て先導してくれるのが当たり前になってしまっている現状に甘え過ぎてしまっていることに気付いて、それも最優先の「改善要項」だなと頭の中に入れた。
 他人との対人関係を構築しようと決意したものの「他人」のカテゴリーではなく、生涯のパートナーになることを誓ってくれた祐樹との仲が最も重要なのは自明の理で……。
 祐樹は好んでリーダーシップを執る人間だとは分かっていたので必要な点だけは任せることにするのは言うまでもないが、自分自身が出来ることを一つでも多く増やしていかなければと密かに決意をした。
 部屋の構造上、リビングルームが一番ドアにもクローゼットにも近いことも僥倖だった。
 クローゼットをなるべく音のしないように開けると、自動的に明かりが点いて身だしなみの最終チェックのためだろうか、鏡の存在に気付いた。
 紅色に上気した素肌とか、祐樹が先程まで指で輪郭を確かめるように弱くゆうるりと辿っていた胸の尖りの紅さとか紗の布を淫らに押し上げている愛の余韻に染まっているのはまあ良いとして、そういう姿は祐樹にしか見せたくなかったので、カーディガンを素肌から落とす。
 上気した頬などは隠せないものの――水を浴びにバスルームに行くためには寝室を横切らなければならない部屋の仕組みだったの――なるべく平静な表情を繕えば良いだろう。
 ただ、祐樹との愛の行為で紅く染まった身体とか、自分が今どれだけ幸せそうな表情を浮かべているかなどを確認して、素肌が甘く慄いた。
 生まれつき備わったものにさして興味を抱かないと祐樹に愛おしげに指摘されてきたし、自分もその通りだと思っているが「祐樹に愛された」余韻の残る身体全部――頭の中の薔薇色の爆ぜる感触までも――好きになれそうになる。
 しばらく自分の身体を見入ってしまって、祐樹がくれた激しすぎる悦楽を一つ一つ思い出して薔薇色の幸福感の余韻に浸った。
 自分の手技とか――これは努力して培ったものだけに――には自信や矜持は持ち合わせていたものの、祐樹に愛された素肌は理屈なしに愛おしさが募ってしまって、目が離せなかったので。
 紅色の指でこのホテルに着いた時のスーツを身に纏った。
 ドアチャイムでも祐樹が起きてしまうかも知れなかったので、深呼吸を一つしてから部屋の外に出た。
 墜落睡眠と寝覚めの良さが祐樹の得意技なので、成るべくならゆっくりと休息を取って貰いたかった。
 病院内という、ある意味閉ざされた空間では――それ以前に日本各地で更に甚大な被害をもたらした大震災は有ったし、北教授を中心とする救急治療のエキスパート達が現地に赴くことは当然有ったが、選考基準が救急救命室に所属している医師を優先しているのは――自分の医局からも将来有望そうな医師は救急救命室での勤務を、本人の希望を聞いた上で派遣していたが、所属は「心臓外科」のままだったので、候補からは漏れている――医局が異なれば「揚げ足取りとか足の引っ張り合い」が得意な旧弊な教授陣から教授会で問題視されることは分かっていたし。
「ご希望の品をお届けに参りました。これで宜しいですか?」
 顔見知りのスタッフが――多分二人きりの密室で何をしていたのかは察しているだろう――営業用の柔らかな笑顔の仮面を外さないままで、頼んでおいたノートPCを手渡してくれた。
「有難う御座います。お手数をお掛けして申し訳ないです」
 このホテルには――このクラスの宿を仕事で押さえるのだから超一流のビジネスマンに違いない――ハイスペックのPCを完備したビジネスルームが存在するし、そちらに赴いても良かったが、出来るだけ祐樹の傍に居たかったので。
「ご使用の点で不明なことが有りましたらクラブフロアに連絡を戴けたら対応致しますので、お気軽にお声をお掛け下さい」
 平静そうかつ親身な感じで爽やかな口調と笑みがこの場合はとても有り難い。
 そういうホスピタリィも含めてこのホテルは気に入っているのだが。
 祐樹が爆睡中にしておきたいことが有ったので、礼を言ってドアを音が絶対にしないように静かに閉めた。
 ノートPCをネットに繋いで名刺に刷ってあるメールアドレスの受信箱を開く。
 パスワードはサイトとかメールなどに全く異なった文字列を使用しているし全てのパスワードの暗記は――祐樹に心底感心したように褒められたので――得意なのだろう。
 受信箱には「NHKの広川です」という添付ファイル付きの表題が目に飛び込んでくる。
 今日一日でNHKの人とも面識は出来たし名前も憶えているが、見覚えのない固有名詞なだけにカメラマンの名前に違いない。
 真っ先にクリックしてメールの文面――職業がカメラマンだけあって映像はともかく文章は苦手らしかったが――肝心なのは添付ファイルの方なので先程とは異なった意味で震える手で開いた。
 ただ、添付ファイルの画像が祐樹の神憑り的な手技を余すところなく映してくれているかどうかが目下のところ最大の関心事だったので。
 画像を見ると、祐樹の見惚れるしかない手技の様子が再生されていたので安堵の吐息を零してしまった。
 早速アメリカの知る限りでは最も有名な博士に「推薦状」と共に画像を転送する。
 きっとこれだけの――そして完成度の高い手技や克明に撮られた手技をなだけに――アメリカの医療界では旋風を巻き起こすだろう。
 その時が楽しみで仕方がない。










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「男の尻にそんなにみっともなく、粗末なイチモツを勃たせて揺れている様子も爆笑以外の何物でもないですね。空前絶後の変態なのですね。
 普通は役に立たないでしょう。妙齢の美人なら『ツッコミ』も分かりますし、そういう被害は最近では泣き寝入りではなくウチに被害届を出す女性も増加していますし、犯罪ですが、犯行に至る気持ちは、まあ分からなくもないです。それを男に反応するとはね。破天荒な変態ですね、井藤達也」
 森技官の見下したような、さげすむような氷のように冷たい声と汚物――狂気の研修医井藤はまさに医療廃棄物専用の箱、脳外科の岡田看護師が見てしまった犬や猫の無残な姿を井藤が隠したシロモノで、しかも今は祐樹最愛の人を拉致して凶行に及んでいるので当然かもしれないが――見るようにブリザードを思わせる挑発的な口調だった。
 ただ微かに身をよじって祐樹だけを見詰めている最愛の人にも森技官の言葉は当然届いているだろうが、森技官も同じ性的嗜好の持ち主だし、今頃はどこかで待機している恋人の呉先生と「変態」的な行為をしていることは最愛の人も当然知っているので「一般人」に言われるほど心に傷は残らないハズだ。
 ただ、ベッドの上には血の付いたメスが数本転がっていたし大丈夫なのかと胃がドライアイスで包み込まれたような気がした。
 ただ、彼自身のネクタイでどこぞのファッションホテルにでも有るような悪趣味かつ安っぽい天蓋付きベッドの支柱に手を拘束されている最愛の人――白い素肌にメスで切りつけられたと思しき傷口――ざっと診たところそう深い裂傷でもなかったが――が右手を中心に数知れなくあってそこからの出血が止まっていない。
 ただ意識は先程よりもハッキリとしてきたようで、祐樹を一途に見詰めているのが救いだったが。安心させるように僅かに微笑んだら、力なく微笑ってくれたのだけが救いと言えばそうだったが。
 井藤はズボンを下着ごとずり落として勃起した小さなシロモノを曝け出している。
 最愛の人のスーツのジャケットは床に無造作な感じで散らばっていて、ワイシャツはメスで切られたらしくあちらこちらが出血を伴って露出しているという、見ているだけで痛ましい姿だった。
「それに先程は下着ごと下ろした汚いケツを珍妙な格好で振りたくっていて……。見世物としても最高に大笑い出来ましたよ」
 森技官が冷笑的な感じで言葉を重ねると井藤の顔がみるみる内にどす黒く染まっていった。
 スラックスは双丘の部分のみをメスと思しき刃物で丸く切り裂かれて、僅かな出血が痛々しく白い素肌も粟立っている。今は双丘が閉じられているので、それ以上のことは分からなかった。た
 祐樹は一番後ろにいたせいで「その」場面は見ていないが、性行為を強要されていたのだろう。最愛の人にとっては無理強いのその行為というのは初めてのハズで、心の傷が気になって仕方がない。
 彼に非のないことなので最愛の人に対して咎める積もりは毛頭ないし、最悪、最後までされていたところで祐樹自身の気持ちは変わらないものの、彼が受けたであろうショックとか、最悪病気を伝染されている――と言っても井藤自身が病気持ちかどうかは分からないが――ことも有り得る。無力感に打ちひしがれる気持ちと守りきれなかった悔しさのみがこみ上げてきた。
「お前らっ、人の家に勝手に入り込んできてっ!!どこから入ったっ?
 それに逮捕状でも家宅捜索令状でも良いがっそれを持っているのかっ!?」
 井藤達也が森技官の方へとメスを手に取って威嚇するように怒鳴った。
「他人の家?表札は出ていなかったので、誰の家だかは分かりませんよ。どこから、ですか?玄関からに決まっているでしょう。それが常識だと思っていましたが貴方は違うのですか?
 それに、犯罪行為を見かけたら止めるのが義務ですし、それが警察官なら職務上当然のことでしょう。
 な、『相棒』の島田。名前と階級を名乗ってやってくれ」
 森技官が蛙の面に水といった感じで受け流した。「相棒」という意味有り気な言葉を選んだのは、厚労省の官僚なので逮捕権を持っていないことを隠蔽するためだろうが。
「大阪府警所属の島田です。階級は警視正でもちろん銃は持っています、合法的に。
 ああ、『相棒』はうっかり屋でして、銃を所持してはいませんが……」
 その一言で井藤はメスを構えて森技官の方へと突進してきた。島田警視正が交渉役だと最初は決めていたらしいので、森技官に矛先を向けるには上手いセリフだった。
「田中先生、今ですっ」
 森技官が全く動じていない感じで声を掛けてから身構えた。
 祐樹は手にしていたジャケットを持ってベッドまで全速力で駆け寄った。
 ベッドの上に転がっていたメスを取ってネクタイを切り裂いて最愛の人の拘束を手早く解く。
「祐樹……助けに来てくれると……信じていた。こんなことになって……本当に……す」
 「まない」と謝ろうとしたのだろうが、皆まで言わせずジャケットを被せて抱き締めた。
「謝るのはこちらの方です。遅くなってしまって申し訳ないです」
 冷たくなって震える身体を力いっぱい抱き締めた。
「よしっ!確保っ!」
 島田警視正の言葉が遠くで聞こえたような気がして振り返ると、森技官が井藤の身体を――どこをどう押さえているのかは分からなかったが――身動きの取れないようにしていて、島田警視正が手錠を掛けている。
「……怪我は大丈夫ですか?何が有っても私の愛情は揺らぎませんよ」
 言葉を選んでやっと取り返して腕の中に居る確かな温もり――若干体温は下がっていたが――と震える肢体を抱きしめた。
 自宅マンション近くでも抵抗したと聞いているし、今も白い素肌から出血している――止血の必要のなさそうな裂傷ではあったが、一応腕は心臓よりも高く掲げさせている――ので。
「腕……右腕が一番……酷い」
 震える声と肢体が痛々しすぎて、祐樹の身体も心にも激痛が走ったような感じだった。
「右腕ですか?診せて下さい」
 ワイシャツを切り裂かれているので白い素肌と滴る血が見えた。そして大きく震えているしなやかな腕や指が見ていられないほどだったが、傷の具合を確かめた。
「少し切れていますね。肌のみで筋には達していないようですが」
 震え続けているために、祐樹の左手で固定してからじっくりと診た。
「……そうか……良かった……」
 血の気の失った唇が戦慄くような言葉を紡いだ。
「井藤達也っ!拉致逮捕罪で緊急逮捕だっ!と言いたいところだが、確かに逮捕令状は出ていない。しかし、こちらの人『達』がお前に聞きたいことがたくさんあるそうなので、先にそちらからだな」
 島田警視正の言葉に違和感を抱いて振り返ると、何時の間に入って来たのか、祐樹にGPSをくれた麻薬取締官が黒子のように佇んでいた。
「警察じゃないのか?これは不当逮捕だっ!!弁護士に相談してっ」
 井藤の妙に甲高い声が聞こえた。
「逮捕権を所持しているのは警察だけではありません。
 貴方のポケットから出てきたこれは何でしょうね?」
 森技官が小さなビニール袋に入った白い粉――まるで病院の飲み薬のようなモノだったが――をこれ見よがしに掲げた。
「知らないっ!何だよっ!これは」
 森技官が祐樹にのみ分かるサインを視線に載せて送ってきた。
「彼だって司法捜査員です。しかも所轄といった縄張りもない、ね。
 それに貴方のことを尋問したがっている人間がたくさん居ます。警察だけで済むと思っていたのですか?おめでたい思考法ですが、財務官僚や税務署署長、その後に警察ですね。
 裁判官を叩き起こして逮捕令状を取るのはその後の話になります。
 その前に、我々が誰にも邪魔をされない場所でじっくりと尋問致しますので、心の準備をなさった方が宜しいかと。
 特に私の『尋問』はある意味定評が有りますので、心の準備をなされた方が宜しいかと」
 名前も知らされていない麻薬取締官が井藤の身柄を拘束しているのを横目で見て森技官が相変わらず氷点の口調で告げている。
「で、香川教授は病院行きを希望されますか?それとも自宅にお戻りになられますか?」
 打って変った優しげで慮る口調で最愛の人を気遣わしげに見つめてきた。
「田中先生が付いていらっしゃるのですから、どちらでも構いませんよ?」
 震える肢体を抱き締め続けている祐樹にも「心配するな!後のことは任せろ」といった感じの目配せを送ってきた。










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季節の変わり目のせいか、体調が思わしくなくて更新がままならないことをお許し下さい。今夜の更新分は最悪一話だけになります。




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「包帯はきつくないか?」
 処置を終えて祐樹の目を確かめるように見た。経過は順調そうで一安心だったが、祐樹の目は――断ったもののバスタブを出てからも身体を拭ってくれたり、髪をドライヤーで乾かしてくれたりしてくれていたので――かなり眠そうだったが。
「ちょうど良い感じですね。
 それにそのカーディガンを艶やかな素肌に羽織って下さっているので視線はそちらに釘づけになりますし、何だか医療行為のハズが異なったサービスを受けているような気分にさえなりますよ。この上もない贅沢な空間に相応しい装いだと思います」
 恥ずかしいことは恥ずかしかったが、何よりも祐樹の目を愉しませることが出来て嬉しさの方が勝った。シックな感じで纏められたリビングルームは束の間の愛の巣に相応しかったし。
 祐樹が指を深くまで絡めた繋いだ手を恭しく持ち上げて指先に口づけを落としてくれた。
「ベッドに行こう」
 他意なく言った積もりだったが、祐樹は悪戯っ子めいた笑いを唇に浮かべて、眼差しは眠気のせいだろうがいつもよりもあどけない感じなのが逆に新鮮だった。
「別のお誘いだったらもっと嬉しいのですが……」
 笑みで弛んだ唇に触れるだけのキスをして歩み出そうとしたら祐樹の指が胸の尖りを撫でた。
「あっ……」
 ただでさえ過敏になっている場所なだけに身じろいでしまう。胸のチェーンが微かに揺れて涼しげな音を立てた。
「そういうことを……されてしまうと……唇でもサービスをしたく……なってしまうので」
 バスローブ姿の祐樹の脚の間に紅色に染まった指を入れて熱い素肌に触れた。ついでにやや乾いた唇を舌で湿らせる。
「しても良いなら……続けるが?」
 久米先生の青年の妄想だとかいう「入浴介助」サービスについては具体的に良く分からなかった部分も残ったが、唇や咽喉で行う愛の行為については祐樹が褒めてくれるので上手いのだろう、祐樹の贔屓目かも知れないが。
「聡もお言葉を選ぶのが上手くなりましたね。お手上げです。
 ただ、ベッドの中では触れても構いませんか?傷の治りが早いような気も致しますので。
 愛する聡の極上の胸の尖りには、私にとって最高の癒しになります。何時もよりも更に艶やかに慎ましやかに煌めいている場所ですから」
 そう断言されると断りきれなくなってしまう。
「弱い力なら大丈夫だろうが……。先程のような力だと責任は取れないな……。花園の奥は充分祐樹で潤ったので満たされているが、咽喉の方は乾いているので……」
 直に握った祐樹の熱い塊を意味深に動かした。
「聡の薔薇色の長くて細い指だけで逝ってしまいそうになりますけれども、ね」
 少し育ってきた祐樹の熱に唇を当てたい気持ちと慌てて指を外したい気持ちがせめぎ合ったが、祐樹はそれでなくとも疲れて眠そうなのでこのままベッド「ルーム」――と言った方が良かったと改めて反省をしてしまう――に行った方が良いと判断した。
「祐樹が眠るまでは傍に居るので……」
 祐樹の墜落睡眠型と異なって自分は割と時間をかけないと眠れないタイプだったし、午後遅くに眠るという習慣もなかったので良くても微睡む程度だろう。
「約束ですよ。聡の愛の交歓の余韻を色濃く残した甘く薫るしなやかな肢体も大好きなのですから……」
 手を深く絡めたまま耳元で熱く囁かれて寝室へと移動した。
「手の込んだ料理も確かに美味だが、あの素朴な味のするカレーも美味しかったな」
 スプリングがちょうど良いベッドに横たわって他愛のない話をした。
 「おかず」がどうのと祐樹が意味不明のことを言っていたので、この際だから聞いておこうかという気になった。
 自分は確かに恵まれたとは言えない生育歴を持っていたし、もともと他人には――少なくとも健康な体を持つ人に――これといって興味を抱いたことがなかったものの、祐樹と付き合い始めてから徐々に変わってきた気がする。しかし野口陸士ような更に恵まれない人間がこの世に存在することは――テレビなどのメディアでは知っていたものの――今日初めて知ったのでつい気になってしまったのも事実だった。
 胸の尖りを――嬉しいことに――焼き餅で強く触れられることは覚悟の上の発言で、白い紗を押し上げている場所に祐樹の指がルビー色の悦楽をもたらしてくれる甘く淡い期待感と、平静を装う心の準備はしていたのだが祐樹は健やかな寝息を立てていた。
 祐樹の寝顔しかマジマジと見たことはない――病院には患者さんは大勢居るが、回診の時に就寝中の方はいらっしゃらなかったし、手術の時に麻酔のせいで眠っている患者さんの顔を見るような余裕も皆無だ――が、寝ている時にも凛とした男らしい端整な顔とかつい唇で確かめたくなる意外に柔らかい唇もしっかりと閉じられているのを惚れ惚れと見詰めた後に触れるだけのキスをしてそっとベッドから下りた。
 リビングルームに足音をさせないように細心の注意を払って移動して中華レストランとクラブラウンジのスタッフに電話を掛けた。
 扉は閉めていたし祐樹が熟睡しているので大丈夫だろうが、心持ち声を落としての通話だった。オーダーして受話器を置いた瞬間に、マズいと思って慌てて辺りを見回した。











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 森技官は勝手知ったる――そんなワケは絶対ないが――自分の家の門を開けるような気軽な感じで門を開けた。
 先程までの焦った様子は微塵もなくて――どうやら本当に「考え」とやらがあるようだった――そして入るように眼差しで促してきたので祐樹も後に続くことにした。
 表札は掛かってなかったが、豪壮な感じの門扉には「セ○ム」のステッカーが貼ってあった。昔は犬を飼っていなくても防犯用に「猛犬注意」の札だけを張りぼてのように使ったと、入院中だった元患者さんから聞いた記憶があったが井藤の場合は本当に防犯会社と契約を結んでいそうだ。開ければアラームが契約している事務所へと異常を知らせて警備員が駆け付けるシステムなのは知識としては知っている。どうする積もりなのだろうか。
 島田警視正も無言で周りを見回しながら祐樹の後に続いた。ただ逮捕状などを持っていない場合、不法侵入者にならないだろうかと素人ながら心配してしまうが――森技官はともかくとして島田警視正まで付いて来ているということは――大丈夫なのだろう。島田警視正は最愛の彼と一面識もないハズで、自身の命と引き換えにしても良いほど愛している祐樹や、割と最愛の人のことを気に入っている森技官も――そうでなければ麻薬不法所持のでっち上げという、露見すれば悪名高い厚労省の悪評がまた一つ増えるわけで――それは避けたい事態に違いない。何といっても省で初めての「独身の事務次官」の座を狙っているし、多分森技官なら叶えられるような気がするので、ここで警備会社のガードマンに捕まるようなバカな真似はしないだろう。
 玉砂利と石が料亭のような感じを醸し出す庭の一隅にかなり広い駐車スペースがあり、シルバーメタリックのベンツAMG――ナンバープレートも柏木先生経由と北教授が証言したのと同じ数字だった――を森技官と島田警視正も視線で確かめている。他に車は停まっていなかった。
「田中先生は『善意の第三者』として振る舞って下さい。『偶然』ここに来合わせたということでお願いします」
 そんな都合の良い偶然があるわけはないと思いつつもこうなったら乗りかかった船状態だ。本当なら――というかドラマの再放送でしか観たことはないが――こういう場合、違いは祐樹にもイマイチ分かっていないが警察のSITとかSATなどのそういう特殊な訓練を受けた人達に任せるのが「普通」なのではないかと素人ながら考えてしまうが、森技官の単独行動ではなくて島田警視正――少なくとも警察官僚なのだからその道のプロに違いない――まで了承済みのことならまず間違いはないだろう、多分。
 玄関の扉はどうするのだろう?と背中に冷や汗を流しながらなるべく音を立てずに森技官の後に続いた。
「分かりました……。もう全てお任せ致します」
 ここまで来たからには森技官の判断に従う他はなかったし、島田警視正とは打ち合わせ済みだろうから大丈夫だろう。
 玄関も森技官が事もなげに開けた。二人の間では想定内の出来事なのだろうが、祐樹はわけも分からず付いていくしかない。
 何故こんなに無防備なのかと逆に勘ぐってしまいそうになるが、もう腹を括るしかなかった。あの粘着質の狂気の研修医井藤のことだからもっと厳重なのかと思っていたし、井藤の実家も後ろ暗いことが山ほどあるようなのでセキュリティにはお金を掛けるだろう。
 森技官が靴も脱がずに上がり込んだので、祐樹もそれに倣った。靴を脱ぐスペースで有るハズの三和土に一足の靴もない点が不自然と言えば不自然だったが、一線を越えた狂気の井藤が主導権を握っているハズの家なので何が有ってもおかしくはない。
 家の中には電気も点いておらず、漆黒の闇だったが廊下の広さと物の少なさが幸いして何とか進むことは出来た。
 一筋の光りが漏れている部屋に向かって森技官が音もなく歩み寄って行っているのは分かったので、それに続こうとしたら島田警視正に肩を掴まれて順番を譲ることにした。
 最愛の人の安否が気掛かりで逸る気持ちも抑えきれなかったものの、専門家に任せるのが基本中の基本なので。
 それに島田警視正は――伊達でなければ――武道の経験者らしい身体付きだったし、キャリアと言っても警察官なのだから。
 スマホの灯りが朧に照らす森技官はごく自然かつ冷静な表情の仮面を着けているので祐樹も真似しようとしたが、額にも掌にも汗をかいてしまっているのはどうしようもなかった。森技官はこんな事態にも関わらずスマホを神業的に操作しているのも、何か考えが有るに違いない、と信じたい。
「井藤達也だなっ」
 ドアの前で様子を窺っていた島田警視正と森技官が視線で合図をした後に、島田警視正が大音声で言い放つと扉を開け放った。
「田中先生、良いですか、貴方は香川教授の安全確保のみに専念して下さい。我々が井藤達也の注意を惹きつけますから。分かりましたね?交渉役は私で、犯人を確保するのは島田に任せて下さい」
 ようやくスマホを三つ揃いのスーツのムナポケットに仕舞った森技官に早口で囁かれて頷きを返した。その後部屋の中を一瞥して体中の血の気が引いてしまいそうになるが、意思の力で何とか平静を保とうとした。
「お前っ、それは逆の役目だろうっ」
 島田警視正が森技官に少し慌てた感じで囁いた。
「大学三年の8月27日雀荘『スズメ』の借用書、あれをシュレッダーにかける」
 森技官の一声で島田警視正が半歩下がった。
「井藤達也、良い恰好ですね。
 悪趣味では、私も人のことをとやかく言える立場ではありませんが、貴方の嗜好やその無様で滑稽な様子は可笑しくて大笑いしてしまいそうです」
 森技官は明らかに普段と異なる話し方をしているものの、井藤達也は分かるワケもない。
 そして森技官の辛辣かつ容赦のない口調が事態の切実さを告げている。
 ただ、島田警視正が言うよりも、森技官が話した方が最愛の彼には事情はおぼろげながらも分かってくれそうだ。何しろ島田警視正とベッドの上で無残な姿を晒してしまっている最愛の人とは面識すらない状態なので。
 それにそんなことを思ったのはほんの刹那で、ベッドの上の惨状を見て背中に冷たい汗を滴っているのを自覚しつつ平静な表情を保つのが精一杯だった。
 それに井藤の粘ついた視線は血の色のような赤さで祐樹だけを見ていた。ベッドの最愛の人も祐樹に気付いたらしく一瞬仄かな笑みを浮かべたような気がしたが祐樹の希望的な主観が混じっていたかも知れない。
「おい、森、勝算は有るのか?なかとではすまんぞ」
 冷静そうな島田警視正の表情とは裏腹に九州だか四国だかの訛りが濃くなっているのは内心の動揺の現れだろう。
「オレに任せた方が最も良い。お前は井藤達也を狙え。
 田中先生、貴方の役割はお分かりですね?」
 頷きのみを返して、祐樹はスーツのジャケットを脱ぐことにした。
「井藤達也、そのうすらみっともない、情けないシロモノを選りにも選って男ばかりに晒すとは悪趣味過ぎて大笑いですよ。
 今時の女子高生でも爆笑して『ちっさい』とか『間抜けな格好』と大笑いするレベルで、貴方の気取っている、マッドサイエンティストの役目すら務まらないでしょう」
 森技官の冷笑が沈黙の中に響き渡った。
 ベッドの上で血の赤さが禍々しく滴っている最愛の人の素肌の白さと無残にもメスで切られたと思しき衣類が散らばっているのを凝然と眺めながら好機を窺うことだけを考えた。
 後のことは一切考えないようにして。
 そうでなければ気が狂いそうになってしまいそうだった。ただ、主寝室と思しき部屋には一切の生活感がなく、何だか別の世界を垣間見ているような、映画の一シーンのような印象を受けることだけが救いと言えば救いだったが。











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「ゆっ……祐樹っ……花園の奥で……弾ける感じが……とても悦いっ」
 背骨を撓らせて祐樹の指に胸の尖りを強く擦りつけながら熱く甘い声を零す。
 真珠の熱い放埓を弾けさせる薔薇色の解放感に祐樹の腰へとより密着させて跳ねる身体を祐樹の快感に強張った肌に縋るように上下させた。
「聡の……花園の……中は……いつも以上に……貪婪に動いて……とても……」
 低く掠れた熱い声と一つに繋がった場所から甘く淫らな協奏曲が聞こえてきて、目くるめく解放感に酔いしれた。
「愛していますよ、永久に」
 胸の尖りを強く摘ままれながらの愛の言葉に薔薇色の閃光が脳に大きな花火を描いた。
「ゆ……祐樹……私も愛している……永遠に」
 思うさま真珠の放埓を放った後、弛緩しかけた身体を抱きすくめられて愛の言葉を紡がれるのも自分にとっては最高に幸せな時間だった。
「本当はね、背中も同じように洗って貰う積もりだったのですが、余りの気持ちよさに別のことがしたくなってしまって……」
 熱く乱れたお互いの呼吸と身体の回復を待った後に身体の位置を変えて祐樹の身体に背中を合わせた格好で抱きしめられてバスタブにお湯が溜まるのを待っていた。
「そうなのか?まあ『入浴介助』なのだから……背中を洗うのも当然だろうが。何なら今からでも」
 繋がりを解いた後の甘い時間も大好きだったが、祐樹が望むことなら何だってする積もりだった。
「いえ、今回『は』これで充分です。また今度お願いしますね。
 ルビー色に煌めくココを背中に押し付けられたらそれだけでもう一度花園の中を貫きたくなりますので」
 祐樹の指とチェーンが胸の尖りを軽く弾いた。
「あっ……」
 甘い痺れが気怠い身体を蕩けさせるように乳白色のお湯を弾く。
「シャワーブースで念入りに花園の中まで綺麗にしたいのですが……少々私も疲れたので……バスタブで、でも構いませんか?」
 強すぎる悦楽に耽ってしまってうっかりしていたが――しかも予想外の三日間の休暇という神様からの黄金の贈り物のようなゆっくりとした時間まで貰っていたし――地震で目が覚めた自分とは異なって祐樹はその前まで救急救命室勤務だったので疲労はけた違いだろう。
「ああ、もちろん。何だったら中華レストランの予約もキャンセルして少し休むか?」
 別に時間に追われているわけでもないし、特に空腹でもなかった。健康管理も仕事の内なので三食はキチンと摂るようにしていたが、今日は栄養がいささか偏っているような気がしないでもなかったものの三回の食事は済ませていた、祐樹と共に。そういう意味では普段の平日よりは恵まれている。朝食こそ必ず一緒に食べてはいるが、その他は別々なことも多かった。「病院一の激務」とウワサされている祐樹はAiセンター長という役職が付いているので管理職扱いな分だけ他の医師以上に多忙を極めている。それでなくとも医師の仕事は残業が300時間を超えるというブラック企業も真っ青な統計が出されている上に長時間労働が当たり前に要求されるのが現状だった。
「いえ、少し仮眠を取れば大丈夫です。プロの手の込んだ料理も食べたいですし、何より聡がお好きな中華レストランですので、これは外せないかと思いまして」
 祐樹の声がほんの少し眠たそうな感じを滲ませている。祐樹と過ごした日々は長いが、救急救命室勤務のせいか、スイッチが脳の中に埋め込まれているように即座に就寝したり目覚めたりする習慣なので祐樹にしては珍しい。
 ただ、病院のメインロビーを臨時に使った救急救命医療という、病院始まって以来の大惨事に対応した――臨機応変は得意とはいえ、慣れない職務の上にあの神憑り的な手技まで披露している――疲労が溜まっているのだろう。
「中華レストランは逃げないし……それに、祐樹が倒れでもした方が大変なので。
 時間を忘れてゆっくり過ごそう。手の込んだ食事という点ではクラブラウンジで提供されるので、そちらで充分だ。クラブラウンジが閉まっても、ルームサービスが有るのでそちらでも構わない」
 祐樹の身体に凭れかかってお湯に肩まで浸かると自分は疲労がどこかへ飛んで行ってしまった感じがしたが、祐樹がそうだとも限らない。時間に追われる海外の観光旅行のパックツアーは経験したこともなかったが、柏木先生から新婚旅行の大変さについては聞いたこともあったので、大体のことは分かる。
「そうですか?まあ、聡がそう仰って下さるなら、目覚めてから決めましょうか。花園の中は綺麗に洗い流すのが愛する者の務めですから、それはキチンと致しますよ。本当は真紅に咲き誇った花園の中とか、真珠の雫を載せて綺麗な色に照り映える様子もじっくり拝見したかったのですが。
 それはまたの機会に致します」
 祐樹の長い指が花園の門を開いてお湯とともに花びらの中へと挿ってきた。
 砂糖よりも甘い疼きと愛されている証の薔薇色の多幸感に包まれる。ただ、自分の花園は割と――といっても祐樹の迸りしか直接受けたことしかないし、その前に経験したどこか祐樹に似ていた日系アメリカ人とは安全な性の交わりだった――耐性があるようで身体の異常を感じたこともなかった。そういう個体差というか体質なのだろう。
 多分祐樹も――過去を咎める積もりは一切ないものの――口に出してはハッキリと言わないが自分がそういう体質だとは分かっているだろう。
 それでも指で綺麗にしてくれる優しさにも薔薇色の時めきを感じた。










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                          こうやま みか拝

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