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創作BL小説を書いています。

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「愛しています、よ。何だかやっと日常に戻って来た気がします
 聡の肢体も普段以上に華麗に咲き誇っていますしね……。今日この部屋に着いて一回目の愛の交歓の時にはどこか違和感を拭えませんでしたが……、やはり精神的なモノだったのでしょうね」
 身体を繋げたままの状態で自分の身体に覆いかぶさった形で汗の雫を混ぜ合わせている祐樹の重みとか確かな熱とかを心地よく受け止めた。
 汗で貼りついた前髪を優しく梳かれて後ろに流されるのもとても気持ちが良かったが。
「私も愛している。
 こういう時間が一番好きだ……。
 激しく求められるのももちろん大好きだが、快楽の激しい暴風雨の後の、凪いだ海のような時間も宝石よりも貴重で、そして愛おしい。
 しばらく……このままで居ても?」
 花園を祐樹に開かれて奥処まで祐樹の確かな存在とか、花園の奥の熱い疼きを沈静化してくれる真珠の熱い迸りを感じたまま夢見心地で微睡みのような世界を二人して味わうのも蜜よりも甘くて、そして紅色の雲の上に居るような気分になって先程の切羽詰った情欲の名残りをそこかしこに残した気怠い身体が薔薇色の雲に包まれているような充足感を心ゆくまで味わいたかった。
「良いですよ。今日は本当に色々ありましたから……。自覚なさっている以上にお疲れだと思います、心身共に、ね。
 ゆっくり休んで下さい。
 何なら一度繋がりを解いて、少し休まれては如何ですか?その方が宜しければそう致しますが?」
 祐樹の慈しむような、そして暖炉の暖かい火のような眼差しを間近で交わしながら祐樹の右手が髪の毛を飽きもせずに梳いてくれる心地よさに身体の奥や精神まで完全に癒されていくような気分になった。
「このままが良い、な。祐樹の愛情で繋ぎ止められている感じが実感出来るし……、それに確かに傍にいることも……」
 祐樹の左手を――腕には障らないように注意は払ったが――そっと掴んで持ち上げて指を付け根まで絡めて握り合った。
 それだけで何だか心が薔薇色の泡に包まれて弾けるような幸福感に自然と唇が笑いの形になってしまう。
「宝石と言えば、紅色とか白い翡翠は気に入って下さいましたか?
 ルビーの尖りは相性が良さそうで安心しましたが、着けてみて違和感などは有りませんか?」
 祐樹の指が前髪から離れて胸元のチェーンを辿るように滑っていく。
「違和感は特にないが……。ただ、これは普段使いもするのだろう?
 擦れると甘くて辛い思いをしそうで怖いような……。
 あっ……」
 祐樹の悪戯な指が琥珀の部分を胸の尖りへと落として、薔薇色の細い電流が背筋を痺れさせていく。
「この色にして本当に良かったと思います。あの店は店頭に出てはいませんが、様々な琥珀の色のコレクションをしているとこのホテルのスタッフに教えて貰っていたのです。
『入浴介助』をして下さるのでしょう?その時に浴室の大きな鏡でご自身でも確かめて戴けると思うのですが……この艶やかな紅色は愛の交歓の後の聡の素肌と同じ色なのです。普段はこちらの石のように純白の雪を彷彿とさせる艶やかさなのですが、ね」
 ごく細いプラチナのチェーンが精緻な煌めきを祐樹の指の動きに合わせて動き、紅色の琥珀が目の前に差し出された。
 祐樹に贈られたダイアモンド――お母様から託されたという点で自分にとっては格別な品だったが――とかルビーやサファイアの指輪もそれぞれ気に入ってはいたが、琥珀の柔らかな印象の煌めきは宝石のような派手さがない点では普段使いに出来そうだが、祐樹が愛の交歓の時の肌の色まで覚えていてくれて、その色を贈ってくれたのも心の底から嬉しかった。
「こんな色、なのか?とても綺麗だ……」
 祐樹の唇が心底可笑しそうな感じに緩められた。
「聡はご自分の魅力に自覚が無さすぎるのも美点の一つですが……。ほら」
 繋いだ左手と紅色の琥珀が比較されるように並べて空中にかざされた。
 確かに左手の指が紅色に染まっていて、ほぼ同じ色に艶めいていた。
「本当だ……。こんな色に染まっているのだな……。余り意識はしていなかったが」
 瞳を大きく開いて感想の言葉を紡ぐと祐樹の唇から小さな笑い声が漏れた。
「ええ、いつもこんな感じの甘い薔薇色に染まって下さっていますよ。この細くて長い指がこんなに艶っぽく染まることを知っているのはこの広い世界に私だけかと思うと無性に嬉しく思います。
 手術用の手袋に覆われた聡の指を画像で初めて見た時から実はずっと惹かれていたのですよね、今思えば。あんな色気のないモノをはめていてもとても鮮烈な印象を受けましたので、こういう薔薇色に煌めくしなやかな指を拝見出来るのは、思えば夢のような気も致しますが」
 手技の冴えは自分でもそれなりの自負は有ったし、アメリカ時代から称賛されて来たので自信がないといえばウソになる。ただ、それでもまだまだ足りていないし、今日の祐樹の神憑り的な手技を見たのでなおさら研鑽に励まなければと密かに決意したものの指の形など誰も褒めてくれないので普通だと思っていた、祐樹に再会するまでは。祐樹の存在は学生時代から知っていたし、同じ学部、同じ専攻だと知って正直驚いたがとても近づく勇気など有るわけもなく――文系学部と異なって人数は限られているのでかなり苦心はしたが――大学の時に祐樹の目には入っていない自信は有った。だから自分にとっては再会だが、祐樹には初対面だった空港への出迎え、それも予定していた人ではなかったいわゆる代打だったのでとても驚いて何を話したのかすら覚えていないという体たらくだった。
 あの時にはまさか祐樹とこんな関係になれるとは思ってもいなかったが、今思えば運命だったような気がする。清水の舞台から飛び降りる覚悟というより、エンパイア―ステートビルから飛び降りる気分でアメリカから戻って来たのは、宿命だったと今なら強く実感出来てとても嬉しかった。
「私も夢のように幸せで……。そしてこの幸せが一生涯続くのかと思うと、嬉しくて仕方がない。今朝は祐樹の無事を確かめないという一念しかなかったが」
 信号すらも停電した状況というのは生まれて初めて経験した椿事であり、あの時の心細さを思うと背筋が震えてしまった。
「聡が表情を消したお顔で救急救命室に駆け込んで来られた時には心の底から安堵しましたよ。
 ああいう表情は二度とさせたくは有りませんが。聡の場合、動揺が頂点に達するとああいうお顔になるのを知っている私にとっては……」
 右手がベッドのシーツを滑って背中を強く強く抱き締めてくれる。背骨が軋むほど強く。
「それはさておき、チェーンが日常生活に及ぼす影響……ですが……」
 多分祐樹はこれ以上震災の時のことを思いだして欲しくないと判断して話題を変えてくれたのだろう、そういう恋人の優しさに目尻から涙の雫が零れた。












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最後まで読んで下さって有難う御座います。
                            こうやま みか拝

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  • おはようございます。
    昨夜、焦燥と疑問と苛立ちを抱えたまま深い眠りに就いたのですが、目が覚めたら薔薇色の幸せが目の前にありました。
    私が惰眠を貪っている間に、鮮やかな更新ありがとうございました!
    ドキドキハラハラの『夏』は私のストライクゾーンど真ん中ですが、やわらかいパステルカラーの『震災編』は『夏』の不安を緩和してくる清涼剤です!
    幸せ色の物語の優しい空気が私の心まで幸せ色に染めてくれて、今日も幸せの中で一日が始まる…♪ヽ(´▽`)/

    あ、決して気が長くないと言われている祐樹先生ですが、ご自分の魅力に自覚がない教授の対応は、短気な人では務まらないかと。
    私の親しい友人にも、自分自身の魅力や才能に無自覚な人が居ますが、そういう人に魅力や才能を自覚させようとしていると、思わず大声を上げてしまいます。
    いや、祐樹先生の苦労が忍ばれますよ(笑)

    [ ルナ ]

    2017/9/4(月) 午前 8:14

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