ここから本文です
創作BL小説を書いています。

書庫全体表示

「何分、そういう経験がないので森技官には失笑モノかも知れないのですが、病院の用地取得から根回しなどを岩松副院長に、しかも弁護士まで差し向けてするものですか?
 あまりにも早いと思うのは、素人考えなのでしょうか?」
 祐樹自身はもちろんのこと、元同級生で実家を継ぐために帰った人間などは居るものの、一から――しかも専門性の高い心臓外科なだけに――総合病院を建てた人間などは聞いたことがなかったのであくまでも推論に過ぎないが。
「ああ、それはそうですよね。オレが精神科とか心療内科を大学病院から独立して建てるのは、まあ銀行からの借金で賄うとはいえ可能です――何せビルの一角とかに余計な機具なども置かずに理論上は可能ですが、心臓外科や脳外科まで擁した総合病院となると建築からして大変な手間がかかりそうです。
 途中で計画が変わるとか有りそうですよね、建築会社とか医療器具のメーカーさんの都合によっても。
 それにオレは独立を考えたこともないので知らないのですが、許可ってどこに取るんだろう?どうせ厚労省か都知事とか、いわゆるお役所絡みだったらそれだけで日にちが読めなくなるし」
 呉先生が感心したように祐樹を、質問口調で森技官の方を見ている。言葉使いが微妙に変わるのもそのせいだった。
「原則は地方自治体の長宛てに認可を出します。即日決定とはいかないようですが、具体的な日数までは……存じません。
 つまり田中先生は既に井藤幸一が病院の建設の目途が付いたので岩松氏に角松弁護士を差し向けたと仰りたいのですよね?
 その目的は一体何でしょう?」
 私立病院のことを今朝長岡先生から聞いた時には反感しか抱かなかったし、それ以上の裏を考えることもなかったが、反社会的勢力が密接に絡んでいる――いや、絡ませた方が森技官や友達の警察官僚が動きやすいとなると可能性を示唆しておいた方が良いだろう、実際にどれほど深く絡んでいるかは神のみぞ知るだが――と聞いてピンと来たことも何個か有ったので。
「反社会的勢力と絡みやすい商売には、井藤のような水商売系ともう一つ中小の建築会社が有ると読んだ覚えがありまして『烏丸弁護士事務所』が企業舎弟の一角なら『そういう』建設会社にもコネを持っている可能性は濃厚ですよね。
 大病院が建てられるかどうかは分からないのですが。ただ、もし建てられたとして、病院には医師しか鍵を持てない特殊な薬剤も当然購入出来ますよね?モルヒネとか塩化カリウムとか。
 Aiセンター長として死亡時画像診断でも厄介なモノの一つに毒物が原因でお亡くなりになった場合というのがあったのをフト思い出しまして。ウチの病院では在庫管理は当然厳重ですが、緩い病院だと横流しとかは可能です」
 森技官の黒い目が一際鋭い光を放った。
「なるほどね、要は暴力団の資金源になるということですか。塩化カリウムは安楽死――日本では認められていませんが――が可能ですし、そういう組織が喜びそうな薬です、確かに」
 呉先生も華奢な手を軽く叩いて賛同の意を表明してから可憐な野の花の風情の唇を開いた。
「違法ですが我々が扱う薬の中にも闇ルート――と言ってもネットなどが主なのですが、眠剤などを高額な値段を付けて売りさばく業者も存在するとか。
 そういう薬剤は厚労省が割と目を光らせているのでどんどん規制の対象にはなっているようですが、病院ならたくさん仕入れることも可能ですよね?
 井藤の自宅も特定出来ていないんだろ?そんな何でもアリの家がたくさん有るんだったら、一家四人分の保険証を提示して偽造のカルテを作ってバンバンそういうお薬を出せば儲かるんじゃ?
 オレオレ詐欺、えっと今は何と言ったかは忘れましたが……あれだって最終的には暴力団の資金源になっているんだろ?
 その規模からすると、随分些細なものではありますが、眠剤だって高く売ろうと思えば売れます。バレれば大変なのですが、武闘派の暴力団は特に行動が規制されているとニュースだかで見ました。だったら新手の資金源として医薬品というのは良い商品になると思います。
 オレ達のような真っ当な医師には忌々しい限りですが……」
 顎に指を当てて何やら考えていた森技官は眉間に深いシワを作っている。
「あいにく都知事にも、都庁の知り合いも居ないのです。これは警察庁から出向している島田に頼むしかないですね。
 そして病院の認可が下りていないかをまず確かめます。もし下りていて――反社会的勢力が絡んでいるとなると建設計画は当然白紙に戻りますし、建設会社がまるっきりの素人だった場合――法律的には『善意の第三者』と言いますが――にはそれなりの賠償金を井藤達也に請求することも可能ですし、反社会的勢力が絡んでいた場合は一網打尽に出来ます。その場合も今までに投入してきた資金は国が没収出来るので井藤達也及び井藤幸一の元には戻りません。
 良い案だと思います。それでは失礼してさっそく島田に知らせて参りますね。
 田中先生ならではの正攻法ですね、私には考え付きませんでした」
 スマホを弄りながら不定愁訴外来のドアを閉めた。
「その後香川教授のご様子は如何ですか?」
 呉先生が新しいコーヒーカップを差し替えてくれた。
「私の様子がおかしいとは感じているようです。都合の悪いことは全て森技官のせいにしているのですが……。お恥ずかしいことに全てを取り繕うことは出来ないので」
 呉先生が野の花のような笑みを零した。
「それは絶対に無理ですよ。田中先生のことを誰よりもご覧になっているのは香川教授でしょうし、一緒に住んでいるのですから、尚更取り繕うのは不可能です。
 オレ、いや私だって同居人の雰囲気というか表情で――まあ、ああいう性格ですので、計略めいたことはしょっちゅうですので、何かの陰謀が進行中だなとか――何となく分かります。ただ、最も重要なのは田中先生の愛情を疑わせるような言動をなさらないことですね。オレごときが言うまでもなくお分かりかと思いますが」
 呉先生の行き届いた配慮が嬉しかった。精神科医という職業柄かも知れないが良く人の性格を観察――という言い方が適切かどうかは専門外なので良く分からないが――しているなと思う。
 祐樹最愛の彼とプライベートでは立場を超えた友人関係なので尚更そういう判断をしたのかも知れないが、最愛の彼が一番気に病む――本来は悩むような要素がどこにもないにも関わらず――のは祐樹の愛情だろう。
「それは充分承知していますし誤解のないように振る舞いたいと思っています。しかし、ご心配有難う御座います」
 頭を深く垂れてお辞儀をした。
 狂気の研修医井藤とそれを取り巻く戸田教授を含む脳外科の医局の駄目さ加減に呆れ果てていたので、それとは対照的に献身的に動いてくれる――しかも的確なアドバイスを貰える――呉先生や森技官には本当に頭が下がる思いだった。
「あのう、院内LANのメールチェックをしたいのでPCを貸して貰っても構いませんか?」
 内田教授とかの、この件を深く憂慮して動いて下さっている人たちからメールが来ているかも知れないので。
「ああ、どうぞ。えと、窓を開けますのでタバコを吸っても良いですよ?」
 呉先生が魔法のように灰皿を取り出してくれた。しかもガラス製の百貨店などで売られているような感じのシロモノだったので驚いた。
 呉先生も森技官も非喫煙者だったし、当然ながら病院内は禁煙だったので。
「え?良いのですか?ただ森技官が戻って来た時に嫌みを言われるので」
 鬼のようにタバコは吸いたい気分だったが、普段のように森技官に嫌がらせをする気には当然なれなかった。
「大丈夫です。こういうのも用意してありますので……」
 呉先生の差し出したシロモノとPCの職員番号とキーワードを入力済のメールフォルダの受信箱に意外な人の名前を見つけたこと二つの驚きに目を瞠ってしまう。











どのバナーが効くかも分からないのですが(泣)貼っておきます。気が向いたらポチッとお願いします!!


 
★★★
本日更新分は、気力と体力が続けば「震災編」も目論んでいますが、途中で力尽きてしまったら生暖かい目で見守って下されば嬉しいです。。。


最後まで読んで下さって有難う御座います。
                            こうやま みか拝

この記事に

  • きゃーっっ!
    昨夜の分のコメ入れてたら、既に今夜の更新が終わってたぁ〜(^。^;)
    更新ありがとうございます!ホントにホントにありがとうございます♪ヽ(´▽`)/

    腐れ雑巾一族が経営する予定の病院なら、麻薬・準麻薬系の薬の横流しは元より、違法手術や臓器売買なんかも視野に入れてそうですよね!
    そんな悪徳病院を作ろうなんて、到底許せるものではありません!
    腐れ雑巾個人だけでなく、一族全てを屠ってしまいなさい!って言いたいです!
    腐れ雑巾を惨殺したいほど嫌っているのは元からですが、腐れ雑巾の父親も腐れ雑巾同様消えてなくなれば良いって思います!
    祐樹先生だって、人の命を助ける医療を、人の命を奪ったり苦しめたりすることに使われるのは我慢ならないと思います!
    ましてや、最愛の人を傷付けるかも知れない奴が、そんなコトをしようとしてる訳ですから。
    でも今の祐樹先生は、そういう倫理とか道徳とかなんて、どうでも良いんでしょうね。
    最愛の教授を守ることしか考えられない。
    頑張れ!祐樹先生!!
    教授を魔の手から守って下さい!


    ところで、意外な人の名を早く教えて下さい…。

    [ ルナ ]

    2017/9/9(土) 午前 0:47

    返信する

顔アイコン

顔アイコン・表示画像の選択

絵文字
×
  • オリジナル
  • SoftBank1
  • SoftBank2
  • SoftBank3
  • SoftBank4
  • docomo1
  • docomo2
  • au1
  • au2
  • au3
  • au4
  • 名前
  • パスワード
  • ブログ

開くトラックバック(0)

本文はここまでですこのページの先頭へ
みんなの更新記事