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創作BL小説を書いています。

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「貴方のそんなにも心の底から嬉しそうに笑う顔を拝見したのは、多分初めてのことですね。
 しかも私の学会招待がその切っ掛けだったという点も最高に嬉しいですよ。
 元々が人の羨む優れた容貌をお持ちなのですから、屈託なく笑顔を弾けさせた時の聡のお顔は大輪の紅色の薔薇も霞むように綺麗です。
 職場ではそんなに笑う機会はないとは思いますが、二人きりの時にはこうして腕の中で笑って戴くととても嬉しいです。
 無垢な魂の喜びの発露のような、羽化した妖精のような綺麗な笑顔『も』惚れ直しました」
 冗談が上手い祐樹の前では割と笑っていたと思うのだが、そんなに笑わないイメージだったのだろうか?「惚れ直した」と聞いて純粋に嬉しかったし、これからは祐樹の前だけでも笑い声を立てようと密かに決意した。祐樹との関係が精神的にも肉体的にも深まるにつれて、自分のこともどこか冷めた目で考えていた過去の自分は徐々にいなくなってしまったが、その方が「人間」としては自然なのだろう。
 森技官の腹心中の腹心の藤宮技官も厚労省に行った時にはアンドロイドそのものといった感じだったが、今回「尊敬する」上司――恋愛感情にも疎い自分でも、森技官に対して彼女がそういう想いを抱いているとは毛頭思えない――の役に立つことが出来た実感から笑顔を見せてくれたので、彼女に倣おうと思った。
 仕事上では笑顔を見せる必要もあまりないので笑わなかったことを今日自覚したので、笑おうと努力しようとしていたが。
「ああ、こんな笑顔で良ければ何時でも見せるが?そんなに笑っていなかったか?」
 祐樹の暖かい眼差しがより熱さを増して自分だけを間近で見詰めてくる。
「はい。今日一日で表情筋はだいぶ進歩なさったなとは思っていましたが、それ以前は――人類の英知を結集しても青い薔薇が出来ないように、貴方の大輪の花のような、そして無邪気な大きな笑い声を聞くことはないと思い込んでいたので、新鮮です」
 青い薔薇は――ネットのニュース記事にもなっていたので自分も画像は見た記憶がある――今の時点で正直「紫色」としか表現出来ない薔薇しか咲かせることは不可能なのだと他人事のように思った記憶がある。
「そうか……。祐樹に出会う前はほとんど笑う機会がなかったので……随分変わったと自覚はしてはいたが、まだまだだったのだな……。
 ただ、本当に祐樹の手技が世界レベルで認められて本当に良かった。
 抱き締めてくれるのはとても嬉しいが、左腕の怪我には障らないのか?」
 祐樹の執刀例――岩松氏の病院で密かに行っているモノは除く――は斉藤病院長がお得意の「権威をみなぎらせた」営業トーク能力の持ち主だけに今後は大学病院で患者さんも集まるだろう。その点は斉藤病院長に任せておけば大丈夫なので――自分には「権威」と人から言われることは有っても、病院長のように「権威のある営業トーク」などそれこそ三代生まれ変わっても無理なような気がする。それに自分に求められているのは営業トークではなく更なる手技の向上とか患者さんやそのご家族への「笑顔」を忘れない手術前説明とか病状説明のみだ。
「大丈夫ですと申し上げたいところですが、傷に当たってしまっているので――ただ、起こして下さった『喜びを告げる天使』が、最高のお知らせを運んで下さったので、今まですっかり痛みを忘れていたのも事実です――抱擁を解く代わりに祝福のキスを下さい」
 斉藤病院長が病院に到着したかどうかは分からないし、仮に大渋滞から抜けて病院に来ても自分――というより実質上は祐樹が――構築したメインロビーの指揮権は北教授の更に専門性の高い組織として出来上がっていることだけは間違いがないので出る幕はそうそうないだろう。
 ただ、教授執務階の惨憺たる現状を考え合わせれば病院長室も無事かどうかは分からない。当然ながら教授執務室に与えられているスペースよりも床面積は広いので、PCは壊れていない可能性は捨てきれないが。それに万事に手抜かりのない斉藤病院長なだけに自分のPCを持ち運びしている可能性も高かった。
 歓喜のキスを交わした後に祐樹の顔色とか怪我の痛みを堪えていないかを注意深く診た。
「そんなに心配なさらなくても大丈夫ですよ。ご存知だとは思いますが、メスでスパッと切った方が――腱断裂などの重大事でない限り――治りが早いですし、その上私の専属の医師は世界的権威を『既に』お持ちの人です。『未だ』権威を構築していない医師の私よりも余程信頼に足ると思いませんか?」
 祐樹の太陽のような輝きを放つ瞳が優しく、そして向上心に溢れた感じで自分に当てられている。
「大切な恋人だからこそ気になるのだが。斉藤病院長の部屋がどういう状況かは分からないが、一応メールを転送しておく」
 ノート型のPCの前の椅子――先程までは祐樹が座って画面を見ていた――に身体を移動させると、バスローブ姿の祐樹は何故か歩みを進めて距離を取っている感じだった。
 手早く文面を考えながらキーボードを叩く。
「どうしてそんなに遠くで立っているのだ?
 文面は祐樹も気になるだろうに」
 素朴な疑問を口にすると今度は祐樹が弾けるような大声で笑った。
 何かで目にした覚えのある――その時は完全に他人事だと思い込んでいた――「家族で笑いあえる幸せな日々」というフレーズが脳裏に弾けて笑いを返した。
「分かりませんか?最愛の人とこうして喜びを分かち合える時が来たことと、生涯を共にしたいと私が唯一思った人が幸せそうに笑っているだけでこんなにも嬉しいのですが、それ以上に、私だけが拝見出来るお姿――しかも今限定で――を堪能したいのです」
 全然分からなくて、目を見開いて祐樹を見た。見交わす眼差しにも「家族」のような温かみを感じて更に幸せ度を高めてくれた。










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季節の変わり目のせいか、体調が思わしくなくて更新がままならないことをお許し下さい。
一日一話は(多分)更新出来そうですが、二話は難しそうです。「夏」更新後二時間を目途に更新が無ければ「力尽きたな」と判断下されば嬉しいです。
他の話を楽しみにして下さっている方には誠に申し訳ないのですが、その点ご容赦下さいませ。



最後まで読んで下さって有難う御座います。
                      こうやま みか拝

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