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創作BL小説を書いています。

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「直ぐにでも……と申し上げたいところなのですが、マンションの状況は不明ですし車がどうなっているのかとか、道路の状況が不明なので……」
 被害甚大だった京都からヘリで移動して普段と変わりない大阪の中心地に来たためにイマイチ実感がなかったが、祐樹の言う通り――今朝未明に地震に見舞われた時にはマンションの様子も断片的にしか分からなかったし、第一停電中だったので祐樹の愛車がどうなっているかなどを確認する余裕はどこにもなかったのも事実だった――それよりも祐樹の安否を確認したくて堪らなかったので。
 京都のことを思うとついつい眉根を寄せてしまう。
「そういう憂い顔も素敵なのも事実ですが、先程のように大輪の花が咲き誇ったような笑顔とか水晶を鳴らしたように涼しげに響く笑い声の方がよりいっそう魅惑的です、よ。
 特に笑い声の頻度が上がりましたよね?もっと聴きたいので……。
 貴方がドライブに拘りさえなければ、JR大阪駅から神戸三宮駅までは二三十分で行ける距離ですし、確か神戸三宮駅から近い場所にそのスタンドが有ったように記憶していますので明日にでも行ってみることは可能です。
 JRの京都と大阪間は不通ですが、大阪と三ノ宮は通常通り運行しているようですので」
 病院のメインロビーに流れていた――流石に音は消してあったが――NHKのニュース映像にもそんなことがテロップとして流れていたなと今更ながら思い出した。その映像を見た時はまるっきり他人事――北教授がアメリカから帰って来るのは政府専用機とはいえ普通の速度だと思っていたので指揮権の委譲がこんなに早くなるとは考えてもいなかった上に神様の贈り物のような休暇が貰えるのも想定していなかったので――だと瞬時に判断してしまっていた。
「神戸でも『ローマの休日』ごっこが出来るなら、車でなくとも構わないのだが……。ただ祐樹の怪我の具合次第だな……」
 NHKの全国版で何度も繰り返し映像が流れても、他人はそれほど気に留めないというか記憶に残らないらしいことに気が付いていた。
 自分では普通のことだと思っていた暗記力も他人よりも優れていると祐樹に以前指摘されたことが有ったが、今日一日のデートを満喫した限りでは他人から名前までを特定されるようなことはなかったし、まだまだ大丈夫なのかも知れない。
 焦げ目の香ばしさを堪能しつつ、楽しい思案を巡らせていると祐樹が極上の笑みを浮かべて見てくれていた。
「怪我は名医が付き切りで診て下さっていますので大丈夫ですよ。
 それに神戸なら海もありますし、大阪とは異なった雰囲気の街なのは貴方も断片的にご存知かと。
 それに、そんなに気に入って下さった『ローマの休日』ごっこを続行する方が二人きりの密室で過ごすよりも良いのかも知れません。
 海と山の近い神戸の街――しかも小さいとはいえ中華街のような若干異国情緒も味わえる――を濃厚なココナッツミルクと大粒のタピオカを片手にそぞろ歩きするのも良いですね。
 貴方がより楽しめる方を選んで下さい」
 部屋で祐樹と二人きりの濃厚な時間を過ごすのも大好きだったものの、今日のデートが余りにも楽しかった――精神的にも、そして肉体的にも――ので魅惑の二択の選択肢のどちらにしようかと楽しく思案するのは純粋に嬉しい。
「二人きりで過ごす熱い夜もとても好きだが、ここから移動距離が二三十分で可能な神戸の街を祐樹と二人でそぞろ歩きするのも魅惑的で……。
 どちらにするかはとても悩んでしまう」
 今までは祐樹の立ててくれたデートプラン――外れが有った試しのない完璧なモノだったが――は一例のみで、こういう二択の選択肢を与えてくれたことは初めてだったし、仕事面で決して優柔不断なタイプではない自分もプライベートな「デート」は戸惑ってしまう、嬉しさの余り。
「神戸もお好きな街でしたよね?
 京都に帰ってしまうと、今度いつ出て来られるか分からない――道路の状況などは、斉藤病院長の公用車が渋滞に嵌って全く着かなかった点からも明らかですし、この混乱はしばらく続くと考えた方が良いでしょうから――このホテルから歩いて直ぐの大阪駅から神戸に移動した方が良いかと思いますよ。
 それに意外と他人には気付かれていないということも分かりましたし、貴方がこのホテルのショップで買って下さったラフな格好だとまず大丈夫でしょう。
 まあ、考えてみれば有名な芸能人でない限り、テレビで流れたからといってそうそう人の記憶には残らないものなのでしょうし。私も患者さんの顔や名前は当然覚えますがテレビで流れる凶悪事件の指名手配犯の顔すら良く覚えていないので……」
 祐樹が口の中が熱くなったのだろう、フルートグラスに長い指を優雅に添えてシャンパンをゆったりとした動作で飲み干している。
 個室ならではの程よい密閉感と、中華料理の醸し出す温かい感じ――フレンチやイタリアンなどではもう少し硬めな雰囲気だし、このホテルで個室があるのはこのお店だけだった――が「非日常」と「お祝い」には相応しかったし、祐樹がごく自然な感じで振ってくれたのが次のデートの約束という「神様からのご褒美」の休日の極上の使い方だった。
 ただ、最後の喩えが面白くてつい笑い声を上げてしまった。
「ひどいな……。私達は別に凶悪事件を起こした容疑で追われているわけではないのに……」
 瞳にお互いだけを写して笑いあえる歓びに魂の底から笑い声が出てくるようだった。










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◇◇◇
都合により、一日二話しか更新出来ないーーもしくは全く更新出来ないかもーーことをお詫びすると共に、ご理解とご寛恕をお願いいたします。


最後まで読んで下さいまして有難う御座います。
               こうやま みか拝

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