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創作BL小説を書いています。

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「40代・50代のメンズナースにとって『若い』という点だけで、教授のように見目麗しくなくとも充分に魅力的な餌食……もとい、虐待……いや、矯正の対象になり得るんですよ。
 それに比較するのも勿体ない話なのですが、教授の性格上『そういう暴力』に対してもじっと耐え忍ぶタイプでしょうけれどもアイツは大袈裟なほど反応する――これは同居人が実際確かめたことでも有ります――ので、嗜虐心の有る人間にとっては後者の方が喜ばれる傾向にあります。教授の場合恵まれた容姿の持ち主ですが、嗜虐心の食指にはなりにくいのです。実際、同居人がそうでした――何を言ったのかまでは具体的に知りませんが――二人きりになった時に反応を確かめたようですね」
 そう言えば、森技官達とあの忌まわしい屋敷に踏み込んだ時もアイツは口で刃向って来たな……と思い出す。ああいう「生意気」な反応の方が確かに虐め甲斐は有りそうで――祐樹にとっては蛇蝎以下のごとくで、関わり合いになりたくない人間なので、目の前から完全に消えてくれればそれで良かったし、もともとイジメを楽しむ趣味は持ち合わせていない――森技官の指摘もあながち間違ってはいなさそうだ。
 祐樹の手を縋るように掴んで眠っている最愛の人がこれ以上の悪夢を見ないように心の底から祈りながら寝顔を見下ろしつつ、森技官と二人きりで会ったのは一度きりだと聞いたことを思い出す。
 祐樹が幹事を務めた医局の慰安旅行先の旅館に同じ日程で厚労省様御一行も宿泊予定――今回のことでは森技官とか麻薬取締官の手を煩わしてしまって感謝しかないものの、病院関係者、特に医師やそれ以上のポジションの人間に取って厚労省は憎悪の対象でしかなく、普段は上司に敬意を払って「温和さ」の仮面を被っているものの――黒木准教授などは仮面ではなく「素の状態」が穏やかな人格だろうが――外科医はそもそも短気とか喧嘩上等のメンタリティの人間にこそ向いている職業なので、積年の恨みの対象である厚労省御一行様と最悪のバッティングをしてしまうと何を仕出かすか祐樹ですら見当もつかない大惨事に発展しかねないし、最愛の人の同じ判断を下したので森技官の元に単独で交渉に向かったと聞いている。
 まあ、祐樹が同席したら――普段の関係性が悪すぎたので――森技官の心証を更に悪化させるだけなのは流石の彼でも分かったらしく、単独で赴いてくれたわけだが一言一句何を言ったのかまでは聞いていない。驚異の記憶力を誇る彼なので、聞いたら再現してくれるだろうが、そこまで根掘り葉掘り聞く積もりもなかった。ただ、交渉の途中で――最愛の人はある意味鈍いというか世間知らずな一面も持ち合わせている――森技官が「悪戯心」から「嗜虐心」を匂わせたとしても不思議ではなかったし、それに対して「真面目かつ平静に」返した最愛の人を観察して森技官のその手の趣味を満足させなかった――満足されたら最愛の人が困った事態に追い込まれるので、満足させない方が正解だっただろうが――という言葉のやり取りが有ったに違いないが。
 それに最愛の人――絶対にそんな目には遭わせたくないが――は確かに呉先生の言う通り声に出して「止めろ」などと言うタイプでもない。何をされても――実際何を言って良いのか分からないという不器用さの持ち主だが――黙っているに違いない。
「ただ、弁護士とか、家族に訴えてその某病院相手に訴訟を起こすとか退院してしまうというケースになりかねませんか?」
 弁護士を呼ぶというのはアイツの常套手段のようだし、反社会的勢力とも繋がりの深い弁護士事務所がバックについていることは調査済だった。
「ああ、それは有り得ませんね。
 隠し口座の在り処――父親の井藤幸一や母親の名義も含めて――財務省や税務署が動いていますから口座の凍結は月曜日の朝イチ、いや外国の銀行も多数有るのでそっちはもう通達済みでしょう。
 そして烏丸弁護士事務所及び角松弁護士は弁護士会――これに所属していないと弁護士業務は出来ないらしいです――から除名処分が下るのも時間の問題かと。反社会的勢力を社会から排除しようという国の取り組みが功を奏した結果だと思いますが、アイツは未だ正式に逮捕されていない――本来ならば救急救命室の北教授の被害届が出た段階で警察は動きますが、同居人が友人を使って止めているようなので、弁護士は介入出来ません。
 警察に逮捕されれば弁護士を呼ぶ権利は誰にでもありますが、その前段階なので……警察に身柄を移された時にはもう弁護士事務所の処分は決定されているでしょう。だから対応する弁護士すら居ないという状態になります。
 刑事裁判にも当然弁護人は付きますが、その時点ではアイツの父親の資産は凍結されているので、国選弁護人しか無理でしょう」
 森技官の「本気の怒り」がヒシヒシと伝わってくるような迅速かつ容赦ない手の打ち方に少しは溜飲が下がる思いだった。
 杉田弁護士に聞いた覚えがあるが、国選弁護人とは弁護士が弁護士会に所属している弁護士がボランティアという綺麗言がタテマエで、本音は「必要最低限の労力しかしたくない」だった。
 まあ、義理で引き受けた強制的なボランティアの訴訟沙汰と、実際に高額の報酬につられて臨む訴訟では弁護士の先生も生活とか事務所の運営費が掛かっているのだから対応が異なるのも当たり前なのだろうが。
「それならそれで結構です。某病院――いつアイツが送られるかは分からないのですが――にも森技官が手を回して下さるのでしょう?」
 精神病院の内部事情は、祐樹も医療雑誌とか医師しか閲覧出来ないサイトでしか知らないが、虐待がまかり通っている「閉じられた世界」なようで、今までは完全な他人事だったが、この際アイツがサディストなメンズナース達の毒牙に掛かっても自業自得だろう。
 祐樹最愛の人はそこまで望まないかも知れないが、青褪めた顔で深い眠りについている最愛の人の味わった恐怖とか、守りきれなかった負い目から砕けた魂の欠片が心に突き刺さって激痛を訴えている今の祐樹にとってはアイツの将来が真っ黒な闇で塗りつぶされることを祈らずにはいられない気分だった。
「それはお約束しますとのことでしたよ。
 実際これらの薬剤一式はその某病院――具体名は敢えて伏せますが――にオーダーしたら即座にそこの職員が車で持って来て下さったんです。
 宅○便とかを使うのかと思っていたのですが、同居人に睨まれていると病院長も充分ご存知なので、特別な配慮をこうむりまして。
 まあ、虐待行為も多分止むでしょうが、アイツにその分矛先が向くでしょう。日頃の欲求不満のはけ口として尚更のコト……。
 同居人も『万が一公になった時』には言質を取られない程度の発言しかしていないでしょうし、その点は御安心下さい」
 専門外の祐樹は全く知らない精神科の内部事情ではあるものの、多分その病院は精神科医の中ではある意味「有名」な病院なのだろう。専門分野に特化した大学病院では他の科の動向などはウワサとしてしか入って来ないし、ましてや一民間病院のことなど全く知らないものの、精神科では「ブラックな病院」としてリストアップされているのかも知れない。
 研修医時代のコンビニでバイトした方が割のいい収入かも……と思ってしまうほどの薄給の綱渡り生活だった祐樹だが、実際民間病院にバイトに行く医師も多かった。当然、専門の科を選んでバイト先を決めるものだが、精神科で、その「某病院」――正式名称は聞かない方が良いのだろう――に行った人間も居たのかもしれないし。
 呉先生が精神科の真殿教授と――積年の恨みも有ったのかもしれないが――電話で激しい攻防戦を繰り広げたのも、その某病院との繋がりを大学病院に知られたくなかったのかも知れない。
 それに森技官は海千山千な斉藤病院長すら「良い人」という評価を貰っているという実績も相俟って全然心配はしていないが。
 未遂とはいえ、アイツの粗末なシロモノが最愛の人の固く閉ざされた門をこじ開けようとしていたことは事実だった――診断書には書く気にもなれなかったし、実際外傷というほどのモノでもなかったので、書いても何の効果もないのでなおさら――ので、今の祐樹にとっては「目には目を、歯には歯を」のハムラビ法典の精神に法りたい気分だった。
「ゆ……祐樹……」










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◇◇◇
都合により、一日二話しか更新出来ないーーもしくは全く更新出来ないかもーーことをお詫びすると共に、ご理解とご寛恕をお願いいたします。


最後まで読んで下さいまして有難う御座います。
             こうやま みか拝

この記事に

  • こんばんは。更新ありがとうございました。

    サディストな男性看護師には、腕によりをかけて苛めぬいていただきたいと思います!
    本来ならば私自身が赴いて、あの腐れウジ虫を肉体的には足腰立たなくなるまで、精神的にはタヒんだ方がマシと思えるまで折檻したいのですが『綺羅の世界』へは魂しか行けないので…。
    代わりに、腐れウジ虫が寝ている間も安らげないように、明智光秀か大友皇子の亡霊でも呼び出しておきます!

    教授には、お薬が効いて眠っている間だけでも、悪夢ではなく祐樹先生との幸せな夢の中に居て欲しい…(T^T)

    [ ルナ ]

    2017/10/13(金) 午前 0:31

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