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創作BL小説を書いています。

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「それはモノの喩えで……ただ、放映時間の長さからすると、凶悪事件の指名手配の容疑者よりもお茶の間のテレビ画面に流れる頻度は多かったのですが、ね」
 かなり大きな地震だったので、通常番組が差し替えられてNHKでも放映されていたし、祐樹のお母様の話からすると民間の番組でもNHKの後追い放送を流していたらしいのでそれは祐樹の言う通りだろうが、有名な芸能人でもないのであまり記憶に残らないのかも知れない。
 それに「今日」京都の職場に居た人間が大阪や神戸に到着出来るわけはないと普通なら考えるだろうし。
 そもそも森技官がヘリを用意してくれなかったら、北教授が帰国して権限の委譲がなされた後は本来なら自分の医局――その点は黒木准教授に任せてあるので心強い限りだが――に帰るのが一般的だろうし、その他思いつくのは自宅マンションに帰宅して地震で滅茶苦茶になってしまった部屋の片づけをするくらいしか思いつかなかった。
 そう考えると、こんな豪奢かつ快適な場所でサッパリとした甘味の利いた杏仁豆腐とかその他の温かく手の込んだ他人の作ってくれた料理に舌鼓を打つということ自体も奇跡のように尊い時間だったが。
 身も心も祐樹で満たされて、しかも明日は神戸行きという「ローマの休日」ごっこが継続するのかと思うと自然に笑い声がこみ上げてくる。
 映画のどこかの国の王女様は「一日限り」の休日だからこその幸せだっただろうが、自分の場合は「宝石よりも貴重な休日」がまだまだ続くのだと思うと薔薇色の幸せ色で満たされた心がさらに鮮やかな彩りを添えていくような幸せ過ぎる時間だった。
「そろそろ出ましょうか?」
 専用の茶器で淹れた極上の味と香りのウーロン茶――コンビニなどで売っているウーロン茶とはコクまで異なる――を飲み干して満足そうなため息を零しながら祐樹が促した。
「ああ、そうだな……。明日は神戸だし。
 やはりここの中華はとても美味しかった」
 祐樹の勧めてくれたココナッツミルク入りのタピオカにも心を惹かれてしまうが、それはきっと祐樹が一緒に居てくれるからだろう。自分だけでは――もともと甘味は好きだが――通りすがっても多分買って飲もうという気にはならないだろうから。
「自転車は多分調達出来ませんが、海と山の近くですのでゆっくりと散歩するにはちょうど良いでしょう。それに平日の昼間なら外国人観光客の方が多いのできっと知り合いには会わないでしょうし……。
 今日の料理も最高に美味しかったのですが、それはきっと貴方の笑顔とか弾んだ鈴のような笑い声が重大なスパイスになってくれたからという点が大きいでしょうね。
 特に笑い声をあんなにふんだんに聞いたのは初めてのような気がします」
 そうだったか?と過去の言動を振り返ってみて、確かに祐樹に笑顔はたくさん見せていたような気はしたが、しかし笑い声は――祐樹が冗談を言った時には笑っていたが――そんなに立てていなかったことに今更ながらに気付く。
「『百万ドルの夜景』という旅行会社のフレーズは見たことはあるが……。
 私の笑い声はどの程度の値打ちのあるものなのだ、祐樹にとって?」
 今後の参考にしたくて――祐樹以外に殊更振り撒く積りは毛頭なかったが――聞いてみることにした。
 二人の関係を継続する積極的な努力を惜しんではならないような気もしたし。
「値段なんてつけられないほどの価値が有りますね。国宝として教科書とか資料集に載っているような宝物よりも、私にとっては貴方の笑顔の方が貴重です。
 無理やりに浮かべる必要はないのですが……。笑いたい時に花のように華麗に、そして銀の鈴のように清らかで涼しい音色は最高に聞いていて心弾むモノがありますし。
 表情筋も以前とは比べ物にならないほど動かして下さってとても嬉しいですよ。
 素敵な夕食の時間を有難う御座いました」
 平日の夜ということもあってか、奥まった場所に有る個室を出て店内に歩みを進めたが客は三組という少なさだったので祐樹の低く甘く響く自分だけに聞こえる声に背筋が悦びに震えてしまう。祐樹が自分を愛してくれていることは充分承知している積もりだったが、「自分の笑顔と笑い声」が祐樹にとってどれだけ大切なモノなのかを改めて自覚して歓びの泡が先程のシャンパンよりも細かく心を薔薇色に泡立ててくれる。
「祐樹、部屋に帰りたいか?それとももう少しこの天国のような時間と空間を楽しむのが良いか?」
 シャンパンは充分呑んだし、最高に美味しい料理も堪能したものの、何だか甘い蜜のような時間を――激しく愛を身体全体で確かめる行為、しかも今回は祐樹が国際的に認められる第一歩としての「お祝い」としての愛の行為も大好きだったが――もう少しこの重厚感と静謐さが調和するホテルの公共の場所ではあるものの、閉じられた密室のような空間を二人で楽しみたかったのも事実だった。
「そうですね。このホテルの豪奢さと落ち着いた雰囲気は貴方に良く似合うので……。
 ああ、良いことを考えましたよ」
 祐樹が秘密めいた感じで仄かな笑みを浮かべて自分を見下ろしているのも何だか心がアルコールの酔いではない酩酊感で薔薇色に染まっていくような気がした。
 祐樹の言う良いコトというのは一体何だろう?
 祐樹が昼間連れて行ってくれた、全国的なイメージとしての庶民的な「大阪」も珍しかったし充分楽しめたものの、ディナータイム――当然アルコールも入っているハズの時間帯なのに――酔っ払いの喧噪さが全くないこの空間の方が確かに心と身体を癒してくれたので。











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◇◇◇
都合により、一日二話しか更新出来ないーーもしくは全く更新出来ないかもーーことをお詫びすると共に、ご理解とご寛恕をお願いいたします。


最後まで読んで下さいまして有難う御座います。
              こうやま みか拝

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