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創作BL小説を書いています。

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「では、また会える日を心の底からお待ちしています。少しでも早く次の逢瀬が実現することを祈っております」
 紅色に艶めく肢体――ちなみに浴室には運ばなかったものの、素肌の表面は濡れたタオルで丁寧に拭った――をベッドの上に残して部屋の扉を少しだけ開けて廊下に人が居ない科確認してから忍び出た。
「ゆ……祐樹、早く逢いたいので、さよならは言わない」
 背後にその言葉を聞いてそっとドアを閉めた。
 JR京都駅でも流石にこの時間にはタクシーも――昼間は長蛇の列で並んでいるのは知っていた――しばらく待たなければならないようで、タクシー乗り場の最前列に佇んで、今夜の甘く熱い愛の交歓とかいつも以上の煌めきとか感度の良さとか極上の花園の素敵なうねりなどを楽しく思い返して唇だけで笑みを刻んだ。
 午前三時のJR京都駅の様子が普段通りなのか、それともあいにくタクシーが長距離客でも乗せてたまたま出払っているだけなのか判断材料に欠けるので分からないが、ツンと澄んだ深夜の空気も甘い愛の交歓で火照った身体にはむしろ心地よかった。
 ちょうど夜勤から帰宅する時間と同じなので、病院と自宅マンション周辺の様子は祐樹にとって手に取るように分かったが、この辺りにこの時間来たことはないのでひたすらタクシーを待つことにした。
 駅の周辺には(凍死したらどうするのだろう)と思えるサラリーマンの酔っ払いが熟睡中なのと、空き缶だの週刊誌だのを拾っているホームレス風の男性の姿しかなかった。
 タクシーが来ないことも、先程の「ごっこ」遊びを兼ねた愛の交歓の熱く燃えた身体には好都合だったが。
「祐樹……」
 聞き慣れた凛とした声が甘く弾んで背後から掛けられて、夢か幻聴ではないかと思いながら振り返った。
「どうして……」
 最愛の人が愛の行為の余韻を甘く薫らせた肢体にスーツを纏って早足で近付いて来た。
「早く逢いたくて堪らなくなって、部屋に帰って驚かそうかと思ったのだが、ここで出会えて良かった」
 それは全く構わないというか、むしろ大歓迎なのだが身支度をする時間とチェックアウトをする時間が余りにも早すぎたことの方が驚きだった。
「こんなに早く逢えるとはとても嬉しいですよ。
 風邪を引いてしまっては大変です」
 酔って寝ている――ただ駅のごく近くなので暖房が来ているのだろうが――人とホームレス風の人しか周りには居ないので、それを良いことに最愛の人の肩に手を回して祐樹の体温と、そして最愛の人の愛の籠った贈り物で暖かさを分けた。
「他人に見られたら大変だな」
 心配そうな言葉とは裏腹に声は春の陽光のように弾んでいる。
「この時間ですからね……。しかも金曜日なので『酔っていた』で済みそうですよ。それにしても良くこんなに早くチェックアウトが出来ましたね」
 最愛の人は祐樹と同じ毛糸の束に包まれて極上の笑みを浮かべている。
 いくらフロント――ちなみに祐樹が通りすがった時にはマニュアルにでも有るのだろう、書類に目を落とすフリをして挨拶もなかったのは「不倫」とか「密会」の帰りだと判断された結果だろうが――に他の客が居なかったとはいえ早すぎる最愛の人のチェックアウトと身支度だった。
 ただ、甘い愛の交歓の痕――肢体中に散らばった真珠の迸りとか――を隠すためかシトラス系のコロンがいつもよりも濃く薫っていた。
「それは……チェックインの時にクレジットカードを使うと流石に名前と顔が一致してこちらの身元が分かるだろうと事前に判断したので、現金で支払うと告げたら『先払いをお願い致しております、決まりですので』と言われた。だからフロントには先に支払っていたし、大阪のホテルのような鍵ではなくてカードキーだったのも幸いした。あれは時間が来れば自動的に使えなくなるシステムだと雑誌で読んだ。だったらフロントに寄らなくても大丈夫だろうと……」
 チェックインの時は当然祐樹も居合わせなかったのでその経緯も知らなかったが、確かに前髪を下ろすとかなり印象が異なるとはいえ、クレジットカードは当然本名で登録してあるので人の顔と名前を覚えるのも仕事の一つのホテルマンならなおさらのこと身元はバレるような気がする。
「そこまで考えて下さったのですか?まあ、確かに身元はバレない方が良いでしょうね」
 二人きりの部屋で何をしていたのかは客室清掃の人間なら直ぐにピンと来る類いのものだろうし、最近はSNS使用が厳禁になったと聞いてはいるが――「有名人がホテルに来た」のような書き込みが過去に実際あったので――油断は厳禁だった。
「ただ、早く祐樹に逢いたくて逢いたくて……シャワーを浴びる時間も惜しかったし、そしてもしかしたら追いつけるかもと早足で駆けて来たので……」
 健気な言葉と共に艶やかさの混じる声が「二人の秘密」を余すところなく伝えてくれる。
「花園の門から零してしまったのですか……。まあそれはそれで二人だけが知っている秘密っぽくて良いですね。
 ただ、これ以上は零さないようにゆっくりと帰りましょうか?
 帰ったら直ぐにでも浴室に行って洗い流して差し上げます」
 その前に――多分最愛の人が喜んでくれそうな、そしてこの時間にしか出来ない愛の行為を思いついた――二人だけで行うのが勿体ないが、仕方ない行為をしようと心に決めた瞬間空車状態のタクシーが乗り場へと到着した。











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◇◇◇



すみません、リアルで少しバタバタする事態になってしまったので、更新お約束出来ないのが申し訳ないです!!






最後まで読んで下さいまして有難う御座います。

        こうやま みか拝

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