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創作BL小説を書いています。

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「井藤達也は今留置場です。保釈金を積めば、そして良い弁護士を付ければ保釈の可能性が皆無なわけではないのですが、保釈金は両親のも含めて私財を全部税務署に没収――ああ病院側の有能な弁護士がADRの言い値で妥結した損害賠償金は別ですが――されたり、口座凍結の憂き目に遭ったりしているので、そんなお金が有るわけでもなく、もちろん援助してくれるような親戚も友人も居ないので。ま自業自得ですが。
 刑事による取り調べには素直に応じているらしいですが、弁護士会がボランティアで差し向けた国選弁護人は――まあ、実際のところ人権問題とか死刑制度に反対とかの左巻き思想の人間も弁護士には多いのですが――全くやる気もないので形だけの有様のようです。
 心神喪失の線を狙ってくるという当たり前の法廷戦術しかしそうにない感じですね。
 まあ、心神喪失との判決が出ればこちらとしても某精神病院に一生放り込むだけですし、裁判官が心身喪失と認定しなければ『悪質な犯行』ということで懲役七年は確実です。
 実際、模範囚で居れば八掛けで出所出来ますが、その辺りは島田がチェックしてくれていますので『精神科の医師の専門的判断』でこれもまた某病院へ。
 一生壁の中からは出られませんのでご安心下さい。
 某精神病院の件は本来ならば『悪質』な病院として上司に報告すべきなのですが『水心あれば魚心あり』というか、ギブアンドテイクでああいった『世に放つべきではない』人間のみを『矯正』対象にするという条件で存続を許しました。もちろん、一般のというか、善良な『精神疾患』の方に被害が出るようなことがないようにこれからも看視対象にしておきます。
 まあ、あの病院長は――病院にとって一番怖いのが当省の監査ですから――私には頭が上がらないので大丈夫ですが。
 そんな病院長の意を汲んだ『札付き』のメンズナースの『活躍』が見ものです。
 不細工とはいえ、若い男ですからね……。メンズナースも喜んで獲物にしますよ。まあ、今でも精神が崩壊しかかっているのに、逃げ場のない場所で『自業自得』の扱いというか、自分が仕出かしたことをされる立場に立たされるとどういう気持ちになるのかを身を以て体験してもらいましょう」
 あれから何事もなかったかのように卓越した手技とプライベートな時間を過ごす最愛の人には聞かせたくない話題が出ると分かっていたので――本来の業務を放り出してまでアイツの凶行対策に奔走してくれた森技官はその空いた穴を埋めるために激務をこなしていたせいで――直接会うのはマンションに来て「呉先生のベッドの様子」を暴露してくれた時から一ヶ月振りだった。
「本当にご足労とお手間をお掛けしました。森技官の協力がなければ事態は更に深刻なものとなっていたでしょう。
 御礼に四人で『良い人』だと思い込んでいた斉藤病院長が一押しの焼肉屋さんにでも参りませんか?当然支払いは私が責任を持って。
 その店は食材の新鮮さが売りのようです。調理する前に客の前にこれ見よがしに並べられるとかで。一度行ってみたかったのですが、ああいう店は恋人が余り乗り気ではなくてですね、それに大勢で焼き肉を食べた方が楽しいでしょう?」
 淡い笑みながらも口角を上げて喫茶店のテーブルの向こうに座る森技官を挑発的な目で眺めた。
 流石に話し疲れたのか、コップの水を飲んでいた森技官の苦み走った唇から水が零れそうになるのを確かめてから言葉を続けた。
「というプランも有ったのですが、御礼というからにはやはりゲストの意見も尊重しなくてはなりませんし、何かお好みのものとかお店とかは有りませんか?」
 森技官が安心した感じで、しかも先程は動転を隠そうと能面のような端整さだったが、今は活き活きとした感じの笑顔を浮かべている。
「恋人が、教授の手料理は本当に美味しくて堪らなかったと申しておりました。あの手の込んだ料理を毎日食べられるのならマンションにずっと通いたかったとか……。
 ああ、ケガの方はもう傷口も分からないほどになっています。香川教授の縫合術とその後の手当てのお蔭様で。
 そのためにマンションに伺って料理まで振る舞って貰った日々が忘れられないようなので、私も是非教授と田中先生の手料理を賞味したいのですが?」
 普段の食生活は意外にも庶民的なものの、アルマーニのスーツを一分の隙もなく着こなした――しかも良く似合っている――彼なので一流フレンチとかイタリアンの店の奥の席が相応しい佇まいだった。
「そんなので良いのですか?いや、最愛の人の料理は文句なしに美味ですが。ただ『庶民的な』私好みの味付けに近付けようと日々精進してくれているので『お育ちの良い』方のお口に合うかどうかは保証しかねますが……」
 森技官の唇が不敵な感じで吊り上がった。
「大丈夫です。『育ちの良い』人間は『庶民』の味を珍しく感じるのが普通ですので。
 織田信長のエピソードをご存知ですか?京都に来た信長に料理人が京風の料理をまず振る舞って『こんな不味いモノが食べられるか』と激怒させた後に信長の故郷の味を再現した料理を出して満足させたとか。 
 織田信長は地方出身者ですので、そういう『無粋』な言動を取ったのだと考えますが、そしてこちらは千年の都の伝統をお持ちのようですが、私の実家だって二百年の首都としての歴史の積み重ねは伊達ではないです。
 口を合わせますよ。
 豪華かつ使い勝手の良いマンションでの食事会が希望ですね、まあ、無理にとは申しませんが」
 強気な感じの口調だったが、苦み走った端整な容貌には「食べたい」とシールでも貼っている感じの表情を浮かべている。
「私の一存では決めかねますので、恋人と相談してからで構いませんか?」
 祐樹も手伝うとはいえあくまでも料理の主導権を握っているのは最愛の人だったので。
 まあ、嫌だと言い出すような性格ではないのも知ってはいるが、一応先に聞いておく方が無難だろう。
「ところで……」
 森技官の次の言葉には祐樹がコーヒーに噎せる番だった。










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◇◇◇



すみません、リアルで少しバタバタする事態になってしまったので、更新お約束出来ないのが申し訳ないです!!






最後まで読んで下さいまして有難う御座います。

        こうやま みか拝

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