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創作BL小説を書いています。

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「あの……かん……」
 状況判断力は卓越過ぎるし暗記力などはほとんど神憑りのような最愛の人だがアドリブが効かないという点は以前通りで、そういう点も愛情を深化させる一つの要因だったが。
 多分「患」者さんをどういう言葉で言い換えて良いのか分からなくなっているのだろう。
「午後の案件のことで少し。まあ相手が気難しいので骨は折れたモノの無事に終了出来たのは的確過ぎるアドバイスのお蔭だと思ったので」
 勝手に弛む唇からタバコの煙を当てないように気を付けながら。
 普段丁寧語で話しているので、何だか普通の言葉を交わすのも新鮮だった。
 ただ、同じスーツ姿だし年齢差も――最愛の人の方が実際は若く見えることも相俟って――ほぼ同い年程度にしか見えないのでこういう場所では対等の感じで話すほうがスマホを見ながらだったりノルマにでも追われているのか難しい顔をしながらだったりで、セカセカとタバコを吸っている周囲の人の目を欺く効果は高いだろう。
 ただ言葉を必死で紡ごうと――以前の神様がくれた黄金よりも貴重な休暇の時のように英語で話しても良かったのだが、ひたむきな怜悧かつ無垢な瞳の光りが煌めいている最愛の人の眼差しや言葉を覚えたての幼児のようなあどけなさという滅多に見られない恋人の端整な表情に見入ってしまって――ほの紅い唇のぎこちない動きをそれとなく見守っている様子を決め込む。そもそも喫煙スペースなので言葉少ないのも却って目立たないだろうから。
 最愛の人が傍にいるにも関わらずタバコを吸ってしまっているのは、午後の手術の疲労というか心労のせいだろう。正式な大学病院の執刀医として場数を踏んでいる最中の祐樹にとっては、目の前で必死に「適切な言葉選び」に格闘しているだろうと思しき最愛の人が難なくこなしてきた清流の流れのように洗練された手技の数々を思い出してはそのレベルの高さに目の眩むようなギャップを感じていたし――ただ最愛の人も祐樹が想像する以上に過酷な試練を経て今の彼が居るということは頭では分かっているものの――早くああならなければという理想と現実の壁をつきつけられている最中だったので。
 執刀医としての場数を踏めば踏むほど目の前の人の凄さが分かってきて――助手時代も感嘆の思いで見てきたが実際に行うとなると話しはまた別だった――改めて「世界の至宝」レベルの険しさを身に沁みて感じていたので。
「ああ、あのクライアントは、確かに気難しいだろうな……。ただ祐樹なら大丈夫だろうと思ってはいたが。黒木……課長」
 長く細い首が微かに傾けられて、懸命にアイコンタクトで「合っているかどうか」を聞いてくる人は別人のような無垢な煌めきに満ちていたが。
「そう、あの課長は心配性なのでクライアントまで付いて来て下さいました。それはそれで有り難いことで」
 薄紅色の唇によりいっそう笑いの花を瑞々しく咲かせている最愛の人は納得したように頷いた。
「その件は……僭越ながら……。私からも一言言わせて貰ったので、そのせいだろう。
 あの人はとても頼りになる……上司なのだから」
 会社組織をドラマの中でしか知らない最愛の人は言い繕うのがやっとといった有様で、そういう不器用なところも祐樹がさして持ち合わせているとも思えない庇護欲をかきたてる一因だ。ちなみに祐樹は同好の士が集まる場所では会社員と自称していたので、多少の知識は存在した。
「では、祝杯を上げに」
 短くなったタバコを灰皿に丁寧に落とし込んでから最愛の人を促した。
「祐樹は何でも知っているのだな……。惚れ直した」
 34階のまでノンストップのエレベーターに二人きり、しかもシックかつ重厚な室内の雰囲気はキスには打ってつけの場所だったので、若干薄い肩を抱き寄せて刹那の接吻を交わした。勝手知ったるホテルなので案内を断ってカードだけをかざして貰いチェックインのフロアに直通する途中で。
 どうせカメラが隠されているだろうが、この程度のことでは問題にならないだろうし。
「何だか、付き合い始めの時期のことを思い出してしまうな……。こういう場所とか……人の気配のごく近くで愛の行為を交わすのは」
 ほんの少し上気した白い滑らかな肌とか、刹那だからこそ濃厚になった口づけの余韻に紅色の唇が濡れているのも目が眩むほど無垢でいながらどこか濃艶さを隠し持っている、
 こういう最愛の人の瑞々しくてそして真紅の薔薇のような艶やかさを兼ね添えた綺麗な姿に魅入られる。
 東京にも同じホテルがあるし宿泊したことも有ったが、エレベーターの速度はこのホテルの方がかなりゆっくり目に設定されている。
 だからこそこういう半公共の場所でもこうした愛の確かめ合いが可能なのだが。
「それは心の底から嬉しいです。チェックインを済ませて、部屋に入ったら……。いえ先に食事の方が良いですか?この時間だとちょうど夕食の用意がラウンジに出来ているハズですから」
 階数表示をチラリと見た後に紅色の唇に再びキスを落とした。
「祐樹は……どちらが良いのだ?私はどちらでも……」
 多分エレベーターの中のカメラのことを考えているのだろう、完全に二人きりなら背中に縋ってくるキスの深さだったが、唇だけで愛を伝え合う慎ましやかな点は最愛の人らしいといえばそうだろう。
「そういう時、新婚の夫婦の……」
 滑らかな頬が薄紅色に染まっている。何気なく口にしたキーワードだったが、最愛の人の琴線にでも触れたのだろうか。
「『食事が良い?ご飯が良い?それとも私?』と返して下さると嬉しいです。断然一番後ろを熱望していますが……。新婚さんごっこも、た」
 楽しいと思いますよ」と言い終わるよりも早く白桃の紅さに染まった頬と紅く濡れた唇が祐樹の方へとより密着して触れ合う一瞬前に「祐樹が欲しい」とごく小さな声が紅色の唇が切なげに紡がれた。
 了解と告げる代わりに甘く薫る唇と舌を絡め取って強く吸った。










 リアバタに拍車がかかってしまいまして、出来る時にしか更新出来ませんが倒れない程度には頑張りたいと思いますので何卒ご理解頂けますようにお願い致します。
 
【お詫び】
 リアル生活が多忙を極めておりまして、不定期更新になります。
 更新を気長にお待ち下さると幸いです。
 本当に申し訳ありません。




        こうやま みか拝

この記事に

  • おはようございます。更新ありがとうございました。

    なんだか教授の可愛らしさが強調されているような。
    見た目だけじゃなく、愛の表現をなさるときも、かなり年よりも若く見えますよね(笑)
    それも含めて教授の魅力なんだと思います。
    祐樹先生は、そんな教授がいっそう愛しくて仕方ないのかも知れませんが、プライベートの恋人としての教授ではなく医師としての教授は、本当に祐樹先生が医師として高みに上るために欠かせない存在なんだな、と。そんな風に思いました。

    [ ルナ ]

    2018/9/9(日) 午前 5:34

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