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創作BL小説を書いています。

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 教授執務室から直接出られる自分とは異なって、祐樹の場合は医局に一回戻らないとならないし、そうなれば主治医を務める患者さんからの呼び出しとか伝えなければならないことなどの雑用もたくさん抱え込んでいる。
 外の肌を刺す冷気をむしろ心地よく感じながら指定された神社――京都にはよくある名も知られていない小さな境内で、観光客が間違っても来そうにない場所だ――の方へと軽やかな足取りで向かった。
 お弁当は買っていった方が良いのかどうかよく分からなかったが――割と自由に時間が使える教授職のポストに居る自分が買うべきかもしれない。ただ祐樹からのメールには何も書かれていなかったので購入して重なったら大変なのも確かだった。
 千年の都に相応しく――といってもこの神社が何年に建立されたか知らないが――落ち着いた佇まいとか趣深く植えられた落葉樹の葉が全て散ってしまったものの、逆にさっぱりとした風情を漂わせている人の気配の相変わらず感じない境内の定位置に佇んで祐樹が来てくれるのを待った。
 気温は確かに低いものの、祐樹とつかの間のデートが出来るという期待感で全く寒さを感じないのも事実だった。やむを得ない事情――職業柄、患者さんを優先しなければならない場合も多い――でキャンセルされてもこの心の弾みを与えてくれた祐樹には感謝しないとならないなと思いながら鳥居の方をずっと見つめていた。人待ち顔というのはきっとこんな表情だろうと漠然と思いながら。
 小路から乾いた革靴の音がしたかと思うと、黒に近い紺色のコートを纏って凛とした感じの顔がより一層引き立った祐樹の長身が足早に近づいてくる。青いマフラーは出勤時のように結んだりせずに肩から垂らしていて、軽やかな歩みと共にキッパリと冷えた空気に似つかわしい青いマフラーを翻しながら、凛々しく整った顔に極上の笑みを浮かべて近付いて来る。
 カシミアのコートに包まれた腕にコンビニのビニール袋を下げているのも祐樹が醸し出すオーラのせいだろうか、安っぽくは見えないのは惚れた弱みというモノだろうか。
「お待たせしましたか?少し歩きますが……構いませんか?」
 テレビに二人して出たり大型書店でサイン会をしたりしたせいで病院内の暇を持て余した他科の患者さん――歩行許可は出ている人に限られるが――が一目見ようと押しかけてくる事態に拍車をかけているのも事実だった。教授執務階までは被害が及んでいないものの、医局周辺に下りていくと見覚えのない患者さんが多数存在するのも。
 そして医局に居ることが多い祐樹だからこそ――本人は気に病んでいる様子は全くなくてどちらかと言うとそういう人達の裏をかくのを楽しんでいるようだったが――新しい隠れ家を探したのだろうが。
「8分程度早く着いたが、待つのも楽しいので」
 病院が近いとはいえ外なので肩を並べて歩きながらそう言ったら、祐樹の唇がより魅惑的な笑みを浮かべた。
「『今来たばかり』とかの常套句を使わない点が貴方らしいですね……。
 その方がより魅力的ですが。ただ、八分も……ですか?寒くなかったですか?」
 祐樹の空いた手の甲がさり気なく自分の手の甲へと触れる。温かみを分けようとするかのように。
 割と嵩張っているコンビニの袋の中身はこちらからは見えないが、そんな些細なことよりも手の甲から確かに伝わってくる祐樹の愛情のサインを受け取った証しを返そうと手の甲だけでなく指も反らして祐樹の手に沿わせた。
「指が冷たいのは存じておりますが……。風邪をお召しにならないように気を付けて下さいね。体調管理に万全を期されているのも知ってはいますが、愛する者としては気になるので……。ああ、こちらです」
 神社の前の小路よりも細い道を歩いて「差別のない世界を」と大きく書かれた公民館的な建物の裏へと案内される。
「銀杏の木がまだ葉を残しているのだな……。黄色に染まった落ち葉がとても綺麗だ。
 しかし、ここは公民館だろう?昼間は人が来るのでは?」
 祐樹のすることに間違いはないと思ってはいたものの、気になって聞いてみた。
 以前は祐樹との仲がスキャンダラスな感じで露見した場合、即座に病院を辞める決意はしていたものの、状況が激変してしまったので用心するのに越したことはなかった。
「大丈夫です。この公民館は思想的な面で、保守的な地元の人たちからは避けられていて、人が来る気配は皆無です。
 聞いた話しによると、マルクスの思想にかぶれた人が私財を投じて建てた建物らしくて、今は不動産管理会社の人が定期的に見回りに来るだけのようです」
 だから古びた感じで「差別のない世界」とか書かれていたのかと内心納得してしまった。
 そして、京都の人間が――さしたる政治信条を持たない人であっても――保守的だということはこの町育ちの自分にとっては常識だったので。
「なるほど……。祐樹はこういう場所を見つけるのが本当に上手いな……」
 何だかレトロな感じのする――普通の公園に置いてあるモノとはかなり異なるのは多分その『資本論』を読んだ人の私財だからだろうか――ベンチに並んで腰かけた。
「もう少し傍に来て下さい。多分誰も来ないでしょうし、それに万が一誰かが来た場合でも落ち葉の音で分かるので……」
 誰も来ないとはいえ、公共の場所だったし「普通」の距離をおいて座りかけた自分の腰を祐樹の大きな手が掴んで引き寄せてくれた。
 その強さと熱さに酩酊にも似た思いで頬が上気してしまう。
「さてと……。まだ温かいと良いのですが……」
 独特のビニールの音を立てて祐樹が差し出してくれたものに、思わず目を見開いてしまった。
 お弁当だとばかり思っていたので意外過ぎて。ただ、このツンと冷えた空気の中で食べるにはとても相応しいモノではあったが。
 天気予報では初雪――最近の気候は自分が高校時代に学んだモノとは異なっているような気がしてならない――と報じられているのも納得の曇り空の下で、幸福の象徴のような湯気と香りが暖かく立ち昇っているのを見ただけで、何だか胸がいっぱいになるような幸福感に酔いしれてしまいそうだった。










 
【お詫び】
 リアル生活が多忙を極めておりまして、不定期更新になります。
 更新を気長にお待ち下さると幸いです。
 本当に申し訳ありません。




        こうやま みか拝

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