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書置の段
かかる処に、儀平が里の、田代村なる、夫婦の夢に、
儀平、病に、打ち伏しけると、二夜続きて、夢見が悪い、
行きて見ようと、父上様が、急ぎゃ程なく、能行村よ、
来ると其の儘、夢見し事を、語りい出せば、家内の者が、
夢は逆夢、思いの他よ、何ぞ目出度い、事、御座ろうと、
話す側から、糸引く下女が、宵に旦那が、私を呼んで、
わたしゃ今宵は、内緒の事で、金の催促、しに行く程に、
遅くなりたら、帰りはすまい、明日は田代の、父上さまが、
お出であるから、此の状渡せ、家に云うなと、口止めなされ、
お置きなされた、これ此の手紙、立ちて取りだす、本黒竹に、
結び付けたる、上書き見れば、伊呂波尽くしの、書置とある、
家内、驚き、皆、打ち寄りて、封じ押し切り、開いて見れば、
ー書置ー
いまぞ迷いの、浮世と悟る、
ろめいつなぎし、早、甲斐もなく、
はじも恥辱も、命も捨てて、
にしの浄土に、今行くからは、
ほんの親にも、義理ある親も、
へだてする気は、わしゃなけれども、
とがはこの身に、皆、報いくる、
ちさい時から、お二人様に、
りこう者じゃと、褒めそやされて、
ぬしが家督と、おぼされ給い、
るすの時には、なぜ帰らぬと、
をまち下さる、御恩は常に、
わすれ居らねど、つい此の度は、
かくしつつみし、恋現われて、
よわに消え行く、仇し野の露、
たれを怨まん、皆、我が為よ、
れんり結んで、末、華やかに、
そだて上げんと、御苦労あるも、
つらい浮世に、永らえぬ身の、
ねやに渦巻く、涙の渕よ、
なにを云うにも、我が亡き跡で、
らくはさせずに、苦の種蒔くは、
む分別じゃと、おぼそうなれど、
ういも辛いも、つながる御縁、
いん果ずくじゃと、許してたもれ、
のちの世までも、不孝を致し、
お年寄られた、叔父さん方に、
く労掛けます、此の身の果ては、
やみの渚に、身は捨て小船、
まよい迷うて、死にます程に、
けんの地獄は、覚悟のまえよ、
ふ便、加えて、回向を頼む、
ご生大事も、願わぬ身体、
えん魔、羅刹の、呵責に逢うも、
て前作りし、火の車じゃと、
あんじ極めて、居りますなれど、
さきの御世話は、兄さん達や、
きんじょ隣に、又、頼みます、
ゆるし給えよ、今宵の内に、
めい途、旅路に、赴きまする、
みちのほとりに、短冊下げて、
しるす八幡の、北なる麓、
えんを求めて、尋ねておくれ、
ひごろお世話に、成る御方のも、
もうし上げたき、事、多けれど、
せわし紛れの、書き置きなれば、
すい量、くだされ、あらあらかしこ、
読んで、終わりて、一家の、者は、
此れは、うつつか、夢では無いか、
早く、近所に、知らせに行けと、
泣くや叫ぶや、只、一同に、
たとえ方無き、此の場の次第、
能行口説きの、六段目、終わる。
・・・・つつ‘‘く・・・・
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