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能行口説き(第六段)

書置の段
 
かかる処に、儀平が里の、田代村なる、夫婦の夢に、
儀平、病に、打ち伏しけると、二夜続きて、夢見が悪い、
行きて見ようと、父上様が、急ぎゃ程なく、能行村よ、
来ると其の儘、夢見し事を、語りい出せば、家内の者が、
 
夢は逆夢、思いの他よ、何ぞ目出度い、事、御座ろうと、
話す側から、糸引く下女が、宵に旦那が、私を呼んで、
わたしゃ今宵は、内緒の事で、金の催促、しに行く程に、
遅くなりたら、帰りはすまい、明日は田代の、父上さまが、
 
お出であるから、此の状渡せ、家に云うなと、口止めなされ、
お置きなされた、これ此の手紙、立ちて取りだす、本黒竹に、
結び付けたる、上書き見れば、伊呂波尽くしの、書置とある、
家内、驚き、皆、打ち寄りて、封じ押し切り、開いて見れば、
 
ー書置ー
 
いまぞ迷いの、浮世と悟る、
ろめいつなぎし、早、甲斐もなく、
はじも恥辱も、命も捨てて、
にしの浄土に、今行くからは、
 
ほんの親にも、義理ある親も、
へだてする気は、わしゃなけれども、
とがはこの身に、皆、報いくる、
ちさい時から、お二人様に、
 
りこう者じゃと、褒めそやされて、
ぬしが家督と、おぼされ給い、
るすの時には、なぜ帰らぬと、
をまち下さる、御恩は常に、
 
わすれ居らねど、つい此の度は、
かくしつつみし、恋現われて、
よわに消え行く、仇し野の露、
たれを怨まん、皆、我が為よ、
 
れんり結んで、末、華やかに、
そだて上げんと、御苦労あるも、
つらい浮世に、永らえぬ身の、
ねやに渦巻く、涙の渕よ、
 
なにを云うにも、我が亡き跡で、
らくはさせずに、苦の種蒔くは、
む分別じゃと、おぼそうなれど、
ういも辛いも、つながる御縁、
 
いん果ずくじゃと、許してたもれ、
のちの世までも、不孝を致し、
お年寄られた、叔父さん方に、
く労掛けます、此の身の果ては、
 
やみの渚に、身は捨て小船、
まよい迷うて、死にます程に、
けんの地獄は、覚悟のまえよ、
ふ便、加えて、回向を頼む、
 
ご生大事も、願わぬ身体、
えん魔、羅刹の、呵責に逢うも、
て前作りし、火の車じゃと、
あんじ極めて、居りますなれど、
 
さきの御世話は、兄さん達や、
きんじょ隣に、又、頼みます、
ゆるし給えよ、今宵の内に、
めい途、旅路に、赴きまする、
 
みちのほとりに、短冊下げて、
しるす八幡の、北なる麓、
えんを求めて、尋ねておくれ、
ひごろお世話に、成る御方のも、
 
もうし上げたき、事、多けれど、
せわし紛れの、書き置きなれば、
すい量、くだされ、あらあらかしこ、
 
読んで、終わりて、一家の、者は、
此れは、うつつか、夢では無いか、
早く、近所に、知らせに行けと、
泣くや叫ぶや、只、一同に、
 
たとえ方無き、此の場の次第、
 
能行口説きの、六段目、終わる。
・・・・つつ‘‘く・・・・

能行口説き(第五段)

死出の道行の段
 
それはさて置き、儀平は日頃、恋の意趣ある、あの淀助に、
怨み云いたき、心のつのを、妻に折られて、帰りし後は、
早く最後の、身じまいせんと、一家友達、皆それぞれに、
それと知らさず、心のわかれ、人目忍びて、硯をいだし、
 
四十七字を、頭に置いて、いろは尽くしに、書き置く文も、
墨は涙に、ちりぬるをわか、筆の命も、これ限りぞと、
内の人々、心で拝み、御恩忘るる、気は無けれども、
これも前世の、約束ならむ、数の御礼は、口には云えず、
 
胸と心で、封じし文を、庭のかたえに、隠して置いて、
上に青梅の、縦縞ののこ、黒きななこの、帯引きしめて、
腰に差すかは、白銀つくり、名は村正、鍛えしつるぎ、
それが冥途の、案内者ぞと、心置き足、裏から忍び、
 
出ずる儀平が、その年頃も、二十一期を、この世の別れ、
時は、きさらぎ、二十一日の、彼岸中日、待ちもうけたは、
たとえこの世は、縁薄くとも、来世御法の、ご縁も厚く、
願う二人が、蓮華の一座、今ぞ迷いの、雲、晴れたれば、
 
銚子、盃、用意を、致し、急ぐ向こうに、お千代も今日は、
思い設けし、晴れ着を飾り、親の情けの、厚板帯に、
髪も心も、いと尋常に、差したかんざし、櫛、笄、も、
化粧滴る、此の美しさ、都、女郎に、見せたいばかり、
 
此れが此の世に、長らへ居れば、玉の輿にも、乗れ様ものを、
哀れ、十九の、春をも過ぎず、今宵弘誓の、お迎え船に、
遅れまいぞと、心を急ぎ、兼ねて定めし、村、藪蔭に、
待ちし儀平に、逢うより早く、手に手取りつ、暫しが程は、
 
言葉なくなく、涙と涙、此処に長居は、人目も有りと、
縁を結んだ、八幡の宮に、上はお神の、恐れも有れば、
北の麓の、御庭に於いて、心、静かに、最後を遂げん、
いざや来たれと、手を引き連れて、辿る畦道、蛙の声も、
 
忍び行く身は、心に掛かり、我を呼ぶかと、ふりさけ見れば、
五反山田に、雁がねの竿、故郷恋しと、見捨てて、帰る、
右は阿弥陀寺、今成る鐘は、彼岸詣でを、お勧めなさる、
急ぐ左は、八幡の鳥居、二人一緒に、頭を下げて、
 
我ら此の世に、望みは無いが、七重八重なる、お恵み垂れて、
家の栄を、祈らせ給え、願う内にも、せきくる涙、
夜さえ朧の、月代なれば、足を速めて、麓に急ぐ、
 
能行口説きも、五段目終わる。
つつ‘‘く・・・・・
 

能行口説き(第四段)

お千代支度の段
 
お千代つくずく、考え見れば、心中する気に、きわめたからは、
我も最後の、晴れ装束を、仕立て上げんと、心に急ぎ、
母に向かいて、云いける様は、関の伯母さま、文くれました、
江戸で名高い、団十郎が、関に下りて、芝居のさかり、
 
どうぞ貴女の、お供をいたし、早よう見に来い、一緒に来いと、
書いてござんす、これ見給えと、出すは誠の、文では無くて、
かねて儀平が、送りし文を、ちょっと間に合い、当座の機転、
母はもとより、読み書き知らず、誠思うて、会釈をこぼし、
 
関の伯母さま、幸せ者よ、花の御江戸の、団十郎と、
うたう上手を、今、目の前に、御覧有るとは、いと羨まし、
深山住まいの、我々だちは、猿の踊りや、祭文口説き、
是が誠の、春なぐさみよ、されば今度の、芝居と云うは、
 
又と見られぬ、名人ぞろい、宿の有るこそ、幸いなれば、
わしは留守しょう、こなたは行きて、芝居見物、して来るがいい、
すすめやるのも、子故の迷い、お千代、心でしすましたりと、
日頃たしなむ、糸入り縞を、芝居支度と、偽り云うて、
 
急ぎ縫うのも、最後の晴れ着、母はお千代の、側近くより、
わしは連れ添う、夫に別れ、我が手一つで、そなたを育て、
お機、縫い針習わせおくも、こんな晴れ着を、縫はしゅう為に、
念を入れやれ、細針取りて、旅に着るのは、今度がはじめ、
 
永い逗留、気遣う程に、早よう戻りて、芝居のはなし、
わしに話して、聞かせてくりゃと、云えばお千代は、早たまりかね、
袖にしぐるる、涙の雨よ、顔も上げずに、打ち伏しければ、
母は少しく、気色を損じ、早よう戻れが、気に入らぬかや、
 
親の心を、推量しやれ、今年そなたは、十九じや程に、
どうぞ厄まけ、しやらぬ様に、朝な夕なに、只神頼み、
芝居見せるは、嬉しいけれど、波の上行く、初旅なれば、
親の案じを、汲みてもみやれ、永い逗留、止めたが無理か、
 
何が不足の、其の涙ぞと、聞けばきくほど、骨身にこたえ、
消えも入りたき、心のつらさ、手水使いに、行く振り見せて、
外に駆け出で、正体もなく、母の御影を、只、伏し拝み、
許し給えよ、のう母さまよ、声も惜しまず、さめざめと泣く、
 
母はそれとは、なお気が付かず、小さい時から、手塩に掛けて、
年も十九の、盛りとなれど、親の心じゃ、子供に見えて、
針が荒いぞ、それゆがむぞと、世話をするのが、嬉しいそうな、
どうで有ろうと、気儘にせよと、独り言して、納戸にはいる、
 
能行口説きの四段目終わる。つつ``く・・・・

能行口説き(第三段)

儀平立ち聞きの段
 
あとでお千代は、胸打ち迫り、うまくだましは、だましたけれど、
とても長くは、云い抜けさせぬ、それにこの頃、母さん達が、
わしが嫌がる、婿取りばなし、逢瀬重なる、身は五つ月の、
 
腹にしめたる、此の腹帯を、解いて貰うは、あの儀平さん、
なぜに今宵は、おいでが遅い、油断ならぬが、男の心、
もしやほかにも、我が身の様な、思う女が、有りゃすまいかと、
焼くや藻塩の、身を焦がしつつ、見ればそともに、儀平が姿、
 
お千代立ち出で、その手にすがり、お出で遅いと、待ちかねました、
兼ねてお前も、知らるる通り、嫌と云わせぬ、淀助さんが、
宵にまた来て、私を呼んで、是非になびけと、のっぴきさせぬ、
命がけなる、手詰めの難儀、理屈云う手は、逃れぬ場じゃと、
 
虫を抑えて、品よくいうて、すかす内にも、お前が早よう、
お出であるなら、良かろう物と、待てどお前の、影さえ見えず、
どうやこうやで、いなしはしたが、又もこの後、難題かける、
それはさて置き、私の方も、近い内には、婿取るはなし、
 
わしとお前は、常盤の松で、千歳ふるとも、色変えまいと、
書いた誓紙は、ほごにはならぬ、よその家から、婿取る事を、
嫌と云うたら、義理あるおやの、おうせ背いて、不孝に当たる、
考を立てれば、お前に不義理、所詮生きては、いられぬこの身、
 
お目に掛かるは、今宵が限り、思い出したら、只一杯の、
水を手むけて、下さいましと、隠し持ちたる、剃刀出して、
既に自害と、見えたる所、儀平、目早く、その手を、押さえ、
日頃そなたと、我が身の中は、死なば一緒と、誓いし事を、
 
忘れ給うか、これお千代さん、此処で死ぬるは、早まりならん、
宵に淀助、そなたを呼んで、無理な恋慕の、その繰り事を、
藪の蔭から、立ち聞きしたが、今宵一夜は、許して帰す、
わしもお前に、話が有れば、心静かに、よく聞き給え、
 
わしが養父の、利久右衛門様は、娘有れども、幼少なれば、
末は私と、盃させて、家督譲ると、兼ねての定め、
かかる義理有る、この親達に、憎し腹立つ、あの淀助が、
覚え無いこと、皆数え立て、口に任せて、我が家に告げる、
 
おのれ淀助、ただ一打ちと、既に覚悟は極めたなれど、
そなた一人に、心をひかれ、寄る辺定めぬ、気はうつろ舟、
今日や明日やと、流るる月日、今のそなたの、心底見れば、
思い置く事、露ほども無い、さればこれから、あの淀助を、
 
水もたまらず、首打ち落とし、我ら二人も、いざ潔く、
最後とげなば、世間に晴れて、死出の路連れ、三途の川を、
手引き渡らん、これ我が妻と、諭す心は、淀みもせぬが、
恋の敵の、淀助ゆえに、怨み淀みて、涙も淀み、
 
玉を貫く、柳の風情、お千代居直り、両手を合わせ、
そうで御座るか、我が妻様よ、そんな事とは、心もつかず、
不足云うたを、許しておくれ、今もお前の、おっしゃる通り、
死なば一緒と、誓いし事を、何の忘りょう、忘れてよかろ、
 
二人一緒に、心中をしたら、大事大事の、家のこ様に、
怨みられては、心が済まぬ、済まぬ道理と、いんまの次第、
最早叶わぬ、意気地と成れば、なんの一人で、旅立ちましょう、
しかし貴方の、意見じゃないが、人をあやめて、心中をしたら、
 
先の世までも、人殺しじゃと、唱えられては、いと口惜しい、
所詮怨みを、報いぬとても、たった二人で、心中を致し、
歌や口説きに、名を残しましょう、人の怨みを、うけると云うも、
仲の良すぎた、我々二人、恋ぞねたみの、渕ともなれば、
 
人の怨みも、また渕となる、人を殺むる、そのことだけは、
思い留って、下さいましと、諌め口説けば、儀平も今は、
そうじゃそうじゃと、有りがた涙、そなた意見は、南無阿弥如来、
それぞ極楽、浄土の路を、教え給うか、あら有りがたや、
 
消えて行く身の、互いの胸に、約を固めて、立ち別れける、
能行口説きも、三段目おわる。
つつ``く・・・・・・・
 
 

能行口説き(第二段)

恋慕の段(花ずくし)
 
さても、この後、二人のものは、朝な夕なの、事わざにつけ、
心楽しく、日を送るうち、月に叢雲、花には嵐、
釈迦にだいばよ、鯨に鯱よ、心我慢の、名は淀助と、
これも村内、若い衆頭、お千代我が手に,落とさんものと、
 
邪魔を、張り弓、横矢の恋慕、とある木陰に、お千代を呼んで、
わしはお前に、ほうれんそうで、胸はもみずり、心はみだれ、
忍ぶ道草、踏み枯らしたが、いつも来る度、恥じかきつばた、
おお、と、云わんせ、撫子の花、嫌と岩間の、捨て草なれば、
 
儀平さんにも、邪魔菖蒲草、顔の気色は、さも鬼薊、
意地の悪口、夕顔の花、聞いてお千代は、気はいたどりの、
どうぞこの場は、菫にしたい、先は兎もあれ、へちまの皮よ、
胸の芍薬、心で抑え、仰せ菊の葉、茗荷にあまる、
 
賎が心の、やぶそば草を、左程思うて、下さるならば、
清水小池の、わしゃ真菰草、引けばなびくよ、淀助さんよ、
云えば淀助、手をうつぼ草、これがまさきの、かずらであらば、
わたし一人で、お前をからめ、二人他国へ、身はすべり草、
 
証拠もらうと、気は石竹の、お千代言葉で、一寸芥子の花、
千里行くよな、虎の尾あらば、いつも朝夕、顔三つ葉芹、
あまり暇どりゃ、母さま叱る、早よういなせて、くれないの花、
今宵儀平さんが、白菊ならば、ここで命は、早とりかぶと、
 
そんなあやめな、事しょうよりも、いっそ夜をかえ、また葵草、
人の口には、かからぬ内に、だましすかして、早かえり花、
 
能行口説きの、二段目おわる。・・・・・つつ``く・・・・

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