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昨日、Black Caviarの調教師としても知られるビクトリア州のリーディングトレーナー、ピーター・ムーディ師、
そして同じくビクトリア州のトップトレーナーであるD・オブライエン師、M・カヴァナー師の馬から
競馬法で決められている規定値以上のコバルトが検出されたことが発表されました。
検出されたのは昨年10、11月のスプリングカーニバル中の馬で
特にムーディ師のLidariはG1・ターンブルステークス2着後に検査されたものでした。
コバルトは元来、通常の給餌のもとで馬の体内に微量に存在するもので
ビタミンB12の構成成分としても知られています。
しかし赤血球生成に関与するというその性質上、
結果として個体内の酸素運搬能力を向上させ、ピークパフォーマンスをより長く持続させる、
ということが見込めるため、
人間のアスリートのあいだでも長年、EPO(エリスロポエチン;赤血球生成ホルモン)とともに
使用されていました。
当然、過剰摂取には副作用もあり
過去、アスリートの死にも関連付けられ
今では世界アンチドーピング機関(WADA)で禁止物質に指定されています。
競走馬においても、競馬の公正面だけでなく、
副作用として甲状腺、循環器系、神経系へのダメージなどが警鐘され、
オーストラリアでは、2013年からハーネスレーシング(二輪車をひく繋駕速足競馬)が
尿中200マイクログラム/リットルを規定値として禁止物質に指定。
それに続き、サラブレッド競馬界でもビクトリア州が昨年4月から、
そして今年初めからはオーストラリア全体で同量の規定値で禁止物質として指定されています。
この法改正に伴い、
少なくない厩舎で一般的に使用されているコバルトやビタミンB12を含んだビタミン剤注射
(公的に薬品登録されているVAM injection、Hemo-15、Hemoplexなど)も
レース日間近に施すと、規定量以上が検出される可能性がある、
というのは警告されていました。
おそらく今回の件もレース前にビタミンB12やコバルト単体を投与するというのは考えにくいので
ビタミン剤などの投与の残量が検出されたのだろうと個人的には考えています。
※追記(2015/1/15)
レーシング・ビクトリアの獣医長のコメントによると
通常のケアのもと調教されている競走馬ではコバルトは尿中5〜10マイクログラム/リットル
登録されているビタミン剤などの注射を施された馬でも50マイクログラム/リットル前後
(レース当日の注射だとしても100マイクログラム/リットルまで)
規定値200マイクログラム/リットルを超えるコバルトが尿中から検出されるには
可能性としてコバルト塩、塩化コバルトの注射か
またはStomach Tube(ストマックチューブ;鼻から管をとおし胃に直接投与したい液体を流し込む方法)。
あるいは故意ではなく、飼料やサプリメント、ビタミン剤などが
汚染や何らかの理由で成分表示量以上のコバルトを含んでいた可能性も否定はできない、
ということです。
過酷な調教やレースに対する備えや回復の手助けをするビタミン剤なども
薬品の種類や投与量、レースまでの間隔や馬の個体差などを考慮に入れ
担当獣医師さんと協力し今回のようなことを防いでいかなくてはなりません。
自分が厩舎を開いた際にはあまりビタミン注射などをするとは思いませんが
どのような薬品にしろ、注意していかなければと改めて思わされました。
失格となる当該馬、没収される賞金、その馬のオーナーさん、
もちろん厩舎の信用や評判、ひいては世間の競馬界全体に対するイメージなど
失うものは本当に大きいですから。
※今回の件はまだ審査中なのでどのような処分になるかは分かりませんが、
免許停止も可能性としてゼロではありません。
どのような結果になるのか見守りたいと思います。
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