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『日本の論点 2008』で,小松正之さんが,こう述べている。 主要漁業国の中では、日本のみ、漁業者が「ヨーイドン」で早い者勝ちの量を始める。漁獲量全体がTACに達したところで採捕を停止する「オリンピック方式」と呼ばれるスタイルだが,この方式では,誰もが「自分さえたくさん獲れればよい」と争い,限られた時間内になるべく多くの魚を獲ろうと競争するから,漁船も大型化し,燃料もたくさん使い,小さな魚も獲ってしまうような状態に陥る。取締りが不十分な場合には,TACで決められた数量を超過し,さらに乱獲が促進される。これは,二〇〇六年にマサバのケースで生じた。
主要漁業国で「オリンピック方式」のみを採用しているのは日本だけである。」 日本がなぜ「オリンピック方式」から抜けられないのか。資源を守るためには,漁業者たちにとっても他国と同様の獲り方をしたほうが良いのではないか。 そう考えてしまいがちだが,日本がオリンピック方式を採用している,日本人の文化的背景に少しだけ心当たりがある。それが,“なわばりの文化”だ。 詳しくは,小学館ライブラリーの『なわばりの文化史』に詳しいが,端的に言えば,現代であっても漁業の世界では“なわばり”の意識が非常に強く残っている,ということだ。確かめたわけではないが,西洋発の近代合理主義の考え方とは大きく違う,日本古代からの伝統的な文化の中に,漁業者の行動様式を決定している要素が潜んでいるようだ。
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