「今夜のライブって何時から?」
ご飯の後、侘助オリジナルのタンポポコーヒーを飲みながら由美ちゃんが僕にそう聞いた。
「たしか、8時開場で9時開演」
そう云うと
「どこ?」
「恩納村の、58号から右に入ってすぐのココナツ・ムーンというお店」
何度も来ている、それならこういった言い方で分かる、そう思って云った。
「ココナツ・ムーンて、裏がすぐビーチで、紫のギターの比嘉さんのお店でしょ!」
トーンが変わった。声が少し低くなった。
「うん、でもよく知ってるね?」
少し間を空けた。
「前にボーイフレンドに2回かな、連れていってもらったことがあるの!」
由美ちゃんの声が、音が少しふらついた。
「ボーイフレンド…」
その言葉をいったあと、由美ちゃんが窓の外を見た。
由美ちゃんが変わった。
さっきまでの茶目っ気たっぷりな由美ちゃんが、今はものうげな、そんな感じになっていた。
そんな由美ちゃんに僕は言葉が出なかった。
由美ちゃんがいくつで、独身か既婚か、そんなこと全然考えていなかったけれど、
今の由美ちゃんを見て僕の頭の中でいろいろなことが浮かんだりした。
「私、一緒に行ってもいい?」
ぼんやりとしていた僕に
「私、これから用事があるの、でも、それは7時位までだから…」
「うん!」
そう云わせるような、そんな雰囲気だった。
『断ってはいけない!』そう感じた。
「じゃあ、オン・ザ・ビーチ・ルーで一旦別れて」
「うん」
次は
「ねえ、今夜はどこに泊まるの?」
流れ、だった。
そう聞いてきた。
「今夜はココナツ・ムーン近くのホテル」
僕はそう答えた。
「私の家、家っていっても友達のだけれど、そお友達は今はアメリカへ行っていて、誰もいないの。それで仕事で疲れた時は留守番てことじゃないのだけれど、時々ここに来ているの。」
彼女は、由美ちゃんは自分のことを少しずつ話し始めた。
「ふーん」
僕はそんな由美ちゃんにすごく興味を持った。
そして、そんな僕に何かを感じたようで
「迎えに行く!」
にこって笑って僕を見た。
「いいの?」
一応、そう聞いた。
こういう時って、女の子の気持ちを組んであげないといけないんだよね。
「いいわよ!」
目を輝かせてそう云った。
「待ってる!」
僕はそう云って、それで
「行こうか、ここは僕がおごるよ、ずっと寝てかたらね!」
続けてこう云った。
「やったーっ!」
由美ちゃんが手を叩いてよろこんだ。
「先に行ってて」
僕は由美ちゃんに
「うん、ごちそうさま!」
由美ちゃんは僕を見て
それで2人分のお金を払うと
「戦いは再開したの?」
そう、侘助のママに言われた。
まいった。ママにはこっちの作戦が全部読まれていたようだった。
「ええ、まあ」
こんな言葉しか云えなかった。
「また来てね!」
ママの方が由美ちゃんよりはるかに手ごわかった。
「紫がライブするんだ!」
車に乗って、そうしたら由美ちゃんが独り言のような感じで言った。
「そお、紫が30年振りにアルバム、前はレコードだけど、CDを出して、そしてココナツ・ムーンの20周年と併せてのライブなんだよ!」
僕はそう説明した。
「オリジナルメンバーなの?」
「ボーカルとベースは違うけれど…」
「ふーん」
「紫って知ってるの?」
そう聞くと
「名前だけ、30年前だと私、まだ2歳。あーっ、云っちゃったー!」
由美ちゃんは自爆してしまったようだった。つい、自分の年齢を云ってしまった。
「ふーん」
「もっと若いと思っていた?」
「えーっ!」
しかし、こういう時、どうして女性って若く見せたい、いいたいのだろうか。まあ、それが可愛いってことになるのだけれど、でもそう思うのは僕だけ?
それからはたわいない話などをしながら、侘助から1時間以上かかって、オン・ザ・ビーチ・ルーまで戻った。
※時間の経過などはご容赦です、近いうちに取材(確認)のために沖縄に行ってこようと思っています。