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「お待たせ!」
「うっ、うん」
その言葉に目が覚めた、備瀬を出て、そのあと眠ってしまったようで
「ここ」
彼女がシートベルトを外しながら人差し指で僕に合図した。
僕はまだ半分寝ているような、そんな感じだったけれど、彼女のあとに続いて車を降りた。
それで、お店の名前をみて驚いた。
「侘助」だった。
侘助は僕が沖縄に来たら必ず寄るお店の1つ。
でも、ここは今帰仁。
時計を見たら12時近くになっていた。
備瀬を出て1時間近くの時間がたっていた。
「よく、寝てたわよ」
彼女が僕の目を見て、
「せっかくだから、着くまで起こさないことにしたの!」
そう、茶目っ気たっぷりに云った。
備瀬から今帰仁。
「侘助」
そのお店に今彼女と一緒に来ているんだ。
「ねえ、知ってるお店って?」
彼女に聞いた。
「そお、私、こっちに来たらいつもここで食べるの、ねえ、奥さん!」
そういって侘び助の奥さんを見た。
奥さんは
「ええ!」
微笑みながら、そう云った。
「僕もなんだよ、驚いたなあ!」
「知ってたの〜?」
残念そうな感じで僕を見た。
「うん」
『まあね』なんて言葉はここで云えなかった。
備瀬から今帰仁まで運転してくれた彼女の感謝の気持ちで一杯だった。
だから、次に出た言葉は「まさか侘び助とはね。」だった。
そんな僕の言葉に侘助の奥さんも「あら、いらっしゃい!」なんて微笑みながら云って
「お二人は知り合いなの?」
続けてそう聞いてきた。
「ええ、そうなの!」
彼女がテーブルの上に肘をついて、その手の上にあごを乗せて僕にウインクしながら、奥さんに云った。
「彼氏なあんだーっ!」
また僕を見てウインクしながら云った。
僕は言葉に詰まってしまった。それは彼女の「彼氏〜」の言葉にどう反応しょていいのか、また、彼女の性格もしぐさもほとんどというか、まったく分かっていないのだから仕方がないのだけれど、一瞬固まってしまった。
「ねっ、なんにする?」
たたみかけてきた。
完全に彼女に主導権を握られた感じだった。
「えっ?」
困った。
目の前にいる女性とはまだ会ってから10時間もたっていないのに、こういった距離感なのは、うーん、確かに今まで何年も付き合ってきたような、そんな感じにさえ覚えてしまう。
なんだろう、この感じは?
彼女の人なつっこさ、それだけではないのだろうけれど…
「私、あぐーサラダ、定食で!」
うーん、僕が悩んでいるうちに、参ったなー。
「じゃあ、僕はあぐー丼!」
もう、こうなったら出たとこ勝負、開き直るしかないな、そう思ったら、言葉が自然に出てきた。
そして彼女に
「由美ちゃん!」
続けてそう云った。
「えっ!」
僕の言葉に少し驚いたようだった。
「今からそう呼んでいい?」
そう聞いた。
「ええ」
少し、間をあけて由美ちゃんが返事をした。
「きれいだね!」
今までの逆襲をした。
「えっ!」
由美ちゃんの目が一瞬うるんだように見えた。
「さっきのお返し!」
今度は僕が茶目っ気たっぷりに云った。
「もおーっ!」
由美ちゃんは胸の前で腕を組んでふくれた。
そんな由美ちゃんが本当に可愛く、そしてきれいに見えた。
『きれい』って、本当にそう思ったんだ。
「お待たせ!」
絶妙なタイミングで由美ちゃんが頼んだ「あぐーサラダ定食」が運ばれてきた。
それを見た由美ちゃんが
「休戦、それでは先にいただきまーす!」
そういってあぐーサラダ定食を食べ始めた。
ラッキーだった。
「だった」というのは僕や僕の友達なんかの間では女性がふくれた時には「ごはん」がそれを直す特効薬だってことがまことしやかに云われていて、で、それに見事に由美ちゃんも当てはまった(?)のだ。
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