|
落語絵本たのきゅう 川端 誠 阿波の徳島というところは 芸能のさかんなところでして 徳島の在 田能村にも 久平さんという たいそうお芝居のとくいな人が おりました。 なかまといっしょに 一座をつくり 祭りのときなどに 芝居をみせていたのであります。 田能村(たのうむら)の久平(きゅうべい)さんですから たのきゅうと みんなからよばれており 一座の名も たのきゅう一座と もうします。 たいそうおもしろいという ひょうばんが ひろまり ほうぼうから 声をかかけられ ときには とおくまでいくことも ありました。 そんなさなか 久平さんに 国もとから 手紙が とどいたのであります。 よんでみると ながく旅にでたいる 久平さんをあんじて 母親が病気になったとのこと。 さっそく あとのことをなかまたちにたのみ 田能村めざして いくつもの峠をこえ 山をこえ いよいよ さいごの山です。 「この山には うわばみがすんでいて いままでになん人ものみこまれているんだ。ひるまはでねえが 夜は きっとでるからよしなせえ」と ふもとでいわれたのですが そのまま 山にはいっていきました。 ところが 山は おもったよりけわしく とうとう 夜になってしまいました。 どのくらいたったでしょうか。 どこからともなく つめたい風が ヒューッとふいてきて 「おい おきろ。やっと にんげんにありつける。おれあ うわばみだ。おまえを のんでやる」 「のむめえに おまえの名めえくれえは きいてやる。どこのだれだ」 「たのうむらのきゅうべえ。たのきゅっ でございます。 「なにっ たぬき…。けっ ばかばかしい。にんげんじゃあねえのか。」 「…おお そうだ! おれにばけるのを おせえてくれねえか。 母だぬきのびょうきが なおってからでいいから かならずおれを たずねてくれ。 おれのすみかはな 山のてっぺんの おおきな二本の松の木のあいだの 穴ぐらだ。 それから おめえのすきなもんを よういしてまっててやる。 いや。きれえなもんを きいたほうが はええな。きれえなもんは なんだ」 「ほら なんかあるだろう。おりあ たばこのヤニと柿シブが でえきれえだ。 あれが からだにつくと 肉がくさってくるんだ。おめえが こわくて きれえなもんは なんだ」 「そういうことなら わたくしは お金がこわくて きらいです。 金に目がくらみ にんげんどうしがいがみあい はてはころしあうのをみると…」 「だれにもしゃべるなよ。かならず たずねてこいよ」 そういいのこすと 老人は すがたをけしました。と どうじに 夜があけました。 さーあ 蛇の口をにがれたとは まさにこのこと。 それから久平さんは 山でおこったことを 一から十まではなしますと 村じゅうで たばこのヤニがあつめられ 柿シブも桶にたっぷりと よういしました。 うわばみもねむるといわれる まひるどきをねらい 二本のおおきな松の木のまわりを とりかこみました。 ドボォォォーーーーーッ ジュジューーッ グルルルルルーーッ うわばみは あっちへのたうち こっちへのたうち 七転八倒。ついに がけっぷちに。 「たのきゅう!!おのれえっ あいつは…」と いいのこし うわばみは 谷ぞこへおちていきました。 さて 話はかわってこちらは 田能村の久平さんの家です。 久平さんはかえりつき 母親をみまいました。さいわい 病気はかるく 久平さんがもどってきて あんしんしたのか 病気はすっかりなおりました。 つめたい風がヒューッとふいてきて そとから ぶきみな声で 「おいっ 久平。きさま にんげんだったんだな。よくもおれをだましやがって… おかげでおりゃあ もうじきしぬ…。だがな おめえを道づれにしてやる。これをみて くたばれ!!」 すると ジャリン ジャリン ジャリジャリ ジャリジャリジャリジャリーーーーーーー とはげしく板戸をうつ音がしばらくつづき やがて しずかになったので 久平さんが こわごわ 戸をあけてみますと… なんと そこには 一万両ものお金が つみあげられておりました。 そのご 久平さんは このお金で りっぱな芝居小屋をたて 芸能のはてんに やくだてたということです。 まさに「芸は身をたすける」とはここういう事をいうんですね。 久平さんは持っていた狸のおめんをかぶってうわばみを騙したのです。 落語のお話はおもしろいお話がたくさんありますね。 おもしろいお話を考えた昔の人も偉いですね。
|

- >
- 生活と文化
- >
- 祝日、記念日、年中行事
- >
- クリスマス




