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いきなりだが 義父はボケている。
ボケているけれど フレンドリーで飄々としている。
そういう人は時として 非常に厄介な事をしでかす、というクダラナ〜イ話なので
『私の高尚な一日を汚さないで欲しいんだよね〜。』って方はスルーしてね。
昔から フザケるのが好きな人で、都合が悪い事はボケたフリをしてごまかしていた。
その話題が過ぎたとたんに普通の会話が成り立ったりするので『やられたね。』と笑っていたものだ。
しかし、こういう人が いざ本当にボケ始めると見極めが難しい。
本当にわかっていないのか?フザケているのか!?
義父は怪しまれつつも年々順調にボケていき、
疑いようのない『ちゃんとしたボケ老人』へ昇格した。めでたい。
周囲は『ホントに?』と迷う事なく
『あー、ボケてるしね。』と優しく受け止める事ができるので ある意味 助かるのだ。
義母や義兄、パパの事はわかるけれど
私や子供達‥‥すなわち人生においての新参者の事は忘れている。
それでも どうなのかな‥少しはわかるのかな、、って気もしてはいたのだ。
昔から家にジッとしていられない性分で、チョコチョコと出歩く。
それはボケた今でも変わらない‥‥。
毎日 池袋や新宿へ出かけては、珈琲を飲んだりお菓子を買ったりして帰ってくる。
徘徊してしまうというのではなく、ちゃんと帰ってくるから不思議である。
さてさて、先日バスに乗ると その義父がチョコンと座っていた。
無視するのも気が引けるし、どうせ短い時間だし‥
『おじいちゃま、こんにちわ、偶然ですね。』と挨拶し 隣へ。
後から考えれば これが間違いの始まりだった。
『あ〜、こんにちわ〜。』嬉しそ〜うに私を見る表情は懐かしそうでもある。
わかるのかな‥?私の事‥。
元々が飄々とした人物なので こういう場合はわかりにくい。
『今からね、美味しい珈琲飲みに行くの。
あ、今お住まいはどちらでしたっけ?』
『○○○ですよ。』
『そうですか。
私がいつも行くお店ね、珈琲が美味しいの、安いしね。』
どこかな?と思っているそばから
『今どちらにお住まいですか?』
あ‥‥‥やっぱりわかってないな‥と気付いたけど 時既に遅しなんだな〜。
調子に乗ってきた義父は ぶちかまして下さいました。
『でも貴女みたいに若くて綺麗な人だと色々大変でしょう?
お察ししますよ、エヘへッ。』
誤解を招かないよう言っておくけど 義父は80歳であり
その人から見たら多少は若い、ってだけだからね。
目も悪いからね。
それが 満席の車内で
『若くて綺麗だから、みんなから狙われちゃうんじゃないの?うふふ〜ぅ。』である。
バ〜〜〜カ、あんたの息子の嫁だよ、
と言い放ちたいのを必死に堪えつつ
『いえいえ、とんでもないです。』と否定し続けなくてはならないバツの悪さ‥‥
『出来るなら 消してみたいな このジジー。』友蔵心の俳句、
これが正直な所であった。
勉強すればジーサンを消せるかもしれないハリーポッターなども大変羨ましい。
可能性があるだけ私より数百倍ましである。
お住まい、に代わって 今度は
『若くて綺麗だから大変ね〜。』爆弾の連射だからたまらない。
ただの知り合いだと思い込んでいるのは明白だ。
しかし、ただの知り合いに こういう事言ってる時点で大問題なので非常に呆れる。
虚ろな視線の先には微妙に震える前の人の肩。
『このジーサン、ボケてますからー!何もわからないで言ってますからー!』
静寂を破り、その肩を掴んで いっそ叫んでしまいたい!
しかし 静寂を破るものは ただ一つ‥‥
『若くて綺麗だから大変ですね〜、、うふふ〜。
狙われちゃうから気をつけてね〜、、うふっ。』
終点でバスから降りた人々が 控え目に
《若くて綺麗でみんなから狙われちゃう人》を探しているのがわかる。
その視線は宙を舞うばかり‥‥
『いないなぁ。』って首をひねる姿が また悔しい(チッ!ここだよ。)
申し訳ないけど 今後は バスで会っても無視よ、無視!
爆弾ジーサンは今日も行く!
皆様 私に代わり お声かけお願いします。
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