小説の館

【星の瞬き】近いうちに必ず☆

全体表示

[ リスト ]

イメージ 1

        残暑の日照りはストリートの影さえ掻き消してしまう。吸い上げられた蒸気が上空で巨

       大な雲を作りだし、ときおり忍び寄る白い影がそのたびに渋谷の街を呑み込んだ。

        女子高生たちの長い夏休みが終わりを告げた午前11時の渋谷。原色のひとごみでごった

       返していたセンターの賑々しい面影はすでになかった。カリスマショップデパート周辺の

       人口密度を圧縮していた褐色少女たちも、街中を闊歩する厚底サンダルの足音も聞こえて

       はこない。俺の眼前には想像以上に淋しい風景だけが広がっていた。
 
        ターゲットを女子大生に変更した俺は、彷徨して歩きながら綾美と出逢ったスペイン坂

       に来ていた。ふいに学生風の恋人同士が俺の脇を通り過ぎていく。なかなかの美形ではあ

       ったが、さすがに彼氏を説得してまで声を掛ける気にはなれなかった。

        気分転換のつもりで公園通りまで出てみたが、ここは会社員の女性ばかりが目につく。

        俺はスカウトの拠点を探して大型CDショップのある交差点方向に降りていった。

        すると残暑のまばゆい陽光が照りつけるCDショップの軒先から驚くような美女が出て

       きた。悪戯な風のせいでなびいたストレートの栗色髪を手で掻き上げながら、何やら嬉し

       そうに信号待ちをする美女は、とても女子大生には見えなかった。おそらく20歳代半ばだ

       ろうか、170センチを越える長身の美白系美人だ。はっきり言ってスカウトするには難し

       いタイプだった。

        するとどうだろう、信号機が青色を点灯させるやいなや、素早く歩き出した絶世の美女

       はまっすぐ俺の方へ向かってくるではないか。

        その瞬間、スクランブル交差点の風景は一変し、まるでファッションショーのランウェ

       イに様変わりしたようだ。よし!度胸を据えた俺は、ファッションモデルにカメラを向け

       るつもりで美女の前に立ちはだかった。

       「あの、すみません。ちょっといいですか?」
 
        俺はそのプライドの高そうな目鼻立ちに恐縮しながら声を掛けた。

       「セールスだったらお断りよ」
 
        美女のイメージとは少しかけ離れたハスキーな声が返ってきた。至近距離でよく見る

       と、彼女の異常なまでに濃いメイクに驚かされた。

       「おれはインタープロの山岸と言います。女優やモデルのスカウトをしています。よろし

       かったら少し話を聞いていただけますか?」
 
        俺は美女の機嫌を損なわないよう丁寧にそう言い、名刺を手渡した。
 
        美女は何度も俺の顔と名刺を見比べるようにチェックをいれている。

       「せっかくなのに残念だけど、わたしはダンサーをしているから、他のお仕事には興味が

       ないのよ。ごめんなさいね」
 
        俺の目をまっすぐに見ながら、鮮紅色に濡れた唇がハスキーに答えた。

       「ダンサー?本当ですか!」

       「そうなの」

       「それじゃあ、しょうがないですね」
 
        俺は落胆というより、どこかほっとした気分でいそいそと退こうとした。

       「ちょっと待って!名刺に肩書きがあるけど、あなたはカメラマンもやっているのね。

       ところでミュージカルはお好き?」

        俺が首をもたげると美女は口角だけで笑みを浮かべた。

       「あ、はい。本格的な舞台は見たことないですけど……」

       「よかった。時間の都合がついたら観にこない?こんど文化村の大ホールでやるミュージ

       カルショーに出演するのよ」
 
        すると美女はシャネルのハンドバックから小さな封筒を取り出して俺の手に持たせた。

        すぐさま躊躇している俺の手を封筒の上からギュッと握りしめると、軽くかぶりを振っ

       て微笑んだ。何も遠慮しなくていいのよ―確かにそう言われているような気がした。

       「わたしはスーザン。それじゃ素敵なスカウトさん、頑張ってね」

       「でも、あのー」
 
        握っていた手を素早く引き離すと、謎の美女はくるりきびすを返して足早に立ち去って

       行った。俺の手のひらには封筒とカラッとした温もりだけが残っていた。
 
        一幕のショータイム、突如現れた公園通りのランウェイ、ファッションモデルのような

       長身の美女。この一連の出来事はまるで狐に抓まれたみたいで、白日夢のおぼろげな記憶

       のようだった。

        とにかく俺は封筒を開けてみた。するとまさか!封筒の中身は新進のニューハーフダン

       サー集団によるミュージカルショーの招待券だったのだ。

                                          ―つづく―

閉じる コメント(8)

う〜ん やっぱりすごいな(p嬉o′∀`o)q.*゜ {誰
傑作してくね(*u∀u*p愛q)owO

2007/12/30(日) 午後 8:25 [ kir*ri*186 ]

さくらありがとうー☆
傑作もサンキュウー☆

2007/12/30(日) 午後 8:32 yos*i8*94

顔アイコン

ほぉん!すげー次回も楽しみにまっとうよ

2007/12/30(日) 午後 8:35 AYU

あゆみありがとー☆

2007/12/30(日) 午後 9:19 yos*i8*94

へえ、
ミュージカルショーかあ、
どンなンだろお!?

2007/12/31(月) 午後 2:01 [ .\渚/. ]

渚さん、それがすごいんですっ!!

2007/12/31(月) 午後 5:23 yos*i8*94

顔アイコン

へ〜、中学生の割に、すごい文章力だね!

渋谷のスペイン坂を、思い出せたよ。

続きが楽しみだね!(*^艸^*)

2008/1/4(金) 午後 10:31 テル(* ̄◎ ̄*)

テルさん、ありがとうございます☆

2008/1/5(土) 午後 6:26 yos*i8*94


[PR]お得情報

ふるさと納税サイト≪さとふる≫
実質2000円で好きなお礼品を選べる
毎日人気ランキング更新中!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事