小説の館

【星の瞬き】近いうちに必ず☆

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        JR恵比寿駅周辺はもともとアダルトな街という印象があったが、さすがに渋谷のよう

       なティーンの女の子たちは皆無だった。しかも街中を行き交う人の流れはどこか優雅で、

       トレンド系のファッションを着こなした大人の女性たちが、9月のぬるい風を切って気持

       ちよさそうに歩いている。

        めずらしく俺は恵比寿に来ていた。石井専務から劇団映優の研究生をスカウトするよう

       に指示されたのだ。いつもは渋谷を拠点に展開する俺にとってこの場所はまったく未知の

       ゾーンに等しい。研究生を探せと言われても、まさか全員が劇団のロゴを身につけている

       はずもなく……。

        俺は駅前ロータリーから劇団映優までの区間を何度も歩き廻りながら、理想の美人研究

       生らしき女の子を物色していた。

        するとかれこれ1時間は過ぎただろうか。ふいに美白系でショートボブのよく似合う女

       の子がひとりで劇団映優のある方向へ歩いていくのが見えた。

        俺は間髪入れずにダッシュで追いかけた。とにかく彼女の顔を見てみたいと思ったから

       だ。ところが先回りした俺が彼女の正面に廻り込もうとしたとき、偶然急発進したタクシ

       ーが俺の身体をかすめていった。

       「危ないじゃないか!」

        俺はよろめきながら、超かっこ悪い形でターゲットの前に登場するはめになった。

       「だいじょうぶですか?」

        思いもよらずターゲットの女の子に声を掛けられてたじろいだ。

        「あっどうも、ありがとう」

        よく見ると素直な顔立ちに切れ長の二重瞼が魅力的な女の子だった。俺の中で疑問符が

       確信へと変わった。

       「あのー、ところできみは劇団映優の研究生ですか?」

       「え?……は、はい。そうですけど、何か」
 
        予想だにしなかったことを訊かれたせいだろうか。やさしそうだった女の子の表情が急

       変した。恐々俺を見上げる切れ長の眼差しには警戒の色が強く表れている。
 
        言葉がうまくつづかなかった。確かに俺がスカウトした子のほとんどが渋谷系少女で、

       こんなに清楚な美人系は初めてに等しかった。どうしよう、焦点が合わない―すぐに俺の

       中の臆病虫が顔を出してしまう。かんばれ自分!と心の中で叫んだ。

       「つまり、そのう、よかったら今度うちの事務所へ遊びにきませんか?きっと女優になる

       近道だと思いますよ」

       「それはどういう意味ですか?」

       「いきなりですいません。おれは芸能プロでスカウトをしています」
 
        俺は慎重に名刺を差し出した。こんなに緊張したのは久しぶりだった。

       「インタープロ?ですか……」

       「はい、そうです。たぶん知らない社名だと思います。まだ新しい会社ですから」

       「そうですか……」
 
        美白系の女の子は微苦笑を浮かべながら、俺の名刺を注意深く眺めた。
  
        それにしても短く切り揃えられたピンク色の爪と白魚のような指先には驚かされたが。
 
        そのあとは我慢くらべのようなものだった。彼女は過去に風俗誌専門のスカウトマンに

       騙されて相当嫌な思いをしたらしいのだ。どんなに誠意を持って口説いてみても、彼女の

       堅いガードは容易に崩せそうになかった。もっともインタープロに入ったとして、映画や

       テレビドラマの仕事が確実にできるという保証はないのだ。やはりアイドル五人姫の話を

       するのが手っ取り早いだろう。しかしリョウさんの描くアイドルのイメージとは少しキャ

       ラが違うような気もするが……。

        俺が逡巡しているうちに交渉はタイムリミットになってしまった。劇団の稽古に間に合

       わなくなるというのが理由だった。名前と携帯番号を聞き出せただけでも収穫か。

        俺はほかの研究生を捜すために駅前のターミナルまで戻った。ふとケイタイに目をやる

       と待受け画面が夕方5時15分を表示していた。
 
 

        扉が開くやいなや、山手線車両から飛び出した俺は南口に出る階段を跳ぶように下りて

       いった。下り階段の3段跳びだったらオリンピック候補?にもなれそうな気がした。

        人混みも何のその、そのままの勢いで最終コーナーを曲がり終えた俺は、JR渋谷駅南

       口の自動改札機も難なく飛び越えた。おっと切符を入れなくちゃ!そのとき疑いの眼差し

       をよこした駅員と視線が合い、俺は涼しい顔で切符を通し、その駅員に向かって何気なく

       会釈を返す。

        綾美と待ち合わせた時間からはすでに20分以上が過ぎていた。とにかく俺は綾美を捜し

       て構内を見渡した。

        ん?何か変だぞ―すぐに俺はいつもと違う空気に気づいた。

        南口改札周辺には修学旅行生らしき、お揃いの制服を着た女子高生が大集合していた。

       しかもよく見ると女子高生たちの群れの中心には、渋谷系カリスマファッションにヤマン

       バメイクできめた厚底サンダル集団が控えているのだ。その様子に俺はすっかり気圧され

       てしまい、綾美との約束もそっちのけで彼女たちを興味深く観察していた。

        するとどうだろう。ヤマンバ娘たちの中のひとりがこっちに向かってしきりに手を振っ

       ているではないか。しまいにその子は俺に向けて派手なピースサインを送りはじめた。

        まさかあの子は……綾美……?

                                          ―つづく―

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読みましたぜ!
うーんすごい!!

2008/1/17(木) 午後 7:31 AYU

あゆみありがとっ☆

2008/1/17(木) 午後 8:26 yos*i8*94

顔アイコン

読んだよぉ♪♪
次も頑張れ☆ミ

2008/1/18(金) 午後 6:08 ぅちぃ

ぅちぃありがとうー☆
頑張るよっ

2008/1/18(金) 午後 9:18 yos*i8*94

あーらららら{何?
よしゆき上手すぎだね(・∀・){あ

あ、うちの小説もちょっと前に更新したんだけど、報告してなかったかな?
今日明日には10話更新すると思うから、そっちも見といてね!

2008/1/21(月) 午後 5:13 [ *** ]

さくらありがとうー☆
読みに行くよっ☆

2008/1/21(月) 午後 8:34 yos*i8*94

遅くなりました↓↓
ちゃんと読みに来ましたよ!!

なんだかすごいことが起こりそうな予感

2008/1/31(木) 午後 8:34 高崎紀希

紀希さん、ありがとうっ☆

2008/2/2(土) 午後 4:08 yos*i8*94


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